その12 LVアップしたんですかね?
決意した瞬間。突然身体が光り輝き出した。
「な...一体何が起こったんだ?」
先程まではスライムに攻撃された痛みが残っていたが、痛みが消えると同時に身体には力が溢れてきている。
タイミングはおかしいが、もしかしたらさっきスライムを倒したことで、LVが上がり強くなったんじゃ!? スライムと戦った時よりは、明らかに強くなっている感覚がある。
「ステータスオープン!」
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シオン・ヨシムラ
男性 年齢17歳
人間 職業・村人
LV5 HP50/50
SP15/15 MP0
力30 技20
速さ35 魔力0
防御20 幸運20
[加護]
炎E 風E
土D 水E
雷E 聖E
光E 闇E
[スキル]
村人の一撃
[ユニークスキル]
五十歩百歩
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スライムを1匹倒しただけなのにLVが4もアップしている。流石に村人は成長速度が早いな。基礎ステータスも結構上がっている。おそらくLVアップによるものなのか、HPも全快している。これならブルードッグを倒せるかも知れない。
「君たち! 俺がこの犬の相手をするから、その間に君たちは逃げるんだ!」
「あ、足が動かないよ...」
少女は怯えて動けないようだ。もう一人の少女の方は、グッタリとしていて返事もない。急いで何とかしなければ危なそうだ。
幸いなことにブルードッグは少女たちの方を見ていて、こちらには気付いていない。今なら背後からの奇襲を掛けることが出来そうだ。
木の枝を握りしめて走り出すと、ブルードッグの背後から思い切り背中を突き刺した。
「キャィィィン!」
上手い具合に木の枝が背中に突き刺さった。今がチャンスとばかりに刺さった枝を、思い切り靴の裏で押し込んだ。
「キャィィィィン!!」
枝が半分程身体の中に入ると、ピクピクと身体を痙攣させたまま、口から泡を吹き出し動かなくなった。
よし、ブルードッグを倒すことが出来たぞ。ブルードッグを倒した瞬間から、身体の力が抜けていく感覚がある。だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。急いで噛まれた少女の止血をしなければいけない。
少女たちの方を見ると、妹が姉の身体を揺らしながら号泣をしている。
「お姉ちゃーん! うわぁーん!」
姉に近付き、よく見ると姉は首から大量の出血をして動かなくなっていた。顔からは完全に血の気が引いていて、周りは大量の血液で赤く染まっている。
「お姉ちゃん...お姉ちゃんが死んじゃったよ...」
俺は間に合わなかったようだ。もしかして逃げだそうとしたり、悩んだりしていなかったら、少女を助けれたかも知れない。そう考えると無性に自分のことが許せなくなった。
ガン!
自分の額を地面に叩きつけると、額からは血が流れ出てきた。少女が流した血に比べれば遥かに少ない量だ。
「お兄ちゃん...何で直ぐに助けてくれなかったの...? お兄ちゃんが直ぐに助けてくれたら、お姉ちゃんは助かったかも知れないのに...グスン」
少女の言葉に俺は何も言うことが出来なかった...。姉の遺体を抱き抱えると、今はもう届くことのない言葉を送った。
「助けてあげられなくて本当にごめん...」
俺の目からは涙が溢れてきた。だが、この涙は城で流したものとは、全く違う理由で流れた涙だった。




