その18 人の優しさに触れました
Gランクでも問題ないということは、やはり荷物運び的なポジションなのだろうか? 俺にとって最強装備だった木の枝は、少女を抱き抱える時に捨ててしまった。何かあった時の為に、武器くらいは用意しておきたいのだが。
「シオン。お前に頼みたいのは俺達のサポートだ。俺達が指示を出したら、その指示通りに動いてもらうだけでいい。もちろんGランクのお前に、戦闘をさせるなんてことはないから安心しな」
どうやら荷物運びという訳でもないようだ。どんな指示を出されるかは分からないが、Gランクと分かっていて、ムチャな指示が出されることはないだろう。
「宜しくお願いします。武器とかも持ってないんですけど、大丈夫ですかね?」
「大丈夫。大丈夫。その方が好都合...」
「バーツ!」
何かを言い掛けたバーツにガンツが叫んだ。バーツは会話を止めてしまったが、何を言おうとしていたのだろうか? ガンツがバーツの耳元で何かを呟いたが、俺の場所までは聞こえて来なかった。
「まぁ。そんな訳でシオンさえ良ければ、今からドラゴンの討伐に向かいたいのだが、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です!」
一文無しの俺には、今日の生活をするお金すらない。今から依頼を受けられるなら、俺にとっても好都合の話だ。
「ドラゴンの巣があるのは、この街の西にあるマウル山の頂上だ。そんなに高い山じゃないから心配するな」
ガンツは俺を気遣ってくれている様だ。二度と人を見掛けで判断するのは止めよう。そう心に誓った。
「それじゃあ早速街を出て、山へ向かうとするか。シオンは俺達に付いて来てくれ」
言われるがままにガンツの後に付き、ギルドを出ようとした時、ふと猫耳の女性職員と目が合った。女性は俺と目が合った瞬間気まずそうに視線を逸らす。
一体何なんだ? 気にした所で何かが変わる訳でもないので、ガンツの後を追いギルドを出ると、そのまま街の入り口へと向かった。通り過ぎる人達はガンツ達を見て恐れている様にも思える。
見た目だけで判断されてしまうのは、仕方のないことだが俺自信がそうだった様に、街のみんなもガンツのことを知れば見る目も変わるだろう。
街の入り口に着くと、柵の切れ目から3人が外へ出たので続いて俺も外に出た。
「モンスターが現れたら俺達に任せるんだぞ? お前には指一本触れさせないからな」
ガンツの言葉が胸に響く。この世界に来てから初めて、人の優しさに触れた様な気になった。




