その213 どうやら日本人ではないようです
オルトロスはニアを噛み殺そうと大きく口を開けた。
ニアはその口の中に向けて魔力の槍を突き刺す。
「ウォォォン!」
喉を貫かれたオルトロスは、大きな叫び声を上げた後、ピクピクと痙攣して動かなくなった。
それなりに防御力も高いであろうオルトロスを一撃で葬るとは凄い威力だ。
危険がなくなり、少し速度を緩めた俺がニアの元へ到着する。
「ニア。大丈夫だったかい?」
「はい。シオンお兄ちゃんは大丈夫でしたか?」
「俺はケルベロスの一撃を食らって結構...あっ...」
オルトロスとの戦闘を決めた俺の身体は完全回復をしていた。
これならニアに回復魔法を掛けてもらう必要もない。
「今は大丈夫。オルトロスをぶん殴ってやろうと思ったら身体が治ってたよ。それにしてもニルヴァスの杖って本当に凄い武器なんだね」
「はい。普通の杖では武器として使って戦うということは出来ないですからね」
「2人組の男女と言うのは見たかい?」
「いえ。私は見ていません」
ニアも見ていないということは本人達は来ていなかったということか? だとすれば、新たなモンスターが現れない限り、今回の依頼はこれで終了だと思うが。
その時、街の方向から大きな音がした。
「一体何だ!?」
街の方に視線を向けると街の入り口の方から煙が上がっていた。
他にもモンスターが居たのか。
モンスターを任されたのに、モンスターによって街に被害が出てしまったら責任問題だ。
焦った俺は直ぐに街へと向かう。
街へ戻った俺の目に映ったのは何人もの兵士の死体だった。
入口が兵士の死体により通れなくなってしまっている。
「ぐがぁぁぁ!」
声のする方を見ると、1人の男がガイアの喉元を持ち、宙へと持ち上げていた。
自分よりも明らかに体格の大きいガイアを軽く持ち上げているように見える。
男は少し長めの金髪で青い眼をしていることから、日本人ではなく白人のように思える。
「おいおい、こんなザコばかり集めて俺達を舐めてるのか?」
「がっ、がぁっ...」
喉元を掴まれ、ガイアは窒息しそうになってしまっていた。
「ちょっとー、窒息死は止めてよ。そんな男の排泄物なんて見せられたら気分悪くなるし」
男の側には女の姿がある。
女の方も金髪に青い眼をしている。
彼等の様に日本以外から転移された人間もいるということだろう。




