その153 異世界でも朝は弱いかも知れません
「シオンお兄ちゃん。シオンお兄ちゃん」
どこからかニアの声がする。俺が目を開けると目の前にニアの顔があった。
「ん...ニア...おはよう」
「もうすぐ出発するみたいですよ。他の皆さんは既に出発の準備を終わらせています」
周りを見渡すと他の冒険者達は出発の準備を終え、朝食すら済ませている者が殆どだ。
辺りには食料の残害などが転がっている。
多分、ニアがギリギリまで起こさずに寝かせてくれたんだろう。
「ゴメン! ニア。ニアもお腹が空いたよね?」
「大丈夫ですよ。森に行く道中、食べながら移動すれば良いだけなので」
「それでは南の森に向けて出発したいと思います」
フォードの号令で一同が出発する。
少し進んだところでニアはマジックボックスから食料を取り出した。
俺達はそれを食べながらフォード達に付いて行った。
4-5時間程歩いただろうか...。
俺達の前に大きな森が姿を現した。
森は大量の木々に覆われており、中の様子が全くわからないようになっている。
「ベヒモスがいるのはこの森の中ですが、どこに現れるかはわかりません。直接戦闘を行わない人達は後方から付いてきて下さいね」
アーロンが決めた分担に合わせて隊列が組まれる。
先頭は直接戦闘を行う者。次に魔法などの遠距離攻撃で援護する者。その後ろに回復魔法や回復薬で負傷者の治療をする者。最後に俺とマルコだ。
正直回復魔法は無理だが、回復薬で負傷者を治療するくらいなら俺とマルコにも出来ると思うのだが...。
全員の並びが決まったが、戦闘を行わない筈のフォードの姿は最前列にある。
それぞれの活躍を見極める為なのかも知れないが、フォードがベヒモスにやられる様なことがあれば、報酬はどうなるのだろうか? 戦わないとしても自分の身を守ることくらいは出来るのかも知れないな。
隊列を組み、森の中へと入って行くが周りにモンスターの気配はない。
どこにいるかがわからないということは闇雲に森の中を歩き回ることになる。
迷って森から出られなくなる可能性はないのだろうか? そんな不安を覚えながら10分程、森の中を歩いていると先頭の方から大きな声が聞こえてきた。
「いたぞ! ベヒモスだ!」
先頭では戦闘が始まった様だが、俺の位置からは見ることが出来ない。
先頭付近まで走って行くとそこには体長5mは優に越えるであろうモンスターの姿があった。
大きな爪に大きな角。口からは鋭いな牙が生えているのが見える。
爪、角、牙。これだけの素材を2人で持ち帰るとか絶対に無理なのだが...。
ニアのマジックボックスがなければ途方にくれてしまうところだった...。




