その191 スージーに異世界人だと打ち明けました
意識を失っているであろう聖竜は放置しておいて、先ずは皆の安否の確認だ。
「シ、シオン殿...」
ようやく立ち上がったスージーが俺の方に向かって歩いて来る。
「スージーさん。大丈夫ですか?」
「ああ...私は大丈夫だ...。それよりもシオン殿の今の力は...?」
今までのスージーの反応から見て俺が異世界人だと言うことは、アーロンから知らせれていないようだ。流石にあれだけ協力なブレスを連発すれば、スージーの追求を逃れることは出来ないだろう。
そもそもブレスと言うのは口から吐き出すからブレスと言うのであって、手からブレスを放つなど人間技ではない。
ニアに話した時と同じ様な感覚があるスージーなら信じても良い気がする。
俺はスージーに自分が異世界人だということを打ち明け〖五十歩百歩〗のことも説明した。
それを聞いたスージーは全てに納得がいったようだった。
大サソリを一撃で倒す俺の拳で倒れない盗賊のことも、ずっと気になっていたようだ。
「なるほどな...。聖竜と互角の力を持つことが出来るなら、聖竜を倒したとしても不思議ではないな」
ニアがこちらに向かって来るのに合わせて、聖竜に吹き飛ばされたシルキーとリュートもこちらに集まってくる。
良かった...。シルキーとリュートも無事だったようだ。
シルキーはスージーに聞こえないように俺の耳元でボソッと囁く。
「中々やりますね。まぁ、ニア様の力があったとはいえ、多少は認めてあげましょう」
皮肉っぽい言われ方だが、多少でもシルキーに認めて貰えたのは嬉しいことだ。
「私の魔法もまだまだですね。シオンお兄ちゃんの力になる為にも、もっと強くならないと...」
スージーが不思議な顔でニアを見つめている。
俺にはその理由がわかる。
俺が異世界転移者ということは、妹ということになっているニアはどうなのかって話だ。
「ニア殿はシオン殿の妹にあたるのだろ? ではニア殿も異世界人ということになるのか?」
ギルドの人間には通った異世界兄弟説だが、スージーは馬鹿ではない。もうこれ以上隠しておくことは厳しいだろう。それに、出来ればスージーにはこれ以上嘘を重ねたくない。
「実は俺とニアは本当の兄弟じゃないんです。俺は異世界人ですが、ニアはこの世界の人間です。旅をしていて出会ったのですが、俺はニアのことを本当の妹の様に思っています」
流石にニアが魔族だということ迄は言うわけにはいかない。
「そうだったのか...。ソナタ達からは本当の兄弟よりも強い絆を感じる。羨ましいものだ...」
スージーは悲しそうな顔をしている。スージーには仲の悪い兄弟でもいるのだろうか...。
『うっ...ううっ...』
聖竜が意識を取り戻したようだ。
だが、今回の目的は聖竜の討伐ではない。聖騎士の証を手に入れることだ。
意識を取り戻した聖竜がこちらへ向かってきた。




