その229 クロノカラムには炎が有効なようです
「わかった。俺達は[マース]へと撤退する」
「そんな! シリウスさん! あんなガキ2人に任せて逃げるとか、冒険者としての誇りに傷が付きます!」
「物理攻撃が通用しないのなら、俺達が居ても足手まといになるだけだ。それ程凄いヒールを使えるなら攻撃魔法だって強力なものが扱える筈だ。俺達が居たら魔法だって放ちにくいだろう」
確かに前にニアが使ったフレアバーストの威力は凄かった。
モンスターの周りに人間が居れば、その人間を巻き込んでしまうだろう。
「わかりました...」
ボルンゴは歯をくい縛り悔しそうにしている。
Fランク冒険者に手を借りて、Aランクである自分が撤退するという行為に抵抗があるのだろう。
「それでは俺達は撤退させて貰うぞ。後で改めて[マース]でお礼を言わせてくれ」
「助けてくれてありがとうな」
「お前のヒールがなかったら今頃死んでただろう。後からお礼をしたいから死ぬんじゃないぞ」
4人はこの場から離れて行く。俺はその間もずっとクロノカラムと戦闘を続けている。
自分のステータスを確認すると炎の加護がFとなっている。
炎の魔法に対してはかなり耐性が低いのだと思われる。
ニアのフレアバーストなら大ダメージを与えることが出来るかも知れない。
「ニア。クロノカラムに対してフレアバーストを放つことは出来るかい?」
「はい。ですが、シオンお兄ちゃんが近くに居たら巻き込まれてしまいます...」
あんな魔法に巻き込まれたら確実に焼け死ぬ自身がある。
かと言って俺がコイツから離れれば、標的がニアに変わってしまうかも知れない。
俺が戦いを続けながら悩んでいると、リュートが飛んできた。
「キュイイイ!」
リュートは口を開くと、クロノカラムに向かって炎のブレスを吐き出した。
「グォォォォ!」
クロノカラムが苦しがっている。
俺はリュートの口をクロノカラムに向けたまま、リュートを抱き抱えてクロノカラムとの距離を取る。
流石にこれだけ離れれば大丈夫だろう。
リュートのブレスは止まったが、クロノカラムはまだ苦しんでいる。
「ニア! 頼む!」
『フレアバースト!』
ニアが放った小さな炎の玉がクロノカラムに当たった瞬間に大爆発が起こる。
「グォォォーン!」
クロノカラムが大きな叫び声を上げ横に倒れる。
その巨体が地面に着くと辺りに震動が走る。
前回フレアバーストを放った時は息切れをしていたニアだったが、今回は様子に変化はない。
LVアップによりMPも増えているのだろう。




