その239 いよいよ黄昏の迷宮に入ります
「おい。お前は私と一緒に街へ帰るんだ」
ワイバーンはウィズダムの指示を全く聞こうとしない。
完全にニアの後を追い掛けているように見える。
「何故、召喚獣が言うことを聞かないんだ...」
ウィズダムが何度もワイバーンに指示を出すが、ワイバーンは全く従う素振りを見せない。
「貴方はウィズダムさんと街に戻りなさい。また必ず会いに行くから」
ニアがワイバーンの頭を撫でながら話すと、ワイバーンは悲しそうな泣き声を上げながらウィズダムの方へと戻って行った。
そのままウィズダムを背中に乗せると街の方角へ向かい飛び去って行った。
「それじゃあ俺達は迷宮へと入ろうか」
「はい」
俺はニアとリュートを連れて迷宮へと入って行った。
迷宮の入り口は地面が盛り上がったところにあり、そこから階段で下へ降りていくような感じだ。
俺達は迷宮へと足を踏み入れるが、迷宮内は明るいとまではいわなくとも、中を探索するのに困らないだけの灯りがあった。
完全に光も射さない地下で電気などがある訳でもないのに不思議だ。
「一体パンピーソードはどこにあるんだろうね」
冷静に考えたらどこにあるか検討も付かない物を探すなど、海とまでは言わなくとも川の中で無くした物を探すようなものだ。
迷宮の全てを調査しながら降りて行ったら途方もない時間が掛かってしまう。
「おそらくサーチの魔法を使えばパンピーソードがどこにあるかわかると思いますよ。やってみましょうか?」
いつの間にかそんな便利な魔法も覚えていたのか。それさえあれば他は調査をせず階段さえ見付ければ最短で下に降りることが出来る。
「ニア。頼むよ」
『サーチ』
ニアは目を閉じ魔法を発動させると周囲に光が広がって行った。
「わかりました。パンピーソードがあるのは地下15階となります」
地下15階か...。それくらいの階層なら何人も辿り着いた人間がいる筈だが、未だに残っているのは何故だろうか? 村人専用の剣となれば需要はないかも知れないが、一応売る目的で持って行こうとする者が居ても良い筈だ。
強力なモンスターが守っていたりするのだろうか。
「ありがとう。それじゃあ地下へ降りる階段を探して、ドンドン下へ降りて行こう」
「地下15階までの階段の位置も全てわかりますよ。案内しますね」
そう言うとニアは俺の前に立ち、歩き始める。
階段の場所まで全てわかるとは迷宮に対してはチートな魔法だな。
俺は先に進むニアの後ろを付いて行くことにした。




