縁結びの神様
陰暦10月、今年も日本中から出雲大社に神々が集まり、縁を繋げる会議が開始された。
八百万の神々の1柱が、不意にこんなことを言いだした。
「今回はちょいと趣向を凝らしてみんかね?」
「具体的にはどんなだい?」
「米とトンカツの縁はうまくいっただろ?インドのカレーとの縁も良かった」
話の途中なのに、別の神が呆れたように言った。
「そりゃ、米にはニニギノミコトや稲荷様など、偉い神様ばかりが宿ってるんだから、たいていのモノには合うさ」
話しを遮られた神は、それ待ってましたとばかりに、さらに調子よく話を続ける。
「トンカツもカレーも、我が強いのさ。しかしだ。この二つの相性ってのも、なかなかどうして悪くなかったじゃないか」
それを聞いて、ほかの神々を察した。
「なるほど、個性が強いものどうしの縁を結んでみたら、意外と収まりが良いって魂胆だな」
「ご名答」
そんなわけで、今回は一風変わった縁が結ばれることとなった。
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助手席にガラケーをいじる中年女性を乗せ、その男は試乗車を何日にもわたって乗り回していた。
ある時、目の前を走るプリウスが無性に腹が立ち、煽りに煽った。
そのプリウスは突然、猛スピードで走りだす。
「絶対に逃がさねぇ!」
煽り運転男もプリウスを追いかける。
プリウスはスピードを緩めるどころか、ますます速度を上げていき、信号無視をして交差点を突っ切る有様である。
煽り運転男の怒りはいよいよ頂点に達し、アクセルを全開にしてプリウスを抜き、急ブレーキを踏んだ。
ガシャンッ!とプリウスがその車にぶつかって、暴走が止まった。
煽り運転男が車から降り、プリウスを運転していた老人に掴みかかる。
「あぶねー運転してんじゃねぇぞこの野郎!」
「フレンチの予約に遅れそうだったから仕方ないでしょう!」
2人が言い争っていると、突然歩道から白シャツを着た男が駆け寄り、ガラケー女の乗る車のフロントガラスを叩き割った---
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「キチガイにキチガイをぶつけても、被害は存外大きくならないもんだな」
「それなら、今回も同じような縁としますか?」
神々は一斉に賛同した。
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今年は異常である。
なんせ、イナゴと水害と疫病が襲い掛かってきたのだ。
このままでは被害が広がる一方である。
神々はその様子を見てうろたえた。
「まずい。このままだと、以前のように大仏が作られてしまう」