その131 ベジタリアンではないのですが
男が小屋の扉を開けて中に入るのに続き、俺達も小屋の中へと入った。小屋の中は小さいながらもキッチンがあり、中央には小さなテーブルと椅子が2脚。部屋の隅にはベッドも2つ置いてあった。普通にこの小屋の中だけで生活することも出来そうだ。
「料理が出来上がる頃には丁度良い時間になっている筈だ。適当にくつろいでいてくれ」
俺と二アが椅子に着くと、俺達の間にリュートがちょこんと腹を着けた。それから料理が出来上がるまで、1時間くらいの間、俺とニアは何気ない会話を交わしていた。この会話によってニアの好物が甘いものだと分かったので、いつか好きなだけデザートを食べさせてあげようと、俺には1つの目標が出来た。
1時間程が経過して料理も出来上がった様で、男がキッチンからテーブルの上に料理を運んできた。
野菜が大量に入ったポトフの様な食べ物と、野菜スープにサラダ。1時間掛かりそうな物と言えばポトフの様な食べ物を煮込む時間くらいだろうか。完全に野菜オンリーの料理で、他の食材が使われている様子は一切無い。何ならポトフの様な食べ物と野菜スープに関しては被っている気もする。
野菜は嫌いではないが、ここまで野菜尽くめだとちょっとしんどいかも知れない。
「ほら。お前にはこれだ」
そう言って男がリュートの前に置いたのは大量の野菜だった。
明らかにリュートの身体よりも野菜の量の方が多い。もし、リュートが野菜を食べられるとしても、流石にこの量を食べきることは出来ないだろう。
「あれ? 貴方は食べないんですか?」
テーブルの上に置かれた料理は明らかに2人分しかなく、男の分は用意されていなかった。
「俺は今から〖サーム〗に戻って、女房の作った料理を娘と一緒に食べるんだ。この小屋は好きに使ってくれても良いからな。イートラビットの討伐が終わった後、また眠るっていうならそれでも良い。それじゃあ、俺は行くから料理は冷めない内に食べてくれよ」
男が小屋を出ようとした時、俺はあることを思い出した。
「あ!? イートラビットとの戦闘にクワを使わせてもらっても良いですかね?」
「クワ? 別に構わないが、旅人にクワを装備することは出来ないと思うぞ?」
「ありがとうございます。一応試してみます」
前にニーナが、村人はクワなどを装備することが出来ると言っていたのを思い出した。イートラビットが速さだけのモンスターなら、武器を装備して攻撃力を上げるのは、かなり有効な気がする。
「それじゃあ、俺はもう行くぞ。クワは外に置いてあるのから好きなのを使ってくれ」
そう言うと男は小屋を出て行った。今から[サーム]に戻って家族で食事をするらしい。
俺もあっちの世界にいる時、夕食は家族で食べていたことを思い出していた。




