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その199 元の世界に戻れないことは考えていませんでした

 結婚話により中断していた食事だったが、再開されて15分程が経過すると皆、全ての食事を食べ終わった。


 リュートに至っては、俺がスージーとの結婚話をしている時には既に食べ終わっていた。


「それで、これからシオン殿はどうするつもりなのだ?」


「私はこれから黄昏の迷宮に向かおうと思っています。あの迷宮に眠ると言われている武器で手に入れたい物がありますので」


「ふむ、そうか...あの迷宮の近くには最近強力なモンスターが現れるという話だが、シオン殿とニア殿なら問題はないだろう」


 強力なモンスター? いくら強いモンスターだとしても聖竜を越えるモンスターなど中々居ないだろう。いざとなればニアに聖竜を召喚して貰えば良い。


「それからこれは今回の報酬だ。足りなければ追加をするので遠慮なく言ってくれ」


 そう言ってガラードは俺の目の前に30枚の白金貨を置いた。


「こ、こんなに頂いても宜しいのですか?」


「もちろんだ。帰ってきた御者に聞いたが、スージーを狙った盗賊の方も撃退してくれたようだからな」


「あ!? ニア。マジックボックスの馬車を」


「はい!」


 食事を終えた俺達が席を立ち上がる。


「どうしたのだ?」


「ニアのマジックボックス内に修理が必要な馬車と、亡くなった馬達が収納されています。今から屋敷の前に出しても宜しいでしょうか?」


「なんと! ニア殿はマジックボックスも使うことが出来るのか! 宜しく頼む。私も付いて行こう」


 俺達は食堂を出ると屋敷の外へと向かった。


 屋敷の外に出ると、ニアのマジックボックスに収納していた壊れた馬車と死んだ馬達をその場に出した。


「ニア殿。助かったぞ。後は屋敷の人間に任せ、シオン殿とニア殿は休んでくれ。部屋は昨日と同じ部屋を使ってくれれば良いが、場所はわかるかな?」


「はい。大丈夫です」


「それではシオン殿。また明日だな」


「はい。スージーさん。おやすみなさい」


 2人と分かれて俺達は昨夜泊まった部屋へと向かった。


 部屋に着き、中に入った俺はベッドの上に腰を掛けた。


 ニアが俺の隣にちょこんと座る。


「シオンお兄ちゃんは魔王を倒したらスージーさんと結婚するんですか?」


 ニアが俺の顔を覗きこむ様に視線を向ける。


「いや...俺はスージーさんと結婚は出来ないよ。俺は魔王を倒したら元の世界に戻らなくちゃいけないしね」


「もしも元の世界に戻れなくなったらスージーさんと結婚しますか?」


 元の世界に戻れなくなったらか...。確かに元の世界に戻れるという保証がある訳じゃない。


 そうなったらこの世界に残された俺はどうなるのだろうか。


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