204話_型破りにも程がある
※今回は、かなり短いです。
爆破された場所。
爆発現場に居たアランとヒューマが今も行方不明であること。
更に生きる厄災という怪物が王都に向かって進行していて、アルステッド達がその怪物を討ち破るために動き出していることまで。
俺が持っている全ての情報を彼らに話した。
話を最後まで聞いた全員、顔を俯かせているため表情は分からないが部屋の空気に重みが増したのは、うんざりするほど伝わってくる。
「……探しに行こう」
囁くように紡がれた言葉に皆が一斉に声の主──リュウを見る。
探しに行く。それが何に対して言われた言葉なのか、俺は瞬時に理解した。
「今の話、ちゃんと聞いてたか?」
「聞いてた。聞いてた上で言ってんだよ、オレは」
それなりの信頼に値する者達は生きる厄災の件で手一杯で、アランとヒューマの捜索には何も手が付けられていない。
確実と呼べる証拠も手掛かりも無く、何から手を付ければ良いのかも分からないのが現状だ。
「まさか手当たり次第に探していくなんて言わないよな」
「当然。ヒューマとアランが勇者学校に居たことは事実なんだろ? しかも最後に居たって言う図書館にはヒューマ達以外にも生徒が居た。だったら其奴等に聞いてみれば良いじゃん。もしかしたら拐われる現場を偶然目撃した奴がいるかも知れないしさ」
予想に反して意外と理にかなっているリュウの意見に俺だけでなく、その場に居た全員が珍しいものを見たとでも言わんばかりに彼を見つめる。
「お前……本当にリュウか?」
「何か言ったかな、ライ君」
気味が悪いほどに深く刻まれたリュウの笑みを見て反射的に「いや、何も」と返す。
「てっきり〝手当たり次第に探していけば、いつか見つかる〟とか言い出すと思ってたわ」
「カリンちゃん相変わらず、はっきりしてるニェ……」
(人とは時に、実力以上の力を発揮するものですからね)
「え、もしかしなくてもオレの味方ゼロ?!」
明らかに落胆した様子のリュウの肩に差し伸べられた手……ではなく触手。
(リュ、ゲンキ)
今のは恐らく「リュウ、元気出して」と言いたかったのだろう。
その言葉を向けられた本人も意味を理解したのか、瞳が少し潤んでいる。
精神的なダメージが蓄積された今のリュウには効果覿面だ。
「オレの味方は、お前だけだよ。スカーレット!」
スカーレットに抱き着こうとしたリュウだったが、呆気なくヒラリと躱されていた。
(リュ、アブナイ!)
スライムの一時期の感情に振り回される妖精。
果てしなくどうでも良いが、中々に珍しい構図ではある。
(……話を戻しましょう。先ほどのリュウさんの案は決して悪くはありませんが、現実的ではありません)
「どうしてニェ?」
(魔法学校の生徒が勇者学校を訪問することは基本的に禁止されています。試験等の特別な事情がある場合は別ですが、今回のような私情での調査は恐らく受け入れられないでしょうね。門前払いされるのがオチです)
グレイの無理やりな修正により、話の軸が本題へと戻った。
リュウとスカーレットで僅かに緩んでいた周囲の空気が再びヒシッと引き締まる。
「じゃあ一体、どうすれば……」
(俺達がいくら頑張ったところで本気で受け入れてくれる大人は所詮、極小数。なので、ここは素直に正攻法でいきましょう)
「正攻法?」
付き合いが長いというのも考えものだ。
グレイが何を考えているのか。この後、何を言おうとしているのか。まるで自分の心を覗いているかのように全て分かってしまう。
それ故に、動揺が隠せない。
(要は優先順位を変えるだけの話です。アランさんとヒューマさんの捜索よりも先に別の問題を片付けてしまえばアルステッド理事長達からの協力を問題なく得られる筈ですから)
「別の問題って……」
(それは勿論、先ほどライさんが言っていた──生きる厄災討伐のことですよ)




