その174 パルマに到着しました
シルキーはひたすら走り続け辺りが暗くなってきた頃。
俺達の前方に街が見えてきた。
あれが[パルマ]だろう。
この辺りの領主であるガラード侯爵の屋敷があるからか、今まで見た街の中では一番規模が大きい気がする。
「シルキーありがとう。ここで止めてくれ」
シルキーは足を止めるが、じっと俺の顔を見詰めると不満そうな顔をしている。
指示は俺ではなくニアに出させろと無言で訴えているのだろう。
俺達がシルキーから降りると、いつもの様にニアがシルキーを戻す準備に入る。
「シルキーありがとう」
「いえいえ。ニア様が私を必要とする時はまたいつでもお呼び下さい」
シルキーは魔法陣の中に吸い込まれて行く時に俺の顔を睨み付けていった。
いつかはシルキーに認めてもらえる日が来るのだろうか...。
シルキーから降りた俺達は[パルマ]へと向かい歩き出した。
[パルマ]に着き、街の中に入ると時刻は夕方過ぎだというのに街中には大勢の人間が溢れていた。
街の人間には笑顔が溢れていて、皆幸せそうだ。
マルコが言った様に、ガラード侯爵がしっかりとした政治を行っているからこんな風景が見られるのだろう。
正直、俺はタリア王にはあまり良いイメージを持っていない。
それは俺に対する印象から来ている訳ではなく、初めから感じていたものだ。
ガラード侯爵の屋敷の場所がわからないため、誰かに聞く必要があるが誰に聞こうか...。
結局俺は近くにいた人間の中から話やすそうな老人に声を掛けることにした。
「すみません。少しお尋ねしたいことがあるのですが?」
「どうしたんじゃ? 兄ちゃん」
「ガラード侯爵の屋敷の場所を知りたいのですが、ご存知でしょうか?」
「この街に住んでいる人間でガラード様の屋敷を知らない人間なんかいやしないよ。ガラード様の屋敷はそこの道を真っ直ぐに行った所に宿屋があるんじゃが、その宿屋の通りを左に曲がって真っ直ぐに行った所にあるぞ」
「ありがとうございます」
俺達は老人にお礼を言うと教えられた道を進んで行った。
暫く歩くと老人に教えられた様に一軒の宿屋を発見することが出来た。
どうしようか? 先に本日の泊まる場所だけでも確保しておくべきだろうか...。だが、ガラード侯爵と会った後でこの街を出ることになる可能性も考えられる。そうなった場合折角取った宿が無駄になってしまう。
考えた結果、宿は後回しにしてガラード侯爵の屋敷へ行くという結論に至った。
老人に教えられたように宿屋の通りを左に曲がり、暫くの間真っ直ぐに進むと目の前に大きな屋敷を発見することが出来た。
街にある他の建物と比べても一際大きいことで、おそらくこの屋敷がガラード侯爵の屋敷なのだろうと思わせてくれた。
俺達はガラード侯爵に会うため屋敷の入り口へと向かった。




