その178 スージーは聖騎士になりたいようです
「おお! そうなのか。だったら話は早い。私がお前の依頼を頼もうとしているのはこの少年と少年の妹だ」
「私が言っていたのもその2人のことです」
俺には2人の話が全く見えない。取り敢えずわかったことは、俺が助けた騎士の女性がガラードの娘のスージーだということだけだ。
「お前が帰って来てから話すつもりだったので、シオン殿には何も言っておらん。この場で私から説明しよう。シオン殿。ニア殿は居られぬ様だが今からお話しさせて頂いても良いかな?」
ニアがこの場に居たら、アーロンの時の様に断れなくなるかも知れない。
俺はこの世界ではNOと言える日本人を目指すんだ。
「はい。お願いします」
「シオン殿はハルバート様のご子息のアドルフ様のことを知っているかな?」
ん? 誰だそれ? アドルフはおろか、ハルバートという人物すら知らないのだが...。
「いえ。存じあげません」
「アドルフ様はタリア王国の第一王子。つまり次期タリアの国王になるべきお人だ」
ハルバートとはこの国の王の名前か...娘のエリザベスの名前は知っていたが、王本人の名前は知らなかったな...。
「どうやらアドルフ様がスージーを妻に迎えるつもりの様でな」
「あんな男の妻など真っ平です!」
「スージー! 不敬な発言は控えなさい!」
なるほど...第一王子がスージーを妻に迎え入れようとしているが、スージーは王子を良く思っていないと言うことか。スージーは美人だし妻にしたいという王子の気持ちはわかる。侯爵の娘となれば家柄的にも問題はないのだろう。
だが、その話のどこに俺が出てくるんだ? まさか王子の前で花嫁を奪えという頼みではないと思うが...。
「ご覧の様にスージーの奴は妻になることを望んでいない様でな。しかし王家からスージーを差し出す様に言われたら私としてはスージーをアドルフ王子に嫁がせるしかないのだ」
貴族のしがらみってやつか...。偉い人間に頼まれれば断ることは出来ない。それに関してはどこの世界でも同じだ。
「だが、1つだけスージーを嫁に出さなくても良い方法があるのだ」
「その方法とは一体...?」
まさか王子を暗殺しろとか言わないよな? 正直、俺とニアならそれくらい出来そうな気はするが、国全体からウォンテッドだけはゴメンだ。
「スージーが聖騎士になることだ。聖騎士の人間を王家に嫁がせることは禁止されておるからな」
聖騎士...確か慎吾の職業が聖騎士だった気がする。
「父上。ここからは私が」
スージーが俺の前に立つ。やはりかなりの美人で、ニアとはタイプが違いニアが可愛い系ならスージーは綺麗系だ。
「シオン殿。頼む! 私と一緒に聖騎士の証を手に入れるため、聖竜の谷へと行ってくれ!」
聖竜...何か嫌な予感がする...。




