その200 ライクとラブは全くの別物です
「もし、元の世界に戻れなくなったらスージーさんと結婚するのもありかな。先ずはお付き合いから始めてだけどね」
この世界なら初めて出会った相手といきなり結婚ということもおかしくないのかも知れないが、流石に俺にそれは無理だ。
「そうですか...スージーさん綺麗ですもんね...」
ニアが少し寂しそうな顔をする。
「ニアは好きな男の子とかは居ないの?」
こっちの世界ではわからないが、俺の世界ではニアくらいの年齢なら彼氏や彼女が居るマセた子供も存在する。ニアに好きな男の1人や2人居てもおかしくはない。
「私が好きなのはシオンお兄ちゃんです」
俺が聞いたのはライクではなく、ラブのつもりだったのだが...。
「ありがとう。俺もニアのことが大好きだよ」
照れ臭かったのか、ニアの顔が赤くなる。
「じゃあ...私をシオンお兄ちゃんのお嫁さんにして下さい!」
どうやら俺に対してのニアの好きはライクではなくラブの様だ。俺のニアへの気持ちはラブではなく、ライクだったのだが...。
「いや...流石にニアの年齢でお嫁さんは早いよ。もうちょっと大きくならないと」
「私が大きくなったらですか...」
ニアが悲しそうな顔をする。俺が元の世界に戻ることになった時、ニアが俺の世界に来るつもりなら時間はある筈だ。
「私は大人にはなれないかも知れません...」
ん? 一体どういう意味だ? ニアが大人になれないとは魔族の成長の問題点のことなのか?
それとも後、数年の命とでも決まっているのだろうか...。
「ニア。それは一体どういうこと? 何か身体の調子でも悪いの?」
「いえ...もしかしたら勇者が私の前に現れ、私の命を奪ってしまうかも知れないと思いまして...」
勇者か...。前に出会った勇者は魔族側の人間だった様だが、本来なら勇者は人間側の筈だ。ニアの命を脅かす可能性は十分にある。
「もしも勇者がニアの命を狙うのだとすれば、絶対に俺がニアを守るから安心して」
「ありがとうございます...」
何故かニアは浮かない顔をしている。言葉ではお礼を言っていても喜んでくれている様には見えない。
「今日はニアも疲れていると思うし、早めに寝ようか?」
「はい...」
ニアは自分のベッドに向かう。珍しく俺のベッドに入って来ようとはしない。
リュートは俺の足元にチョコンと腹を着ける。
ニアの態度が少し気にはなるが、今特別何かが出来る訳でもないので、俺は眠りに付くことにした。
俺が目を閉じて数時間が経過する...。




