その102 美少女は眠っていても美少女です
何時間くらい経過しただろうか。俺が目を覚ますと目の前には、美少女が俺の身体に捉まりながら眠っている。横向きになって眠っているせいで、角が見え隠れしている。
角が生えている人間など、普通は恐怖を感じそうなものだが、ニアに関しては一切それがない。目を閉じていても超絶美少女だということが判別出来る。
「う、うーん...」
ニアは目を覚ますと、まだ眠たいのか、両手の甲で目を擦っている。
「シオンさん。おはようございます」
「おはよう。二ア。よく眠れたかい?」
「はい。こんなに安心しながら眠れたのはシオンさんのお陰です」
ニアがニッコリ微笑んだのと同じくらいのタイミングで、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「おはよう! 朝の食事を持って来たんだけど、入っても良いかい?」
声の主は昨日、受け付けのカウンターに居た女性の様だ。この宿屋は食事を客の部屋まで持ってきてくれるシステムらしい。
「二ア! 角を!」
「あっ!」
ニアはベッドから起き上がった。身体を起こせば髪の毛で角が完全に隠れるので、魔族だとバレることはないだろう。ニアの角が隠れたのを確認してから俺は返事をした。
「おはようございます。大丈夫ですよー」
扉がガチャリと開いて、女性が食事を乗せたおぼんを中へと運んできた。
部屋の中へ入った女性は机の上に食事を並べていった。メニューはサラダにスープ。目玉焼きと焼いたパン。それに水が入ったコップと、フォークなどの食器がそれぞれ2つづつ用意されていた。やはり元の世界とあまり変わらない様な食事なのは助かる。
「食べ終わったら食器はそのままにしておいてくれれば、後から回収に来るから」
「ありがとうございます」
食事を並べ終わった女性は、おぼんだけを持ち部屋から出て行った。
椅子が1つしかないため、俺は立ち食いスタイルで食べることになりそうだ。現実世界で立ち食いをしたことはなかったので、異世界で初体験をすることになる。
「二ア。この椅子は二アが使ってくれ」
「先ずはシオンさんが座って下さい」
先ずは俺が座る? 交代で食べるということだろうか? 二アに言われた通り椅子に座ると、その上に二アが座ってきた。
「えへへー。私はシオンさんに座りますね」
俺の膝にニアが座っているが、殆ど重さを感じることはない。とにかく膝の上の二アが可愛い! シスコンの奴の気持ちが分かる気がする。二アが乗っている難点は、ちょっと料理が食べにくいかなぁーと言うくらいだ。俺達2人は食事を食べ始め、もう直ぐ食べ終わるという時に、ベッドの上の布団がもぞもぞと動いた。
布団がガバッと跳ね上がるとリュートが姿を現した。どうやら俺と二アが眠った後で、リュートも布団に潜り込んできていたらしい。俺達の食事をする姿を見て羨ましそうに鳴き声を上げている。
「キュイ! キュイ!」




