その132 これは野菜の革命です
「じゃあ二ア。折角だし、温かい内に食べようか?」
「はい」
ポトフ風の料理に一口付けると衝撃が走った。なんだ...。この料理...。美味すぎるんだが...。何の変哲もないこんな料理がこれ程美味いとは...。一口食べたら止まらなくなり、ドンドンと食が進んでいく。どの野菜を食べても甘く、まるで果物でも食べている様な感覚だ。イートラビットの好物と言われている人参も、普段食べている人参とはまるで別物だ。
「この畑の野菜って凄いですね。こんなに美味しい野菜を食べたのは初めてです」
「うん! 俺も初めてだよ。これだけ美味しいとイートラビットに狙われるのも分かるね」
ふと、リュートの方を見ると、凄い勢いで野菜に食らい付いている。その勢いを見ていると、肉食じゃないんかい! と突っ込みたくなる程のレベルだ。
おそらく30分も経たない程の時間でテーブルの上の料理が空になった。
それよりも驚きなのは、あれだけの量があった野菜を全てリュートが食べ尽くしたことだ。明らかに自分の体積より多い量の野菜が体内に入っている筈なのに、リュートの身体に変化は見られない。一体ドラゴンの身体はどうなっているんだ? 深く考えたら負けな気がしたので、気にしないことにしよう。
「お腹も一杯になったし、夜中に向けて仮眠を取ろうか?」
「はい。お腹一杯で気持ちよく眠れそうです」
俺がベッドに横になると二アが俺のベッドに潜り込んできた。この小屋の中にはベッドが2台置かれている。流石にニアも気付いている筈だ。
「二、ニア? あっちにもう1つベッドがあるよ」
「知ってますよ。私はこのベッドが良いんです」
俺から見ればどっちのベッドも変わりない様に見えるのだが、二アからすれば違いがあるのだろう。俺がもう1つのベッドに移るため、ベッドを出ようとするとニアに腕を掴まれた。
「シオンさんもこっちで一緒に寝て下さい。もう1人は嫌なんです...」
二アは悲しそうな顔をする。こんな顔をしているニアを放っておくことなど出来ない。
俺はベッドに戻り横向きになると、ニアがお腹に顔を付けるように引っ付いてきた。
俺は自然とそんなニアの頭を撫でていた。暫くすると二アの口元辺りから寝息が聞こえてきた。二アが眠った後で気付いたのだが、仮眠ってどう取れば良いんだ? 目覚まし時計も何もないのに、都合良く夜中に起きることなんて出来るのか? 自慢じゃないが、あっちの世界でも毎朝目覚まし時計の力を借りずに起きたことはない。
どうしようかと頭を悩ませていると、自然に意識が薄れていき、眠りの中へと落ちていた。




