その215 互角な筈じゃなかったんですか?
さてどうしたものか...。
もしもこの男女が同じくらいの実力の持ち主だとすれば、俺は自分と互角の人間を同時に2人相手にすることになる。
しかも相手はモンスターと違い人間だ。
それなりの知能もあるし、自分の持つ魔法やスキルの特性何かに関しては俺よりも詳しい筈だ。
そんな相手と戦って勝機があるとすれば、相手が俺の能力を知らない間に奇襲を掛けるしかない。
「どうしたんだ? 何故、来ない? 俺達2人を同時に相手してくれるんじゃなかったのか?」
「くっ...」
男の持つスキルの中でドラゴンノヴァというスキルがある。
俺はドラゴンノヴァの効果を確認する。
〖ドラゴンノヴァ〗ドラゴンのブレスの様に強烈な一撃を放つ。相手の防御を無視してダメージを与えることが出来る。
これは相当強そうだ。防御を無視出来るなら、どけだけガチガチの相手にでも大ダメージを与えることが出来る筈だ。
もしかしたらこの一撃は相手を殺してしまうかも知れない。
それでも殺らなければ殺られる。
俺はドラゴンノヴァを放つ覚悟をした。
両手を男女の方へと向ける。
「おっ? 何かするつもりか? お前の力を見せてくれよ」
『ドラコンノヴァ!』
俺の両手から強力なエネルギー波が発射される。今までに使ったどのブレスよりも強い力を感じる。
「へぇー、まさかドラコンノヴァを使えるとはね。少し舐めていたようだな」
男に慌てる様子はない。このコースなら男の後ろにいる女にも直撃する筈だが、女も慌てた素振りはない。
『ドラコンノヴァ!』
男は俺よりも後から放ったドラコンノヴァで、俺の放ったドラゴンノヴァを消滅させ、そのまま俺の身体に直撃する。
「うわぁぁぁ!」
身体が後方に吹き飛ばされ、相当な痛みが俺の身体を襲う。
このまま俺は死んでしまうのだろうか...。
「ぐっ、ううっ...」
攻撃は収まったが俺は何とか生きているようだ。
こちらのブレスを打ち消したことにより、多少は威力が落ちていたのだろう。
それにしても、同じくらいの威力がぶつかり合った筈なのに何故、俺のドラゴンノヴァだけが消滅させられたのだろうか。
「シオンお兄ちゃん!」
ニアが俺の元に駆け寄る。
『ヒール』
ニアが掛けてくれた回復魔法が俺の身体を癒す。
「ありがとう。ニアはここから離れていて」
俺が離れるように言ってもニアが動く気配はない。
「私もシオンお兄ちゃんと一緒に戦います!」
「でも...相手は人間なんだよ? この2人は傷付けずに勝てる様な相手じゃないんだ」
「確かに人間を傷付けるのは嫌ですけど...シオンお兄ちゃんが傷付くのはもっと嫌です!」
ニアは俺と一緒に2人と戦うと覚悟を決めたようだった。




