その168 報酬額が2倍になったみたいです
「一体どうしたんですか?」
「実はベヒモス討伐の報酬に関してお前達に確認しておきたいことがあってな」
「確認しておきたいことですか?」
俺にはアーロンが何を確認したいのか想像もつかない。
「依頼主に2体目のベヒモスの話をしたら報酬額を2倍にしてくれるという話になってな」
報酬額が2倍になるということは金貨1000枚から金貨2000枚になるということだ。
別に依頼者が報酬を追加しなければいけないという義務はない筈だ。それを2倍にしてくれるとは相当太っ腹な依頼主のようだ。
「2倍って凄いですね! でもそれが俺と何か関係あるんですか?」
「今回のベヒモス討伐依頼だが、フォードの審査ではお前とニアの取り分が全体の8割となる。こんなことは異例なことでな...。他の冒険者達がどう思うか...」
全体の8割。それは金貨2000枚の内の1600枚が俺とニアに支払われるということだ。
正直、後から現れた1体に関しては完全に俺とニアの力のみで討伐をしている。ほぼニアの力によるものだが...。
最初の1体に関しても殆どが俺とニアの力によるものだ。
そう考えるとフォードの審査は的確だと思うが、他の冒険者達はどう思うだろうか? 俺達がそれだけの報酬を貰うことになれば面白くない者も出てくる筈だ。
言葉にはしないが多分、アーロンは俺達に報酬額の変更をしてほしいのだ。
「俺達は1体分の報酬だけで十分ですよ。残りは他の皆で分けて貰えれば大丈夫です」
「おお! そうしてくれると助かるぞ」
「その代わり荷物を運んだ分の報酬だけは俺達の分もマルコに渡して下さいね」
金貨600枚と言えばかなりの大金だが、皆からヘイトを向けられることを思えば俺の判断は間違っていないと思う。
「その点は約束しよう。ニアもそれで良いのか?」
「はい。私はシオンお兄ちゃんが良ければ大丈夫です」
「気を使わせて悪かったな。フォードの判断は間違ってはいないと思うのだが、流石に額が額だったのでな...。お前にはここで報酬を渡しておこう」
アーロンは白金貨を10枚俺の前に差し出した。白金貨はいつ見ても美しい輝きを放っている。
俺はアーロンから報酬を受けとると腰の袋へとしまった。
「ありがとうございました」
俺がカウンターの裏から戻ろうとするとアーロンに肩を掴まれた。
「ちょっと待ってくれ。実はお前達に頼みたいことがあるんだ」
アーロンの頼み事に良いイメージはないが、話くらいは聞いてみるか...。
「頼みってなんですか?」
「実は今回のベヒモスの討伐依頼はこの辺り一帯を治めるガラード侯爵からの依頼でな。そのガラード侯爵にお前達のことを話したらぜひ会ってみたいと言われたのだ」
侯爵って貴族のお偉方なんじゃないのか? 正直貴族に近付くのは避けたい。
この前の騎士のこともあるし、それこそタリア王と繋がっている可能性もある。
ニアが危険に巻き込まれる可能性があることは極力避けなければいけない。
ガラード侯爵が何の為に俺と会いたがっているかはわからないが、俺には会う理由がない。
会わなければいけない義務もないだろう。




