20190326の非日常 その1
「おーいっ。裕也くん。」
僕の後ろから、元気のいい声が聞こえてくる。
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今日は3月26日。ほとんどの学校は終業式を終えて、春休みに入っている。
高校1年の僕木下裕也は、春休みに入ってから、
ほとんど、某塾に通っている。
僕の通っている「県立神田高校」は県内で「K高」と呼ばれるほど有名な高校であり、
毎年、倍率が2倍となる、意味不明な高校である。
有名な理由として、部活動のレパートリーが豊富で、学校設備もかなりきれいであるかららしい。
そんな高校に僕は「家が近い」という理由だけで受験し、合格した。
そしてはや一年。この前の合格発表の様子を眺めながら、
僕が二年生に進級することに、不安が募っていたのは記憶に新しい。
そして今日もまた某塾に向かう途中の話であった。
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僕は後ろからの声に耳を貸さない方針を固めた。
僕は他人事のように、前を向いて、残り600メートルの塾への道のりを急いだ。
まあ、無理だった。
見事に声の主の、桐ケ谷美奈に捕まった。
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彼女は、1年総代を務めるほどのエリートで、
学年チャットグループ内での人気ランキング12ヶ月連続1位(男女合算)
であり、今年度の後期の生徒会長になり、支持率は驚異の95%(全校生徒・教員合算)らしい。
そして、陸上部のエース級の実力者でもあるのだ。
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そんな彼女に、部活をやっていない僕がかなうはずもない。
でも、一つ不思議なことがあるとすれば、
”彼女は一体どうやって走ったのだろう?”
彼女の服装は、春らしいスカートと、ハイではないがヒールを履いている。
そして彼女は手提げかばんだ。
僕は、ジーパンとスニーカ、そしてリュック。
どう考えても走りやすさが違う。
本当にわからない。いやわかりたくないだけかもしれない。
くだらない考察をしている間に、彼女が話しかけてきた。
「裕也くん。ひどいですよ。無視するなんて」
「桐ケ谷さん。すいません。突然僕の下の名前を呼んでくる人なんて稀でしたから。」
「稀って、そうゆうものなの?」
「普通、名字で呼びません?」
あっ、、、と今更気づいたかのような彼女は、少し頬を赤らめた。
「な、なんかゴメンね。で、でも、なんで私から逃げるが如しに、少し早歩きになったのよ。」
「理由って、いってもしょうもないですけど、聞きたいんですか?」
はっきり言って、本人の前で言える自身がなかった僕は、逃げ道を作ることにした。
「そりゃ、聞きたいわよ。青鬼みたいな女が襲いかかってきた的なことが理由だったら、
どうやって、君に、、、、、」
「君に?」
「なんでもないよ。さ、話して頂戴。」
「簡単なことですよ。町中で突然自分の名前を呼んで、美少女のあなたが、
オシャレ感のない一般人に話しかけるという、危険イベントで、
あなたの輝きが損なわれることなんてしたくないですよ。」
サクッと、事実を述べたけど、どうだろう、死ぬかな。僕。
彼女の様子を伺ってみると、言葉で説明しにくい表情をしていた。
そして、
「なーんだ。ちょっとは、思いやりあったんだ。君なりには、ね。」
よし、塾に行ける。僕は確信したので、彼女に別れの挨拶を、
「というわけで、、、」
「じゃあ、今からどっか行こっか、君の私への謝罪として」
は、?
さっきの話聞いてたのだろうか(いや、聞いていないに違いない)
彼女は、
「君、今暇でしょ。ね、今から行こー」
「僕には塾という予定が、、」
「いや、青春に塾なんて高2の冬からでじゅーぶん。
今は、遊びと恋に時間かけないと。さあ行くよー」
そう言って僕は、彼女に手を引かれ、駅へと連れて行かれた。
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K高の最寄り駅である、高南駅は、付近のどの高校からも南にあるため、この名前がついたらしい。
また、隣接する商業施設には、人気のカフェや、映画館、アミューズメント施設など、
学生向けに作られたことがよく分かる。
僕としてはあまり好きではない。
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高南駅は、春休みを迎え、多くの学生で溢れていた。
そして、その8割は、必ず彼女の方を見ている。
僕は、駅につく前になんとか手を話してもらえたため、睨まれる程度にすんでいる。
彼女は、道に迷う事なく、ボーリング施設についた。
「最初は、ボーリングからスタートね」
最初は、ってどうゆうこと。もしかして今日丸一日かける気か。
でも、聞ける勇気は僕に備わってなかった。
そして、ボウリングが始まった。
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ボウリングはピンをボールで倒すゲームであることは知っていたが、
実際にプレイしたことはない。
ちなみに両親はすでに、他界している。
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僕は靴と、13ポンドとかゆう、よくわかんないボールを選んで持ってきた。
少し重いが、腕の筋トレだけはしてるので、余裕で投げれそうではある。
彼女は、9ポンドのボールを持ってきた。
そして、彼女は一言、
「負けたほうが、ボウリング代おごりね。」
と、僕はなんとなく、先に釘を刺すべきだと思い、
「じゃあレディースハンデ30点でいいですか?」
と言った。
「OK。それじゃスタート」
彼女が笑顔で、スタートの合図をした。
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ゲームは2ゲームで行った。そして結果は下のようになった。
A=ストライク S=スペア
1ゲーム目
僕 :7,7,7,7,7,7,7,7,7,7|70
彼女:8,6,9,7,6,A,A,S,9,9|113+30
2ゲーム目
僕 :A,A,A,A,A,A,A,A,A,AA9|299
彼女:9,8,7,9,9,8,7,9,8,9S9|93+30
結果僕:369彼女:266
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僕は理解した。ボウリングは要は作業ゲーであることを。
同じことの繰り返しでまさかこんなに良い点が取れるとは。
2ゲーム目の最後、店員さんでもあまり見ない、ストライクの山を見て、応援してきた、
まあ、そのせいでっていうと悪く聞こえるが、失敗した。
彼女は、一人、
「裕也くんってホントはボウリング選手なんじゃ」
と意味不明なことを言っているが、スルーさせてもらう。
結局、彼女が約束通りボウリング代全額払った。
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時々僕は、カラオケの王者決定戦を、見るが、
未だにカラオケの加点の意味がわからない。
原曲を忠実に再現して歌うのがカラオケでは、と思ったりする。
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ボウリングを出て10分ほどすると、彼女の機嫌は戻っていた。
ただ、僕の心は、かなり傷ついている。
理由は簡単だ。この高南駅は学生が多くK高の生徒も、たくさんいる。
そんな中を、彼女と二人一緒に歩くのは、注目を集め、
あとで、学年チャットの晒し者枠確定になってしまうだろう。
ちなみにこのチャットは、学年ほぼ全員が参加してるが、僕は参加していないので少し気は楽である。
そうこう考えるうちに、どこかへついた。
彼女は、僕の目の前で、一回転し、
「次はカラオケで勝負しましょ。」
彼女はさっきの負けを気にしていないようだ。
店に入り、彼女は受付へと向かった。
なんとなく、彼女と、店員さんの会話を聞いていると、不穏な、話が聞こえた。
「お客様は、プランはどれにいたしますか?」
「2時間でお願いします」
「はい。かしこまりました。当店はドリンクバーはセットですので、ご自身で、自由にご利用ください」
「はい。わかりました」
「ところで、あなたは、K高の生徒会さんですよね。
可愛らしくて、羨ましいです。もし良かったらサインしてもらっていいですか?」
「いいですよ」
と、言って彼女は、サインを書き始めた。
「もしかして、あなたと一緒にいた、男性って、彼氏さんですか?」
店員が爆弾をぶち込んだ。
彼女は照れて、「はい。そうなんです。今日は、彼氏の服を選びにきたんですよ。」
「そうなんですか。じゃあ、カップル用のお部屋用意させてもらいますね」
何だ、あの危険な店員は。
僕は、驚きで、声すら出せなかった。