その25 ユニークスキルの謎が解けたかも知れません
ドラゴンを倒した後、身体から力が抜けて行くような感覚があった。以前ブルードッグを倒した時に感じた感覚と似ている感覚だったが、あの時に比べて遥かに強い脱力感だった。
「この俺がドラゴンを倒せるなんて、夢でも見てるんじゃないのか?」
自分のほっぺをつねってみたが、傷みを感じることが出来た。どうやら俺は本当に1人でドラゴンを倒したらしい。
先程は特に何も考えずに戦っていたが、これは明らかにおかしい事態だ。LV3というか、俺のステータスでドラゴンを倒せる筈がない。もしかしたら俺のステータスは、表示されている数字がおかしいだけで、実際はもっと高いのかも知れない。目に見える数字が全てとは限らない。それならドラゴンが俺を最後に狙った理由も納得がいく。
だが待てよ...それは流石に無理だな...。異世界に転移した人間は俺以外も全員がLV1からスタートしていた。村人の俺だけ高LVからスタートしていたとは考えにくい。そしてスライムとブルードッグしか倒してない俺が、ガンツよりもLVが高くなっているというのも考えにくい。よって表示が間違っているという考えは却下だ。
となるとアレだ! 異世界チート系によくある戦闘中に補正が掛かり、能力が100倍になるとかソッチ系じゃ!? いや...それならスライムとの戦闘に苦戦する訳がないな...。この力がユニークスキルによるものだとすれば五十歩百歩。日本のことわざ通りなら多少の違いはあっても、似たり寄ったりって意味になるよな? ...!? 俺の中に完璧な解答が弾き出された。
このユニークスキルは、戦う相手と似たり寄ったりのステータスになるんじゃないのか? そう考えれば全てに辻褄が合うことになる。俺が大樹に蹴られて死ななかったのも、ブルードッグを倒せたのも、ゲイツに掴まれた腕を振りほどけたのも、ドラゴンを倒すことが出来たのも全てに納得が出来る。
ドラゴンに最後に狙われたのも、ドラゴンと同LVになっていたとすれば、俺のLVは50前後になっていた筈。
確定した訳ではないが、限りなくその可能性が高いとなると、俺の心には希望の二文字が浮かんできた。もしそうならどんな相手と戦おうが、能力の面では互角に近い勝負が出来る。後は戦闘の経験を積んで装備さえ最強クラスのものを揃えれば、魔王とタイマンを張っても良い勝負になる筈だ。
魔王と互角に戦える人間なんて、異世界人の中にもいないだろう。完全に閉ざされたと思っていた英雄への道に、光りが差し込んだことにより、俺の心は歓喜で一杯になっていた。




