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プロローグ

 眼下の光景を見下ろし、自分は使い魔を手に入れてから少し調子に乗っていたのではないかと少し反省した。

 確かにこの道は今いるこの崖で行き止まりで、安全に下の広間の様子を覗うことができる。それでもかつての自分なら、激しい戦闘音と雄叫びの声が聞こえたからと言っても、覗きに来たりなんてしなかっただろう。秘伝を見ただの、スパイだの、難癖をつける方法なんてたくさんあり、この世界はそうやって小金稼ぎをしているチンピラが山ほどいるのだから。


 ただ、反省したのは別にそんな連中に見つかって焦ったからではない。眼下に見えるのはたった2人の探索者が30を越える蛙の姿をしたモンスターに包囲されぼろぼろになっていく、胸糞悪い景色であったからだ。確かにその2人はアフロとモヒカンという少しチンピラっぽい恰好ではあるが関係ない。


 アタッカーを務めていたモヒカンが一瞬だけこちらに目をやったため、ここにいれば下からはほとんど見えないはずだが、思わず一歩後ずさってしまった。


「どうする?あるじよ。」

 顔を見合わせ、どう答えたものか悩む。そして口を開きかけたところで突然の大声に遮られた。


「神の思し召しかいい所に来た。崖の上の探索者、すぐに上に戻って増殖移動型の変異種が出たと伝えてくれ。俺たちは被害が広がらないように、できるだけ長くここに留めて増殖の邪魔をし、玉砕する。」


「どうする?あるじよ。」

 先ほどと全く同じ声をかけられたとき、きっと自分は苦虫を噛み潰したような顔をしていただろう。


「普通に考えれば逃げて伝達一択ですが、何とかなりますか?」

 しっかりと目を見つめて問いただす。


「ふむ、我の力をきちんと振るい、あほになったお前が足を引っ張らなければ、勝てるであろう。」

 聞きたかった答えが聞けて思わずニヤリと笑みがこぼれる。ただ力を振るう副作用の魔力逆流により欲望が肥大化し短絡的になった自分はコントロール不能なので、その辺は運を天に任せるしかない。

 かつての自分ならこのリスクも許容できなかったよなと、先ほどの反省とは逆に成長を感じ少しうれしくなった。


「あんなカッコいい台詞を聞かせれて逃げるだなんて男が廃る。足場を作るのと、雑魚を掃討してあの卵を背負ったデカ蛙までの道を切り開くのをよろしく。あとは出たとこ勝負です。」

「うむ、任されよ。」

 大きな頷きを返される。頼りになる。


「頼む早く行ってくれ。俺と兄貴の犠牲を無駄にするな。」

 モヒカンから先ほどとは違い少し泣きの入った声が上がる。


「大丈夫だ。これから助っ人に入る。俺たちを信じろ。」


 そして、蛙共のだみ声に負けない朗々とした詠唱が響き渡る。

「コキュートスより漏れいづる 反逆者の嘆きを聞き給え ここは深く 暗く 寒く 何人たりとも動けない 《ジュデッカ》」 


《ジュデッカ》により、卵を背負ったデカ蛙まで真っ直ぐな氷の坂が生まれ、周囲の子蛙は凍り付いていった。


 そして俺様は、

「キタキタキタキタ、滾ってキター。マナ結晶の山が待ち構えてるじゃねーか。ヒャッハー!!突撃だー!!」




 これは、強力な使い魔を手にいれた探索者のリュウが、魔力逆流の副作用により慎重な探索者と欲望に忠実なハイテンションな探索者を行き来しながらダンジョンに潜ったりする話。

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