その203 ファランを攻撃しているのは異世界人のようです
俺達は兵士の後に続いて街の中へと入って行く。
街の中に入って直ぐの建物がまるでトラックにでも衝突されたかの様に壁が崩れてしまっている。
これも例の2人組とやらの仕業なのだろうか。
兵士に案内された先は大きな一軒家だった。
ガラードの屋敷に比べれば小さな家だが、一般家庭の家に比べればかなり大きな家だろう。
家の入り口には1人の男が立っている。
男はおそらく年齢50代前半。他の住民に比べると少し着ている物が高価な気がする。
「キートン様。お二人をお連れしました」
「うむ。ご苦労だったな。お前は持ち場に戻ってくれ」
「はっ!」
男の指示を受けると兵士はこの場から離れて行った。
どうやらこの男が[ファラン]の代表で間違えないようだ。
格好からすると別に貴族という訳ではなさそうだ。
「始めましてシオン殿。ニア殿。私は[ファラン]の代表を勤めさせて頂いている者でキートンと申します。いきなりですが、シオン殿とニア殿の実力を見込んでお願いしたいことがあるのですが...」
本当にいきなりだな。キートンの頼みというのは大体予想が出来る。
おそらく俺とニアにこの街に攻撃を仕掛けている2人組を何とかしろということだろう。
もちろん命を懸けて戦えと言うのなら、それなりの対価を支払って貰う必要がある。
英雄を目指す身とはいえ、一応冒険者ギルドに登録をしている冒険者だ。無報酬では話しにならない。
ただ、自分から報酬のことを言い出すのは気まずい。何とか向こうから言い出す形にしたいところだ。
「俺達に頼みたいこととはなんでしょうか?」
「この街に攻撃を仕掛けてくる2人組を捕らえて頂きたいのです!」
うん...知ってた。ガラードが俺達のことをどう伝えたかはわからないが、それなりの実力を持っているということは知っているのだろう。
「その2人組というのは魔族ではなく人間なのでしょうか?」
「はい。おそらくは別の世界から来た人間だと思います」
転移者か...。この前に会った男だったら相当ヤバイが、あの男は勇者だった筈。おそらく別人だろう。
今までは戦う相手が〖五十歩百歩〗のことを知らなかったから、何とか勝つことが出来ていたが、知っている人間なら対策をすることも可能な筈だ。
例えばスライムを捕まえてきて、スライムと戦わせている間に遠くから魔法を撃ち込まれれば、1発で即死確定だ。
「もう既に街の人間が何人も、2人が従えるモンスターによって殺されているのです! どうか貴殿方のお力をお貸し下さい!」
報酬の話を一切出さないな。さて、一体どうしたものか...。
俺は暫く考える素振りをして見せた。




