その116 直ぐ近くは5分以内の時にだけ使って下さい
[サーム]を出てからどれくらい歩いただろうか...。時間の感覚がハッキリとはしないが、どう考えても2時間以上は歩いている気がする...。あっちの世界でコンビニ近くにある? って聞いて直ぐ近くにあると言われたのに、2時間歩いても着かなかったら殺意が芽生えるレベルだぞ...。
もうここまで歩いて着かないのは道を間違えているんじゃないかと、不安になったその時だった。
「シオンさん。川が見えてきましたよ!」
ニアに言われ、目線を遠くに向けると川が流れていて、道が通れなくなっている場所が目に入った。そのまま目線を左右に向けると右の方に橋が架かっているのが確認出来た。
道を間違えたのかと不安になっていたが、どうやら間違えてはいなかったようだ...。あの男の直ぐと言う言葉は今後二度と信用しないでおこう。俺達が橋に近付き川を見ると、深さはそれ程深くなさそうだが、かなり流が早く、落ちようものならどれだけ流されるか分からない。
「橋の近くにフェンリルらしきモンスターは居ませんね...?」
ニアの言うとおりモンスターの気配はない。橋を渡った先に草むらがいくつか茂っているので、その中に姿を隠しているのかも知れない。
「取り敢えず、橋を渡ろうとしている人間が襲われているみたいだから、注意しながら橋を渡ってみようか?」
「分かりました」
川の幅は10m程で、橋の長さは15m程の長さ。橋の横幅は人が5人くらい通れるかどうかという幅なので、左右に大きく動き回ることは出来ないだろう。俺達は横に並んで橋の上に上がり、進んで行った。
橋の中央くらいまで到達したところで、草むらがザワザワと動き出し、中から巨大な狼形のモンスターが飛び出てきた。
草むらから姿を現したモンスターは、橋の上にいる俺達の元へと走ってきている。
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フェンリル LV30
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「二ア! アイツがフェンリルだ! ウィンドカッターを頼む!」
フェンリルはかなりの速さだが、男が言ったように二アのウィンドカッターなら外れることはないだろう。唯一、気を付けることがあるとすれば、風圧で身体が揺られて川に落ちないことだ。
この前見た限りでは、しっかりと立っていれば風圧で飛ばされることはないと思うが...。俺だけではなく、二アの身体も気にしなければいけない。
二アが一歩前に出ると、フェンリルの進行方向が少しズレた。フェンリルの目標は明らかに二アに定められている。
フェンリルと二アとの距離がかなり近付き、完全に魔法の射程距離に入った。さぁ、二アさん。やってちゃって下さい! ...ん? フェンリルが接近してきているのに二アは魔法を使おうとしない。
「二ア!?」




