その21 山頂に到着しました
ひたすら登り続けていると道がなくなり、かなり開けている場所へと出た。縦横50mくらいの広さはありそうな場所だ。高低差も見られないし、これ以上登れそうな場所もない。おそらくここが山頂なのだろう。
周りを見渡しても、奥の方に直径15m程の窪みがあるだけで、他には何もない。窪みはこの位置からでは中を確認することが出来ないので、どれくらいの深さなのかも分からない。
「やっとついたな。卵があってくれると良いんだけどな」
「卵?」
俺にはガンツが言っていることがサッパリ分からなかった。
「ああ。シオンには言ってなかったんだが、俺達はドラゴンを倒しに来た訳じゃないんだ。Bランク1人とCランク2人なんかでドラゴンと戦ったら一瞬で全滅だからな」
ガンツのいきなりのカミングアウトに頭が追い付かなかった。ドラゴンを倒す為に来たのじゃないとしたら、一体何をしに来たんだ? まさかドラゴンを見学しに来たって訳でもないだろう。
「ドラゴンの卵はとても貴重なものでな。俺達はその卵を手に入れる為にこの山に来たって訳だ」
なるほど。そういうことか。ドラゴンの卵を手に入れる為にここまで来たってことは、もしかして一番大切な役目ってドラゴンの卵を取ってくる役目か!? いや無理無理! ドラゴンがいない場所から卵を取って来るだけなら、俺でも可能だと思うが、ドラゴンがいる所から卵を取るとなったら2秒で死ねる自信がある。
そもそもここが山頂らしいが、ドラゴンの姿もないし卵らしきものも何所にもない。
「ドラゴンの姿も卵もないようですけど...?」
「あの窪みを覗いてみな」
ガンツは窪みの方をクイっクイっと指差している。
嫌な予感がした俺は、窪みまで慎重に近付き覗き込んでみた。窪みの深さは5m程で、底には体長10m近い真っ赤な色をしたドラゴンが横たわっている。よく見るとドラゴンの直ぐ横に1mくらいの大きさの卵が置かれている。卵もドラゴンと同じく真っ赤な色をしている。
そっと窪みから離れガンツ達の元に戻ると、今見たことをそのまま説明した。
「卵があったか。良かったな! シオン。これでお前にも出番が回って来たぞ」
「ガンツさん。街に戻ったら祝杯ですね!」
卵があったことを伝えると3人は喜んでいる。だが流石にあの状況で卵だけを取って来るのは不可能だ。
いくら俺がモブキャラパワーを発動させて存在感を消した所で、確実に見付かってしまう。
「えーっと...卵はドラゴンの直ぐ隣にあって、卵だけ取って来るのは難しいかと思うのですが...」
「ああ。流石にそれは無理だな。実はこの山のドラゴンにはある特性があってな」
特性? もしかしたら低LVはターゲットにされないとかそういうことか? だとしたらGランクの俺が必要になる理由も全て納得が出来る。
「この山のドラゴンはフレアドラゴンと言ってな。フレアドラゴンには、低LVの人間から狙って攻撃をするという特性があるんだ」
何だろう...ガンツの言葉を聞き、物凄く嫌な予感がしている。




