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22話_少し、昔話でもしようか

※前半に、少し残酷な描写があります。

※初めだけグレイ視点で進みます。

 彼が魔王になったばかりの頃、4人の仲間がいた。彼らは後に、四天王と呼ばれた。

 そのうちの1人が俺、グレイ・キーランだった。

 俺は元々、とある町の医者。町の人達の怪我や病気を治癒魔法で治す、魔法使いの医者だった。

 しかし、その裏で()()()()の研究をしていた。

 ある日、ついに薬が完成し、自分を被験体として薬を投与した時。

 住む町が突如、火に包まれた。驚く間も、逃げる間も無かった。

 その町にいた者達は皆、焼死した──ただ、俺1人を除いて。


「う゛……ぁ゛……」


 焼け(ただ)れた皮膚、人間とは思えない声痛覚に支配された身体は、最早、死ぬよりも地獄。

 俺の研究は、最悪の形で成功であると証明されたが、恐らく今の自分は人間とは到底思えない化け物のような姿だろう。

 この身体では治癒魔法も満足に扱えないし、この姿のまま、これから生きていくなんて考えられない。

 僅かに残された理性で、不老不死の力を手に入れた俺は、無情にも死を望んだ。


「ほぉ。全て焼け死んだと思っていたが、その姿になっても尚、命の鼓動を絶やさぬか」


 そんな時だった。俺の前に、魔王様が現れたのは。


「気に入った。お前、俺の仲間にならないか?」


 差し伸ばされた手を、既に原型をほとんど留めていない手で迷いなく、力の限り掴んだ。


 ◇


「……おい、聞いているのか?」


 俺の言葉に、ボーッとしていたグレイは慌てて頷いた。


「なら良い。それにしても、よく俺が魔王だと分かったな。容姿は、あの時の俺とは全く違うというのに」


 俺の言葉に、グレイは笑いながらボードを見せた。


『名前が同じだったので、もしかしてと思いまして』


「同姓同名の別人だったら、どうするつもりだったんだ? それに、仮に本人だったとしても俺が前世の記憶を持っていない可能性だって、あっただろう?」


『その時は、適当に誤魔化してました』


 グレイの返答に、思わず笑いが零れた。


「お前という奴は。そもそも、お前は、ずっと俺の事を魔王様と呼んでいたから俺の名前なんて知らないと思っていたが?」


『知ってるに決まってるじゃないですか。俺、一応、幹部だったんですよ』


「あぁ、そういえばそうだったな」


『今でも不思議です。俺は戦闘より交渉に関わることが多かったのに、いつの間にか頭数に入れられていて』


「まぁ、お前は、あの3人のストッパー役でもあったし、強ち間違いでも無かっただろう」


 懐かしさに思わず、互いに顔を見合わせて、フッと笑った。


『なんだか魔王様、変わりましたね』


「そう言うお前は、変わらないな」


『昔は、フーハッハッハッ!! なんて高笑いばかりしていたのに』


「もう一度言う。お前、本当に変わってないな」


 グレイをジト目で見つめながら、単純な好奇心で前世の中身のままで今世を生きている自分を想像した。

 ……後は、皆様のご想像にお任せする。


「魔王だった頃の俺にとって今の生活は、全てが新鮮で、想像もつかない事ばかりだしな。その影響だろ」


 俺の言葉に、グレイは口元を緩ませていた。


「……何だ、その顔は」


 なんだが自分の心を見透かしたような反応に軽く睨みつけたが、グレイは、その反応すら分かっていたと言わんばかりにニコニコと笑うだけだった。


『魔王様は、この世界でも魔王に?』


 グレイの問いに、俺は首を横に振った。


「この世界は〝前〟とは違う。だから俺が、この世界を壊す理由は無い」


 俺の答えに、グレイは眉を下げた。そんな彼を見て、思わず俺も眉を下げる。


『魔王様がそう決めたなら、俺は何も言いません。ただ俺や魔王様が前世の記憶を持ったまま、この世界にいるという事は他の幹部達も同じ状態で転生している可能性があります』


 今まで考えた事も無かった。

 前世と状況は違えど記憶を持ったまま、この世界に転生した俺がこうして存在しているのだがら、他にも俺と同じように記憶を持ったまま転生した奴がいても不思議では無い。

 現にグレイだって、そうだった。


「もし、そうなら厄介だな」


『そうですね』


 言葉通りの意味だ。

 彼らが、あの性格のまま転生していたらきっと、()()()()()()


『で、でも、まだ、そうだと決まった訳ではありませんから!』


「そ、そうだな!」


 そう結論を付けるしか無かったが、今は、かつての戦友(仲間)との再会を素直に喜ぼう。


「これから、よろしくな。グレイ」


『こちらこそ、よろしくお願いします。魔王様』


「その〝魔王様〟というのは、止めてくれないか?」


『しかし今更、呼び名を変えるのは、どうも違和感が』


 双子(マナとマヤ)とのやり取りを思い出させるような会話に、俺はまたかと頭を抱えた。


「……ライで良い。今は、お前の方が先輩なんだしな」


『でも……』


「うるさい、文句は受け付けない。この流れでいくと俺はグレイ()()とでも呼んだ方が良いか?」


 冗談交じりにそう言うと、グレイは顔を蒼ざめながらボードへと視線を移した。


『気持ち悪いので、グレイでお願いします』


 あの双子といい、彼といい……俺は前世を知っている奴に〝気持ち悪い〟と言われる呪いにでもかかっているのだろうか?


 ◇


 その後、グレイと適当に話を終えた俺は、寮へと帰っていた。

 昔とは違う。無事に〝明日〟が迎えられると、そう分かっているから。

 必要以上に話し込む必要も無い。

 また、これから少しずつ話していけば良い。


(……俺が死んだ後の事も含めて、な)


「あ、おかえり」


「ただいま」


 正直、すぐにでもベッドに横になりたい気分だったが、リュウの机に置かれたギルド登録書を見て、その時まですっかり忘れていた物を思い出した。


(ギルド登録書。そういえば、そんな物があったな)


 横になるのは、まだお預けのようだ。

 俺は投げ捨てた鞄から登録書を取り出し、机へと向かった。

昨日、pvアクセスを確認していたら、5000を達成していました。

初心者が思うがままに執筆している作品ですが、その作品がそれだけ誰かに読んでもらえたのだと思うと、とても嬉しいです。

本当に、ありがとうございます。

また、評価やブクマをして下さった方々も、ありがとうございます。執筆の励みになっています。

とても嬉しかったので、この場を借りて感謝を伝えさせて頂きました。

良かったら、次回も読んで頂けると嬉しいです。



次回、《ギルド編》突入

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