その218 そっちがその気ならこっちもやってやります
「くっそぉ!」
俺はケビンの左足を掴んで思いっきり引く。
片足だけになったケビンがバランスを崩しその場に倒れる。
「うおっ!」
俺は力を振り絞り立ち上がると、ケビンの上に馬乗りになった。
「今度は俺の番だぁ!」
馬乗りになったまま無事な左手でひたすらケビンの顔面を殴り付ける。
「があっ! ぐうっ!」
それなりにイケメンだったケビンの顔が、今は見る影もなくなっている。
「くっそぉ!」
ケビンが俺の背中に膝を打ち付ける。
「ぐうっ!」
衝撃で俺の手が止まるとその隙にケビンが身体を抜き立ち上がる。
「はぁ、はぁ...お互いにかなりダメージを負ったようだな」
ケビンが立ち上がるのに続き、俺もその場に立ち上がる。
お互いに向き合ったまま動きが止まる。
俺達がお互いに様子を伺っているとそこにリサが現れる。
「ケビン...あの娘異常だわ...あの年齢で私と互角の撃ち合いが出来るなんて...てか、あんた酷い顔ね」
「そっちもか...こっちも、俺と互角に戦える相手がいて驚きだぜ。少ししゃくだがあれを使うか?」
「そうね。そのままファランも滅ぼしてくれれば一石二鳥だしね」
リサが何やらブツブツと呟きだした。
するとリサの前に巨大な魔法陣浮かび上がる。
「出でよ魔竜!」
魔法陣が光輝くと巨大な竜が出現する。
体長10m近くはあるだろう。
全身真っ黒で、その背中には二枚の大きな翼が生えている。
『我の力を欲するのか?』
魔竜は普通に人間の言葉を話している。
高位の竜は全て言葉を話すことが出来るのだろうか。
「魔竜。あの2人の人間を殺しなさい。殺した後はファランを破壊するのよ」
『我に人間と戦わせるだと? たかが人間と戦わせる為に我を呼ぶとは愚かな...』
「いいからさっさとやりなさいよ! 命令には従いなさい!」
俺の様な人間と戦うことに不満があるのか、闇竜は乗り気ではないように見える。
だが、リサの命令には従うことにしたようだ。
ノソノソと俺達の方へ向かってくる。
「ニア。こっちも聖竜を召喚しよう」
「はい!」
魔竜に対抗するべく、こちらは聖竜を召喚することにした。
聖竜なら魔竜とも良い勝負が出来るだろう。
ニアが作り出した魔法陣から聖竜が現れる。
『2人とも元気にしていたか?』
俺の今の姿を見れば元気でないことは一目瞭然だと思うのだが...。
俺達の前には巨大な竜が2体向き合う形となった。




