その211 チワワやポメラニアンとは別もののようです
「今の声は?」
人の声ではなく獣の鳴き声なのは間違えない。
「ひぃぃ!」
「き、きたぁ!」
兵士達は相当怯えている。
この声の主がわかっているんだろう。
俺達が街の外へ走ると2頭の大型の獣が叫び声を上げていた。
2頭は似ているが別のモンスターの様で、1頭は2つ首でもう1頭は3つ首のモンスターだ。
見た目は犬にも見えるが、狼の様にも見える。
体長5m近くはあるんじゃないだろうか。
こんなモンスターが衝突すれば、建物があんな風になってしまうのも無理はないだろう。
「かなり強そうだな...」
「あの2頭はケルベロスとオルトロス。フェンリルを遥かに上回る程の強さを持つ魔物です」
ケルベロスとオルトロス...よくゲームとかで聞く名前だが、実際に見てみるとかなり恐ろしい見た目をしたモンスターだ。
人間なら余裕で1噛みで噛み殺してしまえそうだ。
「ニア。どっちか1頭お願いしても大丈夫かい?」
「わかりました。それでは私がオルトロスと戦います。2つ首の方がオルトロスです」
「了解。だったら俺がケルベロスの方をやるよ」
俺達は2手に別れると、それぞれが相手をするモンスターへと向かって行く。
ケルベロスの顔の1つが口を開くと、そこから炎が吐き出される。
俺は氷のブレスを発動させてケルベロスの炎を凍らせる。
自分のスキルを確認したことから、ケルベロスがファイアブレス、アイスブレス、ヒートブレスの三種類のブレスを吐くことがわかっている。
おそらくヒートブレスというのは麻痺系のブレスだと思うので、このブレスだけは絶対に食らわないようにしなければならない。
ヒュドラといい、聖竜といい、やたらとブレスを吐いてくる敵が多いな。
ファイアブレスを防いだ俺の元にケルベロスが突っ込んで来る。
相当な速さだ。
突っ込んで来る勢いそのままにケルベロスは俺に向けて大きく右手を振った。
ケルベロスの手が俺の身体に当たると、俺は大きく横に吹き飛ばされた。
そのまま地面へと身体を打ち付ける。
「うぐっ!」
一撃攻撃を受けただけなのにかなりのダメージだ。
ニアに回復魔法を掛けて貰おうかとニアの方を見るが、ニアはオルトロスとの戦闘中でそんな余裕はないようだ。
それだけオルトロスが強敵だということだろう。
仕方ない。こうなれば自力でやるしかない。
今の俺にはケルベロスを倒せるだけの力がある筈なんだ。
俺は痛む身体に力を入れて立ち上がった。




