その144 女性にプレゼントとか初めてです
街を歩き始め最初に目に入ったのは道の脇に数件並んでいる露店だった。
食べ物を売っている露店。アクセサリーを売っている露店。お菓子を売っている露店。色々とあるが、ニアが興味を示したのはアクセサリーを売っている露店だった。
店の前まで行くと、目を輝かせながら並んだアクセサリーを見ている。
ニアの視線を追うと1つのネックレスに目が行っていることが分かった。
トップの部分が銀色の花の形をしたネックレスで、大人が付けるには少し子供っポイ気がするが、ニアにはピッタリだと思う。
値札には金貨1枚と書かれている。
「ニア、そのネックレスが気に入ったの?」
「お花の部分が可愛いなぁーと思いまして」
ニアに金貨1枚を要求されたら0.1秒で渡すつもりだが、それは違うだろうな。
「このネックレスを下さい」
俺は金貨1枚を店主の女性に渡した。
「お買い上げありがとうございます。そちらの可愛い娘にはピッタリだと思いますよ」
女性から手渡されたネックレスをニアに渡そうとするが、ニアは受け取ろうとしない。
「お兄さん。女心が分かっていませんね。そういう物は男性が付けてあげる物なのですよ」
彼女にするなら分かるが、妹にもそうするものなのか? 店主に俺とニアが兄弟とは伝えてないが、流石にカップルには見えない筈だ。
俺がネックレスをニアに着けようとすると、待っていたかの様にニアが首を少し傾けた。
ネックレスを着け終わり、改めてニアを見ると、やはりニアにはピッタリだ。ネックレスに限らず、美少女は何を着けても似合うものだ。
「シオンお兄ちゃん! ありがとうございます!」
ニアは凄く嬉しそうな顔をしている。ここまで喜んでくれると買った甲斐があったというものだ。
俺達はアクセサリー屋を後にして、再び街の中を歩き始めた。
5分程街を回っていると、薬屋と書かれた看板の掛かっている建物を発見することが出来た。
「ニア。回復薬なんかを買っておこうと思うから、薬屋に寄るね」
「はい。でもシオンさんの怪我の治療は私に任せて下さいね」
ニアの気持ちはありがたいが、一応MPが尽きた時の為に、ある程度の薬は用意しておきたい。
最悪、俺は戦う相手を切り替えれば全回復させられるが、この先ニアが負傷をする可能性もある。
薬屋の中に入ると店内にはいくつかの棚が置かれており、棚には様々な種類の薬が並べられていた。
店内の奥にはカウンターがあり、カウンターの中には店主だと思われる老婆が立っていた。




