その189 聖竜との戦いが始まりました
「お前が聖竜か? 私は聖騎士の証を手に入れる為にこの谷に来た者だ」
『ふむ。聖騎士を目指す者か? もちろんただで聖騎士の証を与えて貰えるとは思っておらぬだろうな?』
「お前に実力を認めさせれば良いと聞いた。その覚悟は出来ている」
スージーは剣を抜いて構えた。
『それではお前達の力を見せてもらおうか。そこにいる少女から感じる力...楽しみだ』
聖竜はニアの力に気付いている様だ。ニアの力が聖竜にも通用するのだろうか。仮にニアの力が及ばない程強かったとしても、俺にならやれる筈だ。
自分の身体の中に未だかつてない程の大きな力を感じる。
『ウィンドカッター』
ニアの魔法から戦いが始まった。
聖竜は大きく口を開けると炎のブレスを吐き出した。
ブレスが風の刃に当たると魔法が消滅する。
ニアの魔法が通じなかったことなど初めての経験だ。
ここは初っぱなから俺が全力を出し切るしかない。
俺は聖竜の前まで走ると拳を握り締め、聖竜の顔を目掛けて拳を突き出した。
聖竜は左腕を大きく振り、俺の身体に叩き付けた。
「がはっ!」
俺の身体は大きく後ろに吹き飛ばされる。
「シオン殿!?」
スージーはドラゴンの背後を取ると、大きく飛び上がり剣を振り上げた。
「はーっ!」
剣を降り下ろそうとしたスージーに向けて聖竜は尻尾を叩き付ける。
「がはっ!」
スージーは横に飛ばされ、身体は地面へと叩き付けられる。
「くっ、ううっ...」
かなりの衝撃だったようで、スージーは起き上がろうとするが、中々起き上がれないでいる。
聖竜はジリジリとニアに近付いて行く。
『ウォーターボール』
ニアは聖竜に向けて巨大な水の玉を放った。
聖竜は大きく口を開いて氷のブレスを吐き出した。
ニアの放った水の玉はカチコチに凍ると地面に落下して砕ける。
ニアの顔からは焦りが見られる。自分の魔法が通用しない相手などニアにとって初めての経験なのかも知れない。
聖竜はニアの目の前まで行くと大きく右手を上げる。
「ニア様!」
ニアと聖竜の間にシルキーとリュートが割り込む。
『サンダーボルト』
「キュィィィ!」
シルキーの放った電撃に合わせてリュートが炎のブレスを吐く。
『むうっ!』
電撃と炎のブレスが聖竜に直撃するが、聖竜は倒れない。
そのまま右手でシルキーとリュートを吹き飛ばす。
吹き飛ばされたシルキーとリュートは岩肌へと叩き付けられた。
「ううう...」
「キュー...」
再び聖竜はニアをターゲットに定めると大きく口を開け、炎のブレスを吐き出した。
「やめろぉ!!!」
スージーに見られていても関係ない。俺は聖竜の吐き出した炎のブレスに向けて氷のブレスを放った。




