その14 冒険者はFランクからですよね?
冒険者ギルドと書かれた建物の入り口に扉はなく、外からでも多少なら中の様子が伺えた。
入り口から見える範囲内には、おそらく冒険者だと思われる人間が5人程見える。
「取り敢えず中に入ってみるか」
入り口から中へ入ると室内は思っていたものとは違うイメージだった。
冒険者ギルドというくらいなので、むさ苦しい男たちばかりがいる印象があったが、明らかに戦いをしなさそうな感じの女性の姿もチラホラ見られた。
大体異世界物の漫画や小説だと、モンスター討伐以外にも薬草の採取など、戦闘をしなくても達成出来るような依頼がある。彼女たちはそういう依頼を専門にしているのかも知れない。
結局ギルドの中には全部で11人の人間がいた。その内の2人はギルド内に設置されているカウンターの中に立っているので、おそらくギルドの職員なのだろう。
1人はキツそうな顔付きの女性で、もう1人はなんと猫耳を付けている女性だ。
本物の耳の様なので、付けているという表現はおかしいのかも知れない。異世界物ではよくある獣人という種族なのだろう。
ギルドの職員に話を聞くなら2択だったが、迷わず猫耳の女性の方に話し掛けることにした。
「あのー、すみません」
「はい。何でしょう?」
語尾にニャンとか付けてくれれば最高だったが、そう上手くはいかないようだ。
「冒険者ギルドに登録をしたいのですが、どうすれば良いのでしょうか?」
「その格好は異世界から来られた方ですね!?」
「ええ...まぁ、そうなります」
やはり制服では、直ぐに転移者だということがバレてしまう。早く着替えをしたいが、こちらの世界のお金を持っていない俺には、着替えを買うことも出来ない。
「本来初めて登録をされる方は、Fランクからスタートするんですが、異世界の方でしたらもっと上から始まることもありますよ」
女性は蔓延の笑みでこちらを見ている。異世界の人間=強者というイメージがあるのだろう。
「それで俺はどうすれば良いんでしょうか?」
「ここで私にステータスを見せて下さい。それを見て初期ランクを決めさせて頂きます」
流石にブルードック1匹を倒したくらいで、それ程強くなっている筈はないだろう。だが見せてと言われて、見せないのも変な感じになってしまうので、ここは仕方がない。
「ステータスオープン」
ステータスが表示されると、それは予想もしていなかった数字だった。
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シオン・ヨシムラ
男性 年齢17歳
人間 職業・村人
LV3 HP30/30
SP11/11 MP0
力7 技7
速さ7 魔力0
防御7 幸運3
[加護]
炎G 風G
土G 水G
雷G 聖G
光G 闇G
[スキル]
村人の一撃
[ユニークスキル]
五十歩百歩
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「えっ!?」
明らかに先程より大幅に弱くなっている。LVも下がっているし、一体何が起こったんだろうか?
「あれ...おかしいな。さっきはもっと強かったのに...」
女性からは先程までの笑顔が消えて、完全な苦笑いに変わっている。
「えーっと...シオンさん...村人ですか...。シオンさんのこのステータスだと、Gランクからのスタートとなりますね」
「Gランクって...Fランクより下があるんですね...」
俺に突き付けられたランクはGという聞き慣れないランクだった。




