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その117 フェンリルは何かを感じたようです

 俺が二アを守ろうと二アの前に立ち塞がると、リュートは俺と二アの間に入り、空中制止している。一撃は食らうつもりで二アの前に立ったが、目の前に迫って来ていたフェンリルがピタリと足を止めた。


「シオンさん。大丈夫ですよ」


 二アは俺の背中から前に出るとフェンリルに近付いて行く。


「貴女の様な御方をずっと待ち望んでいました」


 !? フェンリルが喋った! まぁ、シルキーの様に喋るモンスターがいることは分かっていたが、フェンリルが言葉を発するのは意外だった。


「何故、貴方は人間を襲っていたのですか?」


「この橋を通る者で、私が従うに相応しい者を探しておりました。そしてようやく貴女に巡り会うことが出来ました。貴女のお名前を聞かせて頂いても宜しいでしょうか?」


 フェンリルは橋を通る人間を襲い、実力を確かめていたようだ。実力を持つ人間と出会うことがあれば、その者に従うつもりだったらしい。だが、二アはフェンリルと戦闘をしていない。何を判断材料に二アを選んだのだろうか...。


「私の名前は二アです。何故、私を選んだのですか?」


「貴女から感じる大いなる力。この力はあの方と同じものと感じます。ぜひ私を貴女の召喚獣とさせて下さい」


「あの方って一体誰のことだ?」


「うるさい! 黙らぬか人間! 私は今、二ア様と話をしているのだ!」


 フェンリルは牙を剥き出しにしてこちらを睨んでいる。シルキーといい、フェンリルといい、言葉を話すモンスターは俺に優しくないな...。


「私と契約を結びたいのでしたら、シオンさんを敬って下さい。この人は私にとって大切な人なのです」


 二アは少し怒った表情を見せている。臆面もなく俺のことを大切な人と言ってくれているが、少し照れくさい。


「分かりました。シオン様...。申し訳ありませんでした」


 フェンリルは素直に二アの言うことを聞いている。だが、フェンリルが二アの召喚獣になってしまうなら、今回の依頼はどうなってしまうのだろうか? 流石に召喚獣にしたことを討伐したとは言えないだろう。


「じゃあ、今回の討伐依頼は失敗したってギルドマスターに伝えるか...」


「そうですね...。私も契約を結ぶと決めました。シオンさんには申し訳ありません...」


「気にしなくて良いよ。二アさえ居れば、他にも色んな依頼が受けられる筈だし、別の依頼をこなしてFランクに上がれば良いだけだから」


 今回の依頼失敗によるペナルティでもない限り、ランクアップにはFランク依頼を1つ成功させるだけで良い。ここまでの往復はフェンリルが戦力に加わったと思い、良しとするか。


「討伐依頼とは私の討伐依頼でしょうか?」


「ああ。そうだよ。でもニアもお前と契約をするって決めたみたいだし、討伐は止めだ」


「だったら私に良い考えがあります。これなら討伐依頼は達成扱いになるでしょう」


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