その184 流石に徒歩で行くのは厳しいのですが
「凄いな...普通ショックボルトといえば痺れさせて、一瞬相手の動きを鈍らせるくらいの効果しかないが、ニア殿が使うとこれ程の効果があるのか...」
盗賊達は完全に気を失っている。暫く目覚めることはないだろう。
「それにしても困ったな...」
スージーは馬達の方へ視線を向ける。1頭は元気な姿を見せているが3頭は完全に死んでしまっている。
スージーは箱の方に向かい箱の中で怯えている御者に声を掛ける。
「もう安心だ。出てきても大丈夫だぞ」
スージーの言葉を聞き、御者の男が恐る恐る馬車の外へと足を踏み出す。
「これは...」
そこには盗賊の死体と気を失っている盗賊達が転がっていた。
「馬は1頭以外全員やられてしまった...。お前は生き残りの馬に乗り屋敷へと戻ってくれ」
「ですが、スージー様はどうするのですか?」
「私は2人と聖竜の谷へと向かう」
馬車で4時間近く掛かる場所に徒歩で行こうとすればどれくらい掛かるのだろうか。
丸1日歩いても辿り着くことは出来ない気がする。
「でしたらスージー様がこの馬をお使い下さい。私は屋敷まで歩いて帰れますので」
「2人が歩いているというのに私だけ馬を使う訳にもいかぬ。良いからさっさと行け。これは命令だ」
「わかりました...」
男は渋々馬に跨がると[パルマ]へ向けて走り出した。
「すまないな。歩かせてしまうことになるが、聖竜の谷へと付き合ってもらえるだろうか?」
「はい! もちろんです」
スージーにはそう答えたが本音を言えば行きたくなかった。
元々気乗りしない依頼なのにも関わらず、更に何十時間も歩くとか辛すぎる...。
「お前達をこんな場所に置いていく私を許してくれ...本当なら連れ帰って葬ってやりたいところだが、今はそれをしてやることは出来ないのでな...」
スージーは死んだ馬達に向けて言葉を発している様だった。
俺達を運んでくれていた馬達の死体をこの場に残しておくことに心残りがある様だった。
「ニア!」
「はい!」
『マジックボックス』
馬車も含めた馬達がマジックボックスの中へと収納されていく。
「い、今のは一体...?」
スージーはマジックボックスのことを知らない様だった。
「ニアの異空間収納魔法です。屋敷に帰ってからニアに出してもらえば、馬も馬車も簡単に運ぶことが出来ます」
「ニア殿はそんなことまで出来るのだな...。ありがとう」
「少しだけニアと2人で話したいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「構わぬぞ」
俺はニアを連れてスージーから少し離れた場所へと移動した。




