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その20 アンカーのプレッシャーには勝てません!

 現実世界では山登りをしたことがなく、初めての山登りが異世界でとなったが、意外とそれ程苦しい思いはせずに登って行くことが出来た。高低差があまりなく、緩やかな坂道だったのが良かったのかも知れない。


 先に登っている3人の顔には笑みが浮かんでいる。ドラゴンとの戦闘をそんなに楽しみにしているのだろうか? 俺の頭に1つの疑問が浮かんだ。


 依頼内容はドラゴンの討伐だったが、その依頼はガンツが出したものだった。普通討伐依頼というのは困っている人間がギルドに出すものではないのだろうか? Gランクの俺を雇っても、戦力にならないのは分かりきってるし、別に雑用などをやらされる様子もない。


 そもそもガンツ達3人でドラゴンを倒すことが可能なのだろうか。 


「ガンツさん。ドラゴンの討伐依頼ということでしたが、俺に何か役に立てることがあるんですかね?」


「ああ。シオンには一番大切な役目が待っているぞ。期待しているから宜しく頼むな!」


 一番大切な役目? 思い返してみてもそんなことは、小学校の時に運動会で、リレーのアンカーを任された時くらいしか思い浮かばない。


 もちろん俺が速かったから任されたのではなく、誰もやりたがる人間がいなかったので、俺が無理矢理押し付けられた形でアンカーになったのだ。


 意外にも俺の走る番が来るまでは2位という好成績だったが、逆に2位という順位にプレッシャーが掛かり、スタートでいきなり躓いて転んでしまった。


 結果俺達のクラスはドベになり、みんなから集中砲火を食らうことになったが、その後クラスでハブられたりすることはなかった。俺には元々クラスで会話をする様な人間がいなかったからだ。


 いや1人だけいたな。確か名前は水野誠。誠はかなりのイケメンで性格も良く、クラスのみんなからも好かれ、俺みたいな陰キャにも分け隔てなく接してくれていた。


 確か親の転勤か何かで、小学校を卒業すると同時に引っ越しをしたんだっけな。


 誠が今のクラスにいたら、慎吾よりもよっぽど人気者になっていたに違いない。ああいう男が異世界に転移したら勇者とかになるのだろう。


 昔の想い出を振り返っていたが、今はそれどころではないということに気が付いた。


 一番大切な役目ってなんだ? 今の俺には何も出来ることが思い浮かばないぞ。


「ガンツさん? 一番大切な役目ってなんですか?」


「それはドラゴンの所に行くまで楽しみに待っていてくれ」


 ガンツは質問を濁した。しつこく聞くのも良くないかと思い、それ以上何かを聞くことはしなかった。まぁ俺がGランクということは分かっている筈なので、無茶なことをやらされることはないだろう。


 俺は3人に続き山頂へと足を進めて行った。


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