その241 死神とか聞いていません
扉を押すとギギーという音がなり扉が開いた。
そこで俺が見たものは衝撃の光景だった。
部屋の中にはモンスターと戦闘中の冒険者8人の姿があり、床にも6人の冒険者達が倒れている。
その中には明らかに死んでいるであろう冒険者もいる。
俺達が部屋の中に入ると扉が自動的に閉まる。
閉まった扉を押してもビクとも動かない。
部屋の主を倒さないと開かないというよくあるシステムか...。
そして部屋の主というのが、おそらく冒険者達と戦闘をしているアイツだろう。
戦闘と言っても冒険者達は全く相手になっていないように見える。実力差があり過ぎるのだろう。
「何なんだよ! コイツは!」
「この階の階層主はゴブリンナイトの筈だ!」
冒険者達が戦っている相手。
それは死神と言った表現が一番ピッタリくるモンスターだった。
骸骨の顔に赤いローブを身に付けている。
ローブの色さえ黒色だったらまさに死神そのものだ。
「あれはリッチです。こんな階層に現れるようなモンスターではないのですが...」
ニアはあのモンスターのことを知っているようだ。
リッチと言えば知識を持ったアンデットで、強力な魔法を使うというのが俺の持っているイメージだ。
リッチが部屋に入った俺達の方をジロリと見詰める。
「よし! 動きが止まったぞ!」
「今の内にやっちまおう!」
2人の冒険者達がリッチに切り掛かる。
『やっと現れたな...。お前達は邪魔だ。ヘルフレイム』
2人の足元から黒い炎が吹き出し2人を燃やす。
「ぎゃぁぁぁ!」
一瞬にして2人が消し炭になる。
『少年と少女よ。待っていたぞ。お前達と戦うためにわざわざ90階層からこの階層まで転移して来たのだ。楽しませてくれよ』
リッチは明らかに俺達に話し掛けている。
本来なら90階層にいるモンスターということか...。
「俺達を待っていたとはどういう意味だ? お前は一体...」
『我の名はリッチ。90階層の階層主だ。今は我と入れ替わりにゴブリンナイトが90階層を守護しておるがな』
リッチの言葉を聞き戦闘中だった冒険者の動きが止まる。
「きゅ...90階層の主とかSランクの冒険者が束になって掛かっても倒せるかどうかってモンスターじゃないか...そんな相手に俺達が勝てる訳がない...」
絶望にかられた冒険者達がその場にへたり込んでしまう。
『邪魔者には消えてもらうとしよう』
リッチが冒険者達に手をかざす。
「止めろ!」
『ヘルフレイム』
俺が放った魔法はリッチの身体を燃やした。




