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異世界は、キャバ嬢とクズ男には醜く美しい世界  作者: 工作員
第一章 現役キャバ嬢と現役クズ男の召還
4/9

2話 見える真実と見えざる真実 side:愁

「」がキャラクターのセリフです。

()が心の声です。

かっこが無い箇所は基本天の声です。

【side 河上 愁(かわかみ しゅう)

「...人のイチモツ見たんだから少しは反応して?」


 愁は目の前の絶世の美女に言葉を失ったが、仁王立ちで赤面になり顔とアソコを隠した。

 すると絶世の美女は腹をかかえ地面に笑い転げた。


「フハハハハハハ!!ハァ...ハハハハハ...

 涙が出るまで笑ったのは久方ぶりだのぉ...ふぅ。」


 笑い転げていた美女は、立直し膝やマントについた汚れをパンパンと払い、愁を見た。


「初めて会うおなごに、裸を見られ恥辱するのはわかるが

 状況が状況だぞ? 何も知らない土地で、何も知らない相手にそんな心を許していいのか?」


 先程までの笑いが嘘かのように、場の空気が凍り付いた。

 愁を試しているのか、コツコツと愁の前まで歩いてきた。

 するとニヤリと右頬を上げながら、愁の方を覗き込むように見た。


「い...いや...あのぉ......その

 それはそうだけど!!こっちも守るものがあるんじゃい!!」


 いきなり自分が初対面の人にナニを見られ、条件的に後ろを向きローブを受け取り羽織り始めた。


「可愛い所があるじゃないか?木偶人形。

 いや、河上 愁よ」


 恥ずかしく赤面していたが、愁は自分の名前が呼ばれ冷静差を取り戻した。

 何故、自分の名前を知っているのか、此処が何処か、女性が何者なのか。

 本当にここは日本なのか。

 何から聞いていいかまとまらないが、まずは情報収集をしなければ始まらない。

 そう思った愁は前に向き直して、女性に問いただした。


「.....何で俺の名前を知っている?」


(頭の中に疑問しかないな。無い頭をフルスロットルで働かせてるが、

 まったく答えが見つからん。少ないという訳ではないんだ。

 答えに成り得るアンサーが多すぎるんだ。)


 愁は元居た世界で、色々なアニメや漫画やゲームといった文化を嗜んでいたため

 こういった非現実的状況下でも、可能性を見いだせていた。

 ただ、本人も何が当たっているのかは未だ不明のままだ。

 そう考えているうちに女性が口を開いた。


「何故か...。そうだな。そちらの世界の理で言うのであれば、【魔法】だな」


 女性は愁の目を見て、腕を組み窓際へと歩きそう答えた。


「....魔法か...本当に存在するんだな。俺もその魔法で転移されたのか?

 俺の名前もその魔法とやらの仕業か?」


 愁は冷静に分析し、可能性にかけた会話をし始める。

 今自分が置かれている状況を1秒でも早く解決し、打開したいからだ。


「ほほぉ。これは興味深い。

 木偶人形の癖に驚きもせず、自分の置かれてる立場を理解してるとはな。

 ただ、魔法というのもまた違う。【魔力(マナ)】と言ってだな。

 この世界に生きとし生ける生物は、みな魔法と呼ばれる潜在能力のようなものを纏っている。

 これは、産まれた時に量や属性が決まり、魔術や強化には欠かせないエネルギーだ。」


 愁は驚きはしなかったが、恐怖からなのか冷や汗のようなものが頬を流れ落ちた。


(やはりな。俺の考えていた通りだ。

 だとしたら、この世界は危険すぎる。命が幾つあっても足りない。)


 考えたくない最悪の状態にいることを理解し、見ず知らずの敵か味方かわからない相手を前に

 愁は冷静でいなくてはならなくなった。

 その為あまり動揺を表情に見せないよう努力していた。

 

 そして女性は徐に、杖を使い宙の上で何か描き始めそれを出した。


「ほれ。それだけだと寒いだろ。 これを着ろ」


 杖が青白くまた光り、何もなかった空間から薄着の上下セットが現れた。

 色としては茶色で年寄がよく着ていそうなステテコ風に、半袖のインナー。


「まぁ今はそれで勘弁してくれ。

 魔力が足りぬ。お前を召喚するのにほとんど使ったからの」


 愁は布を脱ぎ、服を着始め淡々と喋る女性を横目で確認した。


(小柄な体つきの割に、しっかりとした筋肉に顔立ちも良く髪色も似合ってる。

 それより...)


「それよりアンタ、どんな恰好してんだよ!そろそろ着替えてくれないか!」


 女性の恰好は、上半身は胸がはちきれそうなほどパツパツの服。

 下半身は下着が見えるか見えないかギリギリのショートパンツ

 そして、それらの服の上から羽織るように着ている白のマント

 アクセサリーにも気を配っているのがわかる。

 杖を滑り落ちにくくする為なのか、五指が出てるグローブに黒のネックレス。

 それに右指全てについている宝石のようなものがはめられている指輪。

 ただ愁の目に入る情報量としては、刺激が強すぎた。


「なんだ?興奮してるのか?可愛いのぉ。」


 愁をからかい、ニヤニヤしながら愁に近寄ってくる

 このままだと自制心的な問題で危ないと察知し、両手を前に首と一緒に横に振った。


「く...くるな!俺には...俺には、心に決めてる人が!」


 後ずさりながら、後退した。

 ただ、その後ろには石の壁があり、後退ができなくなってしまった。

 そして愁の顔の隣に右手を押し、愁に密着し自身の顔を愁の顔に近づけ口を開いた。


「あぁ...知っている。 古美長 奈那(こみなが なな)だろ?」


 愁はこの歳にして異性から壁ドンをされた。

 そして唇と唇が重なりそうになる程近づいた瞬間、奈那の名前が出た。


「....何故。

 もしかして、それも魔法か?」


 愁は無理やり女性の股を潜る様に逃げ出し、女性の後ろへ回った。

 そして、愁の前には本が乱雑に置かれているテーブルと先程女性が座っていた椅子があった。


「そういうことになるな。まぁただ、私も今後直接的に関わる事になる。

 ...だが、今のお前だと絶対に会えない。 それに彼女の力にすらなれないぞ。」


 女性は愁の方に向きなおすと愁と反対の壁に手を触れた。

 すると石の壁が窓の形に変形し、夕暮れ時なのか、空がオレンジ色に見え

 ただ、そんな安堵した雰囲気でも無く

 微かに見えるのは、果てしなく続いている森林のようなもの

 そしてタカよりも大きな鳥のような生物が飛んでいる。

 

 女性はその窓の外を見ながら、ため息をついた。

 

 ただ、

 そして俺は女性に次の質問を聞いた。


「....あんたは一体何者なんだ?」


 その言葉の後、俺は石の台で寝ていたからなのか、足腰が痛く感じ

 目の前にあった椅子に腰を掛け女性の方を見つめた。


「それより、そのあんたというのは癪に触るな。木偶人形の分際で。」


 女性は気に食わなかったのか、少し顔が引きつっているように見える。

 そして俺の向かいにある椅子に女性も腰かけてきた。


「そっちもな。

 木偶人形木偶人形言われていい風に思うやつはいねぇだろ。

 しかも、ロクに説明もしねぇじゃねぇか!なんなんだ一体」


 こちらに来てからずっと侮辱され続けた。

 その上詳しい詳細の説明もロクに無い

 俺はしびれが切れ椅子から立ち上がり、テーブル越しで叫んでしまった。


「真実だろ?元の世界では、ろくに人生を歩んでいなかった。

 人様に迷惑ばかりかけ、挙句の果てには最愛の娘にもとんだ仕打ち。

 そして仕事もろくにしていない。これが木偶人形と言わずなんというんだ?

 そうか。木偶人形じゃなく...ただの、ゴミが。」


 その言葉の後、俺は何かが切れる音が聞こえた。


 今まであまり人に切れる事が無かったが、まったく知らない人間に

 何故そこまで言われないといけない!?


 俺は心から叫んだ。


「...まえに....お前に俺の何がわかるんだ!!」


 その刹那、俺の喉元に青白く光ったナイフと女性の左手が瞬時に現れ

 刺されそうになった。

 だが、女性の左手によりすんどめされ首と頭が繋がっているのがわかる。


「な...なんだよ。刺せよ。さ...刺せば俺は...戻れるんだろ

 良くある話...だよな?だって、ラノベとか!ゲームとか!アニメとか!

 基本相場でそう決まっているだろ!!」


 そう告げた瞬間俺の視界が回転し、知らぬ間に石の床に転がっていた。

 俺は女性の体術により回転させられていたことに気づいた。

 

 俺の足に女性の左足があり、首には右腕が巻きついていた。

 そして顔をまた近づけて囁く様に俺へ呟いた。


「何を勘違いしているのだ?

 お前や奈那はこちらの世界で死ねば、戻ることもできず魂として彷徨うのみ。

 アニメだか、ゲームだかラノベというのは私は知らん。

 お前の世界のものさしで計るな。


 だがな私にはお前が必要だ。

 ...ただ、いつまでも逃げるのなら、必要ない。

 そう。逃げるならお前はいらないのだ。

 勿論ここで殺すのも容易だ。

 さぁ選べ 逃げるか、私に殺されるか。

 ただ、滑稽な事にここは世界の最果ての遺跡

 外に出れば戦い方も知らないお前はすぐさまモンスターに狩られるだろう。」

 

 倒れた俺は冷や汗が止まらなかった。

 

 女性の脅しに従うしかないのか。

 俺は唾をゴクリと飲んだ。

 汗がとまらない。

 どうしよう。

 今すぐに逃げたい...





 逃げたい ニゲタイ にげたい




 俺はまたトラウマが出てきた。

 そして呼吸が上手くできなくなってきた。

 

 俺なんかが生きていけるわけなかったんだ。

 俺なんかが人と会話して言い訳なかったんだ。

 いつもそうだ。 

 何事からも逃げれば楽になれる。

 そういつも思い全て後回しにしていた。


 俺は震えと汗が止まらなっていた。

 そして肩をガタガタ震わせ、女性から横に目を逸らした。


「...お前はここ数日なにしていた?」


 ここ数日、思い返せば奈那の為に奈那を助けたいが為だけに

 普段しないことをしていた。

 色々な所の有名な図書館に行ったり、ネットで調べたり


 奈那に会いたくて、奈那に謝りたくて、もう...何からも逃げたくないから。

 そして俺は意を決し、再度女性の冷たい蔑んだ目を見た。


「俺は...俺は....変わり...たい。

 変われる...のか?

 なぁ...なぁ!俺は...どうしたら...いいんだよ。」


 俺は情けない。

 自分に対して怒りと悲しさで涙があふれ出てくる。

 泣きじゃくりながら、知り合ったばかりの俺を殺そうとした人に助けを求めた。

 本当に情けない。

 

 俺は自分の左腕を目の辺りに置き、泣いていた。

 するとそのまま彼女は口を開いた。


「変われる?何を言ってるんだ? 変わらないと助けられないぞ?

 変わらないと世界とお前の最愛の娘が死ぬぞ?

 決めるのはお前自身だ。

 その弱い心を持っているお前自身だ。」


 女性はそのまま俺を離し、立った。

 俺はその勢いで頭を打った。

 ただ、痛いのはなんて今の俺には関係ない。

 この人は俺に何をさせたい。

 何が望みで、何故ここまで俺に助言をくれるのか。

 

 俺は打った頭を左手で覆い、倒された身体を起こした。


「あんたは....何を知っているんだ?何が望みだ...俺に何をさせたい」


 すると彼女は強張った表情をし、右頬をつりニヤっとしていた。


「私は、この先起こるべく事が見えている。 

 何が起き、誰がどうなるのか。

 何もかも。全てだ。

 ただそれは、あくまで可能性だ。必然ではない。

 だからこそ私は...欲しい。

 何もかも。

 この世の全てを。」


 その後彼女は俺に左手をさし伸ばしてきた。

 俺はその手を見つめ、最後の質問を聞いた。


「その世界でどうするんだ。

 あんたは、一体何をするんだ?」


 左手をそのまま出し続けながらその女性は答えた。


「簡単さ。

 お前のような弱者が強者を穿つ程強く生きれる理想郷を作る。

 この世界は腐っている。

 己が利の為だけに、民草を漁りその都度犠牲を問わない。

 その後全て無かったことにする。

 そんな世界が私は嫌いだ。

 だからこそ、壊したい。

 この世界を一から創り直したい。


 そして、お前にはその礎になってもらいたい。

 ただそれだけ。それに簡単な事さ。

 部隊、国、団体

 これら全てを動かす為には、先導者がいるだろ?

 ただそれを率いる私が先駆者

 それからお前はそれらを引っ張る先導者

 お互いの利益を求める世界なら、私らが求めた所で誰も咎めない。

 いいか。愁よ。己が道を進め。」


 その言葉を聞いた瞬間俺の胸の何かが弾けた。

 そして俺は、涙を拭い右手を床につけ立ち上がろうとした。


「俺の...利益...奈那...会いたい...。

 奈那にもう一度...もう一度触れたい。」


 すると女性の行動は意外だった。

 俺に再度手を差し伸べてきた。

 

 俺はもう迷うことなく、鼻水をすすり手をとり立ち上がった。


「...だったら...だったら俺がその先導者になってやる...

 こんなクズ男でも、ニートでも、世界を変えてやる...。

 俺は...俺が嫌いだ

 逃げてばっかりで力も無く、財力も無い。

 その上弱虫で、すぐ逃げがちだ。

 ただ...ただ!もう逃げたくねぇ!


 そして、こんなゴミは二度と見たくねぇ。

 ...わかったよ。

 

 あんたの理想郷を作るのに手を貸してやる。

 あんたと一緒に歩んでやる。

 奈那を見つけるまでは。


 ただ、勿論俺の目的にも付き合ってもらう。

 だから俺に...

 俺に力を貸してくれ!」


 女性はそのまま俺の手を握り、自分の方へと引っ張った。

 その瞬間に窓から風が吹き、女性のローブがヒラヒラと舞った


「...わかった。

 だったら私がお前を変えてやる。

 強くさせてやる。

 逞しくさせてやる。

 さぁ!私にお前の全てを預けよ!

 今日からはお前は...私の下僕だ!河上 愁!!」


 そのまま俺はその女性の胸が当たるところまで引っ張られた。

 そして満面の笑みと大きな声で空気が振動しているのが伝わる。


「...へ?下僕?」


 俺は一気に肩の力が落ちたかのように脱力感に襲われた。

 意味が分からない。


「そうだ。光栄に思え!この世界ただ一人の生き残り!!

 エルフ族の王族ロードエルフの純血種!!

 レイトリス・アーヴァインが主人になるんだぞ!」


 レイトリスという女性は大きな声を発し俺にキラキラさせる眼差しで見た。

 そして胸を張り自信満々に事故紹介を始めた。


「...まったく話が掴めないんだが。」


 俺は頭をかきながらポカーンと口を開けながら呆気に囚われていた。


「そうか。まだこの世界について説明していなかったな。

 話すことは多い。それと時間も時間だ。

 夕食を食べながら説明することにするかの!」


 レイトリスはその後、右手で杖を使い地面に魔方陣?を描き始めた。

 そして俺の手をまだ繋いでいる。


「いいか?今からワープするが。慣れてないやつは...まぁ聞くより実感せい

 行くぞ?はよ。こっちに来い」


 俺にそう言うと、両手を後ろに回し抱きついてきた。

 すると青白かった魔方陣は赤く光始めた。


「ちょ...ちょ!なに!!


 俺は急な出来事にまた動揺を隠し切れなかった。

 その後レイトリスは何か呟いた。



「વાર્પ」

(ワープ)


 魔法?を唱えた瞬間、目の前は真っ白の世界になり目の前が回った





 俺は驚き外にも聞こえるぐらいの声で叫んだ。

「な....なんだ...なんなんだよこれはあああ!!!」

作中に【事故紹介】とありますが、わざとこの漢字を選んでいます


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