その201 次の目的地はファランです
朝になり俺達が目を覚ますと部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
朝食の方が出来上がったようで、スージーが俺達を呼びに来てくれたようだ。
昨夜とは違いニアの顔には笑顔が戻っている。
俺達はスージーと共に食堂に行き、朝食の方を済ませるといよいよ旅立ちの時が近付いてきた。
「シオン殿...ニア殿...寂しくなるな...」
「また会えますよ。きっと」
「そうだな...私が強くなることが出来たらシオン殿の元へ行くから待っていてくれ」
強くなるか...。〖五十歩百歩〗のせいで強くなろうとする気持ちが薄れてしまっている。
仮に俺が鍛えまくってこの世界で最強の男になったところで、スライムを相手に戦えば結局俺の能力はスライムと同等になってしまう。
「黄昏の迷宮に行くなら、先ずはここから南にある[ファラン]の街に行くと良い。あの街の代表は私の知り合いでな。この手紙を渡しておこう。何かあれば力になってくれる筈だ」
「ありがとうございます」
俺はガラードから[ファラン]の代表宛に書いてくれた手紙を受け取った。
街の代表に世話になるような機会はないと思うが、何かあった時の保険にはなるだろう。
「ニア殿。また会おう。もしも友がピンチに陥ることがあれば、必ず私が駆け付けよう」
「スージーさん...。はい!」
俺達はガラードの屋敷を後にすると街の出口へと向かった。
街の外に出て少し離れた場所まで行った所でニアがシルキーを召喚する。
俺達はシルキーの背中に跨がり[ファラン]を目指した。
ただひたすら南へと走って行く。
パルマを出発したのは朝だったが、辺りは暗くなってきている。
辺りが真っ暗になったところで、シルキーに止まってもらい、その場にテントを張る。
食料などはニアのマジックボックスに十分過ぎるほど収納してある。
食事を済ませ、テントの中で一夜を過ごし、朝になればまた再び[ファラン]へ向けて走り出す。
シルキーの体力が心配だったが、流石はユニコーン。朝から夜まで休むだけで、10時間以上走れるだけの体力を回復させることが出来るようだ。
パルマを発って3日目の朝。俺達は[ファラン]へと到着した。
馬車で向かっていたら遥かにこれ以上の時間が掛かっていたことだろう。
シルキーを戻しファランに近付くが、ファランの周囲に異常な点が見られた。
ファランの周りは低い柵で覆われているのだが、入り口の左側の策が広い範囲で倒れてしまっている。
一体何が起こったのだろうか...。俺達が不思議に思っていると街の中から多数の兵士が出てきた。
「お前達! ファランを襲ったビーストテイマーだな!?」
俺達は一瞬にして兵士達に囲まれてしまった。




