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19話_クラス分け召喚

 入学式の翌日。

 アルステッドの宣言通り、クラス分け召喚が行われようとしていた。

 昨日は式典会場校舎で行われた(と言うより、やらされた)が、今回は校舎から少し離れた広場で行われるらしい。


「はぁーい。みんな、集まったわね」


 俺達(新入生)を外の広場に集めた張本人、ビィザァーナは、今日も元気が良い。


「昨日、理事長が言った通り、今日はクラス分けの試験を受けてもらうわね」


 そう言ってビィザァーナは、俺達から数メートルほど離れた。


「出でよ!!」


 彼女がそう叫ぶと、ビィザァーナと俺達の間に複数の魔法陣が現れる。

 昨日、俺が見た魔法陣と全く同じだ。


「昨日、ライ君も披露してくれたから分かると思うけど、この魔法陣を使って召喚魔法をしてもらいます」


「せ、先生……でも私、召喚魔法なんて一度もしたこと無くて」


 不安そうに手を挙げた女子生徒にビィザァーナはニコリと微笑んだ。


「大丈夫よ。召喚魔法なんて、やった事ない子がほとんどでしょ?」


 ビィザァーナがそう言うと、ほとんどの生徒が頷いた。ちなみに俺の隣にいるリュウも頷いた。


「そういう子達は私が教えるから安心して。それじゃあ、まずはクラス分けについて説明するわね。クラスは(ドラゴン)、ゴーレム、妖精(フェアリー)の3つに分けられているの。それぞれのクラスを簡単に言うと…(ドラゴン)は万能タイプ。つまり、全般的に優秀な子達のクラスね。ゴーレムは実戦型タイプ。攻撃魔法や防御魔法が得意な子達が多いわ。そして、最後の妖精(フェアリー)は後方援護タイプ。回復魔法や強化魔法が得意な子達が集まるクラスよ」


 俺は、ビィザァーナの言葉を頭の中で纏めていた。


 (ドラゴン):万能(基本的に、なんでも出来る)


 ゴーレム:実戦型(攻撃、若しくは防御に特化)


 妖精(フェアリー):後方援護または支援(自分以外の誰かの能力や状態などに対して力を発揮する)


(つまり俺は昨日の召喚で、(ドラゴン)を喚んだから(ドラゴン)クラスになるのか)


「昨日、理事長も言っていたけど、これは召喚魔法と言っても本当に喚び出すわけじゃないから、何が出ても慌てないようにね」


 昨日は在校生も含めて見たから多いように見えたが、こうして新入生だけで見ると恐らく200人程度。

 魔力は誰にでもあるものでは無いから、このくらいが妥当なのかも知れないが何より納得いかないのは200人も生徒がいて、その内に男が俺とリュウの2人しかいないという事だ。

 この世界の魔法使いという職業(ジョブ)は、そんなにも男に人気が無いのだろうか?


「……………」


 魔法陣を見つめながらほとんどの生徒が期待や不安で騒ぐ中、リュウだけは口を閉じて魔法陣を見つめていた。

 数人が魔法陣の近くに立って、召喚魔法を行っていくと、ゴーレムや妖精(ピクシー)が魔法陣の上に現れる。


「うわぁ! カリンちゃん、凄いっ!!」


 突然、賑わい始めた方向へ視線を向けると、俺が召喚した(ドラゴン)より少しだけ小さい(ドラゴン)が魔法陣の上で、どっしりと構えていた。


「これくらい、当然よ」


 肩にギリギリ付くか付かないか程度の髪の長さの女子生徒が、さも当然と言わんばかりに腕組みをしながら、そう言い放った。俺の目が節穴で無ければ、彼女の後ろに尻尾のような物が見える。


「リュウ、あの女子生徒は……」


「ん? あぁ、俺も初めて見たよ。あれ、蜥蜴(リザード)族の尻尾なんだろ?」


蜥蜴(リザード)族?)


 リュウの言葉に、俺は首を傾げた。


(それにしては、俺が今まで見た蜥蜴(リザード)族とは、だいぶ……いや、かなり容姿が違うような)


 あの種族に、あそこまで人間に近い容姿をした奴がいただろうか?

 俺が彼女を見つめていると、バチッと彼女と視線が合ってしまった。


「…………」


「…………」


 互いに視線をそらす事も出来ず、見つめ合ったまま固まっていたが、彼女はすぐにムスッとした表情を見せ、顔をそらした。


(何だ、今の?)


 俺の記憶が正しければ、彼女とは初対面な筈だ。

 彼女の対応の真意が分からず、頭上にハテナが浮かぶ。

 その間にリュウの順番が来たようで、俺に一声かけると、魔法陣の方へと行ってしまった。

 俺は彼女から意識を離し、リュウの方へと視線を向けた。


召喚(サモン)


 そう唱えたリュウの魔法陣には、可愛らしい妖精(ピクシー)が姿を現した。


「リュウ君は、妖精(ピクシー)クラスね」


 そう言って、ビィザァーナが名簿のような紙に何かを書き込んでいた。

 リュウは、魔法陣の上で羽を忙しなく動かしながら飛び続ける妖精(ピクシー)を見ていた。


「リュウ君、どうしたの?」


「……何でもありません」


 そう言って魔法陣から離れたリュウは、俺の隣で腰をおろした。


「お疲れ」


「……あぁ」


 俺の言葉に一言返事はしてくれたものこ、彼は心此処に在らずといった感じで召喚をしている生徒達を眺めている。


「結局、ここでもオレは妖精(ピクシー)なんだな」


 吐き捨てられた彼の言葉は活気溢れる周囲の声にかき消された。


 こうして新入生全員がクラス分け召喚を終えた。


「今日から早速、それぞれのクラスに配属になるから、頑張ってね。教室の場所は………」


 教室の場所を聞いた俺とリュウは別れ、各々の教室へと足を進めた。

 俺の数歩前を、コツカツと靴音を立てながら進んでいるのは先ほどのクラス分け召喚で唯一、(ドラゴン)を喚び出したカリンと呼ばれた女子生徒だ。

 クラス分け召喚の時もそうだったが、後ろ姿から見ると余計に尻尾が目立つ。

 華奢な彼女の身体に明らかに不釣り合いなゴツゴツとした尻尾を揺らしながら、彼女はせかせかと足を動かしていた。

 気のせいか、足音がなんだか苛立っているように聞こえる。

 そんな事を考えていると彼女が突然、足を止めた。


「……ねぇ、貴方」


 そう言って振り返った彼女は先ほど俺に向けたのと同じで、何処か不満そうな表情だ。


「どうして、付いて来るの?」


 彼女は何を言っているのだろう?

 目的地が同じなのだから、同じ道を進むのは当たり前ではないか。


「どうしてと言われても……俺も、こっちだから」


 そうとしか答えられない。

 彼女の意図が掴めず、訝しげな表情を浮かべているとチッと舌打ちされた。

 何故、彼女は、こんなにも俺に対して険悪なのだろう?


「……俺、君に何かした?」


 心当たりは全く無いが、もし俺の気付かないところで彼女を不愉快にさせてしまったというなら謝罪しなければならない。

 入学早々、新入生……しかも、これから同じクラスメイトとして過ごす者と揉める(面倒とも言える)事は、なるべく避けたい。

 しかし、そんな俺の考えなど知った事では無いと言わんばかりに彼女は目を細めた。


「別に、何もしてないわよ」


 明らかに何かある表情を浮かべながら、言われると、なんとももどかしい気持ちになる。

 このままでは拉致があかない。そっちがその気なら俺もそれなりの対応をさせてもらう。


「俺は、ライ。同じクラスの者同士、仲良くしてもらえると嬉しい」


 俺に特別に不満が無いと言うなら、こう接しても文句は無いよな?

 あくまで冷静に、あくまで大人な対応で俺はカリンへ歩み寄り、手を差し出した。俺の対応が意外だったのか、目を丸くして俺の手を見つめていた彼女が口を開こうとした瞬間だった。


 ────カーン、カーン!!


 校内に響く鐘の音。

 授業の始まりを知らせる鐘の音だ。

 このままでは初日から遅刻する。彼女も同じ事を思ったのか俺を一瞥して走り出し、俺もそんな彼女を追うように走り出した。


「「すみません、遅れましたっ!!」」


 バンと開いた扉の先には、驚いたような表情で見つめたのは、既に席についていた十数名の生徒達と教壇に立っている……恐らく、このクラスの担当教師であろう若い女性だった。


「あ、えっと……」


 羞恥からカリンは頬を赤く染めた。

 俺も、何とも言えない表情で彼らを見つめていると……


「いらっしゃい! 待ってたわ!!」


 1番に我に返った女性教師がこちらに近付いてきた。そして、俺達の片手を取り、ブンブンと思いきり振った。


「今年は2人も来てくれたのね! 嬉しいわぁ!!」


 ウフフと嬉しそうに笑う女性教師に、ポカンとした表情で彼女を見つめる俺とカリン。そんな女性教師に乗っかるように、他の生徒達も席を立ち、俺達の周囲に集まった。


「よく来たな! 歓迎するよ!!」


「これから一緒に頑張りましょうね!」


「君、昨日の新入生代表で(ドラゴン)を召喚した子だろ?」


 優秀なクラスと聞いていたから、お堅い奴らばかりだろうと思っていたが、意外とフレンドリーや奴らが多いようだ。


「私も、君達が同じクラスに入ってきてくれて嬉しいよ」


 そう言って俺達の前に現れたのは、昨日の入学式で在校生代表挨拶をしたアリナ・フィルムンドだった。


「カリン・ヴィギナー、ライ・サナタス。私達は、君達を心から歓迎する」


 炎のような紅い瞳を向けながら、彼女はそう言った。

[新たな登場人物]


◎カリン・ヴィギナー

・肩に付く程度の髪の長さ。髪色は、明るい紅赤色の〝梅重色〟。数多いる女子生徒の中でも目立つ低身長が特徴の少女。

・負けず嫌い。

・蜥蜴族特有のゴツい尻尾が付いている。

・ライが気に食わない……?

・人には言えない、ある秘密を抱えている。

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