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その122 Fランクに昇格しました

「そうか? まぁ、細かいことは気にするな!」


 男に悪びれた様子などは一切ない。とにかく適当な男だ。ギルドマスターになる程の人間だから、実力があることに間違えはないと思うが...。


「それで、戻って来たってことは、フェンリルの討伐には成功したってことだよな!?」


「はい。これを」


 俺がフェンリルの牙をカウンターの上に置くと、男は直ぐに手に取り確認を始めた。モンスターの牙なんて似たような物だと思うが、見る者が見れば判別出来るのだろう。


「間違えなくフェンリルの牙だ。おい。シオンに報酬を渡してやってくれ」


 男の指示で女性職員が奥の方へ向かった。1分程経ち、女性職員が戻って来ると、カウンターの上に金貨を3枚だけ置いた。


「え? これだけですか...?」


「はい...。Eランクの報酬として、金貨3枚という報酬額は決して少ない額ではないので...」


 今回は報酬目当てに依頼を受けた訳ではないから別に良いのだが、金貨3枚というのは、想像よりもかなり安い金額だった。ドラゴン討伐も金貨3枚。フェンリル討伐も金貨3枚。明らかに危険と見合っていない報酬額だ。


「まあ、良いじゃないか。フェンリルの爪や牙などの素材を売れば結構な金になるぞ?」


「この牙の先しか持ってきてないですよ...。牙や爪が売れるなんて聞かされてなかったんで...」


 聞かされていたとしても、結局シヴァを倒すことにはなっていなかったとは思うが、やはり最初に説明はして欲しかった。Gランクの冒険者なら右も左も分からない新米だと分かる筈だ。


「そりゃあ、勿体ないことをしたな! まぁ、済んだことは気にするな」


 そう言って男は俺の背中をポンと叩いた。


「俺のランクアップの手続きをしてもらっても良いですか?」


 俺はそう言い、カウンターの上の金貨をしまうと、入れ替わりに自分のギルドカードをカウンターに置いた。どうせまた、出血タイムが待っているんだろう。


「今、手続きしますね」


 女性職員が不思議なペンを取り出し、ギルドカードに何かを書き込んでいる。ペンで書き込んだ部分に変化は見られないので、俺の血液を垂らすことで反応する特殊な文字になっている様だ。


 ギルドカードへの記入が終わると、無言でナイフをカウンターに置かれたので、いつもの様に目を閉じて、指先を軽く切り付けた。


 血液がギルドカードに触れると、Gと表示された部分がFという文字へと変化した。


「おめでとうございます! 今日からシオンさんはFランク冒険者になられました」


 Fランクに昇格したと言われても、素直に喜べない気持ちがどこかにあった...。


作品のタイトルを変更しました。


これからも宜しくお願いします( ´∀`)



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