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異世界は、キャバ嬢とクズ男には醜く美しい世界  作者: 工作員
第一章 現役キャバ嬢と現役クズ男の召還
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0話 君がいなくなった日 side:愁&奈那

初めまして工作員です!

今回話題になっている異世界系の作品を書きたいと思い、投稿を始めました。

日本語能力が少々危うい箇所が出てくるかと思いますが、生暖かい目で見て頂ければ幸いです!

ストーリーがグダグダにならないことを意識して、書きたいものを書いていきます!


「」がキャラクターのセリフです。

()が心の声です。

かっこが無い箇所は基本天の声です。

(本当にあいつのことを大事に思っていた。

 ただ甘えていた。 何もかも

 金も言葉も行動も全て全て

 繋がりが無くなった時に全て尊く、空しく思える。

 俺は何をやっていたんだ...と


 全て台無しにした。

 裏切って、傷つけ、悲しませ、泣かせてしまった。


 怒り・悲しさ・静けさが俺の心を掻き乱し、思考を止まらす。

 何をしていいか、何をしたら正解なのか

 どうしたら元に戻るのか 全て元に戻す為には何をすれば...。


 この世界に来る前から運命は決まっていたのかもしれない。

 

 だから!!変わったこの俺を今 お前に見てほしい。


 もう一度 もう一度だけでいい。

 もう一度君に...触れたい...)




 今は12月22日 場所は札幌

 外はクリスマスシーズン真っ只中。

 男は家でいつも通りだらけている。 


 札幌市内にあるとあるアパート

 そこには同棲をしているしがないカップルがいた。

 片方は現役キャバクラ嬢。

 片方は現役ニートのクズ男。


 元々は仕事をしていた男だった。

 転職を繰り返していく事に、気がついたらこの様だ。

 新しい事に挑戦したがるチャレンジ精神は、賞賛に値すると思う。

 ただ自分に合わない、自分では続かない。

 そんな悲観的な気持ちが表に出てしまい、

 長続きせず途方に暮れ挙句ニートになった。

 だがこのクズ男を支えていたのは一緒に暮らしている女性だ。


 何をしても、何を言っても許してくれる。

 そんな甘い考えでずっと過ごしていた。

 だが、そんなまやかしは時間の問題だった。


 そう。彼女の限界ももう頂点に達していたのだ。


「行ってくるね。今日は面接とかあるの?」


 この心地が良い、可愛らしいがつんざく程高くない声

 低すぎくもない、丁度良く正に美を象徴する声!

 そんな寝起き抜群に聞くには素晴らしい声で起こしてくれたのは...

 クズ男の彼女古美長 奈那(こみなが なな)


「ん、今日は何もないよ。

 仕事?今日も頑張ってね。

 外寒いし、滑るからさ。気を付けて」


 この眠気マックスのいかにも

 クズ人生真っ最中の声がクズ男の河上 愁(かわかみ しゅう)

 愁は眠たい瞼をこするわけでもなく、

 また枕に自分の右頬を埋めるように眠りについた。

 だがその刹那扉のある方から奈那が呟くように口を開けた。


「ねぇ。愁 もうさ、こんな生活いつまで続けるの?

 最後に面接行ったのいつ?

 私が覚えてる限りもうちょっとで2週間たつよ?

 本当に職探ししてるの? 【また】嘘じゃないよね?」


 ベッドに横たわっている愁の方を見ているのか、声がこちらに向けて放れている。

 愁は心臓をドキドキさせ奈那とは反対側を向き、目を開け口を開いた。


「んあ?あぁ、探してるよ? 色々とね...

 いやぁでも...中々良い職が無くて...それでね?」


 むくっと体をあげようとした時、愁の言葉を遮り

 扉のある方からズカズカと足音を立てこちらに向かってきた。

 奈那は愁を無理やり片手で起こし、自身の右手を使い愁の胸倉を掴んだ。

 そして吐息がかかる程度に愁の顔を自身の顔に近づけて言った。


「あのさ、もうお前の嘘には懲り懲りなんだわ。 また?証拠わ?ねぇ?

 スマホとお得意のPC見せろよ。

 いつもゲームやって?仲良い友達と遅くまで煩く?」


 いつもと違う尖がった声で愁の胸倉を掴んでいる。

 そして疑心の眼差しで、愁の方を見て怒りを表情に表している。


「......っう...。」


 愁はこういった{怒られる}事に対してトラウマがあった。

 過去にいじめられていた経験だ。

 学校では女子からいじめの的。

 家にいれば親に暴力をされる。

 

 愁は怒りという感情が対話相手に出た際

 それらからいつも逃げる癖があった。


 そしてその対処法もあった。

 真正面からぶつかることなく黙り続け

 悲壮感のある顔をすれば時間が解決すると。


(いつも逃げている...。

 いつも逃げていた...。

 そう今も。 黙りこくっていれば時間が解決してくれる。)


そう愁が考えた瞬間、怒りをあらわにした奈那が呆れつかんでいた掴んでいた手を離した。


「もういいわ。またそれね。 

 お前の家かもしれないけど、光熱費払ってるの誰?家賃払ってるの誰?

 私だよね?なのに、その恩は言葉だけ。

 ただ、ありがとうって、それだけ。

 そのクセ毎日タダ飯食って、寝て、酒のんでタバコ吸って

 お前にどんだけお金使えば気が済むの?マジでおかしいだろ?」


 ドンッ ズズ..ズゥー...


 愁はベッドから起こされて胸倉を掴まれた挙句奈那の怒りに触れ

 肩を押され壁にあたった。

 そして愁は奈那の方を向くことすらなく、そのまま下に俯いた。


「....ごめん..なさい。」


 涙は出ないが、肉食動物に狙われている時の子羊のような声で謝る。


「聞き飽きたんだって。誠意と行動で示せよ。マジでこれで何回目?

 本当に学習しないね。そしてそのまま蹲って地面を掴もうとするんでしょ?

 何がしたいんだよ!ふざけんな!!頭弱すぎ。」


 そのまま奈那は愁とは逆の方向に足を進めた。

 そしてリビングのソファに置いてあったバッグを持ち

 急ぎ足で鏡台に置いてある化粧ポーチ等をバッグに詰め玄関に向かった。

 そしてそのまま玄関にあるヒールを履き始めた。

 愁はおぼついた足を奮い立たし、

 重くなった体をお越し奈那の元へ早歩きを始めた。


「ご...ごめん。本当にど...どうしていいか」


 言葉が詰まり、どもりがちになっている。

 だが、玄関の奈那に向け右手を出し掴もうと努力をした。

 

(伝えたい事を伝えれない。

 いつもいつも。 また同じだ。)


「うるさい。もういいから。いつも通りにしてれば?

 今日はアフターもあると思うし、

 遅くなるから勝手に一人であるもの食べて寝てれば?じゃあね。」


 ガチャッ...バタン...。


 愁の顔をみることなく、強く扉を閉め、早歩きで仕事に向かった奈那。

 愁は玄関にもたどり着けず、伸ばした右手は無様にも届かず

 そのまま床に置いてあるゴミ袋を見つめた。


(最近はずっとこんな感じだ。

 なんでこうなった?どこで俺は間違った...。どうしてだ?

 悔しさと苦しさと怒りでどうしていいかわからない。)


 そして愁は久しぶりの感情が限界にきて、

 その場にあった空き缶の入ったゴミ袋を蹴った。


 ガシャン ビリッ ガシャーン


 その袋は破けてしまい、中身が出てしまった。

 愁はそれらを蔑んだ目で再度見おろし、小さく呟いた。


「あぁ、また怒られる。 片付けよう」


 愁はため息をつきながら、感情をぶつけてしまったゴミを片づけた。

 そして考える振りや、悩む振りだけ毎回するだけ。

 そう今回も。


 愁は今日も何もせず、ただ呆けている。

 ゲームをしている。

 カップ麺にお湯を入れ、食べる。

 そして奈那の帰りを待つ。

 いつもの繰り返しだ。


(こんな生活を選んだのは結果俺だ。

 そんなの誰だって見ればわかるし、考えればわかること。

 ただ、頭が働かない。言い訳しか出てこない。こんなクズ人間...死んだ方が...)


 そんな事を考えていると時間は既に18:45

 日も落ち始め、外は雪が降り始めた。


 (このままの関係が続くのかな...変わりたいな...)


 そして更に時間が経ち...深夜1:51

 愁は、また現実逃避をしていた。


「エリアス高原のレイドって余裕じゃね?

 いけるだろ!天才悪魔召還師の俺がいくか?」


 愁はPCで出来るMMORPGオンラインゲームをしながら

 同じギルド同士でボイスチャットを使い通話をしていた最中。

 その時扉が開き、冷たい空気と一緒に酔っぱらった奈那が入ってきた。


「愁~~ご飯食べた~?食べて無かったら一緒にご飯食べに行こう~?」


 夕方の事が無かったかのように思える。

 仕事はホステスなので、ほとんど毎日酔っぱらって帰ってくるのが日常。

 愁も元々ボーイで働いていた過去があり、気持ちは理解している様子

 

(酔っぱらってる時はいつもそうだ。今日のことを忘れてくれる。)


「わ、わかったよ。

 皆ごめん 彼女が来帰ってきたから今日は落ちるね。おつかれ」


 奈那が帰って来たことで、

 ギルドメンバーに挨拶をしボイスチャットとゲームを即座に落とした。

 その後PCも一緒に落そうとした。

 その時だった...


「なに?またゲーム?バイトは?探したの?面接は?」


 急に酔いがさめた様に、怒りの顔に様変わりしていた。

 そして右肩に背負っていたバッグを愁に投げつけた。


「何も反省してないじゃん。マジで有りえない。

 本当にクズじゃん。私になにがしたいの?

 何?私もっと稼げばいいの?私も遊びたいんだけど

 ねえ?」


 怒りの声色になっているのも聞けばわかる。

 そのまま奈那の方を向き、顔を覗いた。

 奈那には普段の優しい表情はそこには無く、怒りの眼差しで愁を見つめていた。

 そして再度こちらに歩き始め、右手を握りしめ天にあげ愁に振り下ろした。


「ご...ごめん。俺もどうしていいか...」


ズシンと愁の右頬に奈那の綺麗な赤色のネイルをされている右手が降りた。

 

(痛い イタイ いたい)


 愁は自分の頬に鈍い音が鳴り衝撃によりすぐに反応し、

 条件反射にて顔を手で覆うように守った。


「もういいよ。いいから死ねよ。クズが!!」


 怒り声と共に罵声を浴びせられ、殴られ続ける


「ほ、ほんと...やめt...」


(殴られる 殴られる 殴られる

 怖い コワイ こわい

 何も言えない 俺が...

 悪い ワルイ わるい)


 愁は昔の同級生の異性にいじめを受けてる時の

 トラウマがフラッシュバックした。

 ひたすら殴られていたが、唐突に奈那の手が止まった。

 そして、少し目を開け、愁は自分の腕を見た。

 

 すると、愁の腕が赤くなっている 箇所が数か所あった。

 ただそれだけじゃなく、点のような血が愁の服についてるのが見えた。

 少し覆っていた手を開けると 奈那の右手薬指のネイルをしていた爪が剥がれ

 血がかなり出ているのを目視する。


「もう...どんだけ苦しめば気が済むんだよ! どう...して私ばっか

 何がしたいんだよ!!!」


 泣きながら弱まる打撃を身に感じ続けた。

 その時緩くなった奈那の右手を反射的に両手で掴んでしまった。


「私が...私があんたに何をしたって...いうんだよ...。」


 涙がポロポロ床に落ちるのが見える。

 愁はどうしていいかわからず、そのまま立ち竦んでいた。

 無言のまま。

 いつもと同じ表情で。

 いつもと同じく黙って。


 すると奈那がその静寂を小さい声で破った。




「別れよ...」



 掴まれた手を力強く振り解き 小さな声で、奈那が呟いた。


 愁は絶句し、言葉が出ずに奈那の顔だけを見ていた。

 目頭が熱くなっているのも感じたのか愁の顔が歪んでいる。

 愁が口を開こうとしたその時...


 奈那がいつも化粧をする鏡台の丸鏡が青白く光り白い手が無数に出てきた。

 その【異形なモノ】は奈那めがけ、伸びていく。

 奈那は咄嗟の出来事に声が出ず、泣き顔のまま呆けていた。


「...え?...なにこr...!」


 スピードが早く、圧倒言う間に奈那の体が引きずられてしまう。

 激しく抵抗をしようと動きまわるが、何も反応が無く少しずつ鏡の方へ連れていかれる。


 愁は最初この世のモノではない、その【異形なモノ】に恐怖を覚え

 脚が震え固まってしまっていた。

 思考も同時に固まり腰を落とし見ているだけだった。


 ただ、何故か心は高鳴っている。

 現実では有りえない、「常識外れ」の存在。

 だが、何をどうしていいか思考がまとまらない。


 その時このままだと今後一生自分に対して罪悪感が付きまとう。

 そんな気がした。

 愁は勇気を振り絞り、落とした腰を奮い立たせ

 引きずられた奈那の右手を力強く引っ張った。


「奈那ァァ!!

 くそ..くそ...くそ!なんだコイツ!奈那から...

 俺の奈那から離れろオオオォォォ!!!」


 愁は怒号をあげ、奈那を【異形なモノ】から

 救おうと必死に掴み続けた。


 愁は力には自信があった。

 ただ、それだけ。

 そうそれだけであった。

 結果無残にも儚く奈那は鏡の中に半身以上吸い込まれていった。

 この世の力だと足りなかったのだ。


「しゅ...う...しゅ....愁!!!!!たすけ...愁!!!!!」


 泣きながら愁の名前を呼び助を求める奈那。

 愁は力強く【異形のモノ】から奈那を引き離そうと奮闘した。

 

 「くそ!くそ!!くそ!!!どんだけ吸い込む力つえぇんだよ!!」


 愁は近くにあったベッドに足をかけるように奈那を引っ張っていた。

 ただ、その力は計り知れないぐらい強く成人男性一人だと無理なものだった。

 さらに愁は徐々に掴んでいた奈那の手がズルズル抜けていくのを感じた。

 先程流してしまった右薬指の血が愁の手の平に滴り...

 奈那の手が離れた。


 キュィィィィィィィン


「奈那アアアアアァァァァ...!!!」


 甲高い音と共に鏡の中に奈那が完全に連れて行かれた。

 愁は届かない声を大にして、奈那の名前を叫んでいた。


 その刹那青白かった光が徐々に消えていき無数の手も無くなった。

 愁はどうしていいかわからず、鏡の中に無理やり入ろうと鏡を地面に置いた。

 がソレはただの鏡に成り果ててしまっていた。

 何も起こらない。


 その出来事は、一瞬の出来事だった。

 

 愁は今、目の当りにした光景が現実と受け切れていなかった。

 そのまま地面を蹲り、奈那の名前を叫ぶだけ。

 結果愁ができることはここまでだった。


 今目の前にいた奈那がいなくなった。

 愛している最愛の女性が 目の前から いなくなったのだ。

 愁は泣き崩れ、奈那がいなくなった実感を誰もいない部屋で暫く静かに感じた。

 ポツンと一人で。


 今は12月22日 場所は札幌

 外はクリスマスシーズン真っ只中。

 男は家でいつもどおりだらけていた。





 クズ男は...独りになった。

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