その150 俺の金は俺の金 ニアの金も俺の金です
「な、なんだ...あの大きなウォーターボールは!? あんな大きさのウォーターボールなんて見たことがないぞ...」
「それに初級魔法で中級魔法を消滅させるなんて、何て魔力なんだ...」
明らかに周りがざわつき始めている。これは少しやり過ぎたかも知れない...。
「お、おほん! どうだ? これでニアの実力がわかっただろう?」
ニアの実力を知っているアーロンですら驚いてしまっている。やはりニアがしたことは相当凄いことなのだろう。
「じゅ、十分に実力はわかりました! ニアさんが加わることに私は異議ありません!」
カルロは相当な衝撃を受けたのか、ニアのことをさん付けで呼んでいる。
「ダウザーの方はどうだ?」
「...ちっ!」
ダウザーはアーロンの質問に対して返事はしないが、ニアの実力は認めたようだった。
「他に異議のある者は居るか?」
誰も意義を唱える者はいない。あの魔法1発だけでニアは全員から認められたようだ。
「よーし。それじゃあお前たちに同行するウチの職員を紹介しよう」
アーロンがそう言うとギルドから1人の男が出てきた。
「フォードと言います。宜しくお願いします」
フォードと名乗った男は眼鏡を掛けていて、見た目はいかにも頼りなさそうに見える。
「このフォードがお前達の働きを判断して、報酬の分配を決めることになる。異議は受け付けないのでそのつもりでいてくれ」
アーロンの発言に対して何かを言う人間はいなかった。ギルド職員による報酬の分配は多数での討伐依頼の場合にはよくあることなのだろう。
「それでは今から出発するが、荷物の運搬を担当する者は付いてきてくれ」
結局、荷物の運搬役に決まったのは俺とFランクの少年二人だけだった。
もう1人のFランクの男は魔法が得意と言ったことで後方支援役に回されたようだ。
アーロンの後に続き、俺と少年がギルドの中に入ると、ニアが後ろを付いてくる。
ギルド内を見るとカウンターの上に大量の薬品が置かれていた。
薬品の隣には大きな鞄が2つあり、おそらくこの鞄に薬品を入れて持って行けということなのだろう。
少年がカウンターの上の鞄を取り、薬品を鞄に詰めだしたので、俺がもう1つの鞄を手にすると、ニアが何かを閃いた様な顔をする。
「これって全部マジックボックスに入れて運んじゃ駄目なんですかね?」
「!?」
アーロンがマジックボックスという言葉に反応をする。
「ニア? お前マジックボックスまで使えるのか!?」
「この前、アーロンさんに会った時は使えなかったですよ。昨日覚えたので...」
「そうか...お前には驚かされてばかりだな...。もちろんマジックボックスで運んでもらえるならこっちも大歓迎だ」
ニアが俺の代わりに荷物を運ぶのなら、報酬はニアに行くことになると思うが、今の俺とニアの関係は俺の金は俺の金。ニアの金も俺の金状態だ。全く問題はない。
ニアが荷物を収納するため荷物に近付こうとすると、少年が両手を広げ荷物の前に立ち塞がった。




