その159 フォードには色々と知られているかも知れません
「マルコ。君が一人前の冒険者としての自信が付いたら、その時は俺達のパーティー〖光の英雄〗に入ってくれ。俺の頼みはそれだけだ」
「僕がシオンさんのパーティーにですか!? それは僕としても大歓迎ですが、本当に良いんですか?」
正直、マルコが一人前の冒険者になった時に俺がこの世界にいる可能性はかなり低いだろう。
マルコに特に頼みたいことがあった訳ではなかったので、俺はそういうことにしたが、マルコが一人前の冒険者になった暁には本当に〖光の英雄〗に入れても良いと思っている。
別に今のマルコをパーティーに入れられないこともないが、正直足手まといになってしまうし、自分だけが役に立てないとなればマルコの性格上パーティーに居ることに耐えられなくなってしまうだろう。
「その時が来たらいつでも声を掛けてくれて良いから」
「はい! 必ずお二人に相応しい冒険者になってみせます!」
俺の頼みが無茶な願いではないとわかったマルコは安心した様で、顔には笑顔が浮かんでいた。
[サーム]に向かい歩き続けていると辺りはすっかり暗くなっていた。
開けた場所に着くとフォードの指示で、夜営をすることとなった。
昨夜と同じ様にフォードは辺りから枯れ木や枯れ葉を集めてくると、中央に積み炎の魔法を使った。
その焚き火を囲う様に冒険者達は地面に座り込んだ。
それぞれが用意してあった食料を取り出し食べ始めるが、ベヒモスを倒した安堵からか誰もが顔に笑顔を浮かべている。
俺とニアも食事を済ませて辺りを見渡すと、皆から少し離れた場所にフォードの姿があった。
フォードに話をする絶好のチャンスとばかりに俺はニアをその場に残し、フォードの元へ向かった。
フォードの前に立ったが、フォードは物思いに耽っている様で俺の存在に気付いていない。
「フォードさん?」
「あ、ああ...シオンさんですか。すみません。少し考え事をしていました」
「フォードさんとお話ししたいことがあって...」
フォードはニッコリと微笑むとその場に座り込み、自分の隣に座る様にと手のひらを向けた。
俺がフォードの隣に座るとフォードの方から口を開いた。
「シオンさんのお話しとは私が何故、貴方のことを異世界人と言ったかということでしょうか?」
フォードの方でも察しが付いていたようだ。
「そうです。何故フォードさんはあんなことを?」
「シオンさんが異世界人ということは初めて会った時から知っていました。余計なことを言う必要はないかと、特に何も言わなかったのですが、あの場ではああするのが一番と思いましたので...。勝手に貴方のことを皆に言ってしまい申し訳ありませんでした」
「いえ...それは構いません。こちらも助かりました。フォードさんは何故、俺が異世界人だとわかったのでしょうか?」
今のフォードの言葉からすると、あの場を納める為に適当なことを言ったのではなく、確信を持って異世界人だと言ったことになる。
「それは私のユニークスキルの力によるものです」
俺が異世界人だとわかるユニークスキル? それは一体...。




