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かつて世界の破滅を願った魔王は転生世界で何を願う?  作者: 零珠音
特別クエスト『熱血王子を護衛せよ』 編
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88話_いざ、未開の地へ

 鬼人(オーガ)族は、大きく分けて4つの部族で構成されている。

 王都を中心とした位置から、4つの部族は丁度、東西南北と綺麗に離れた位置にある。

 東にはサイリュウ族、西にはソウリュウ族、北にはゲンリュウ族、そして……俺達が今回、訪れるセイリュウ族の村は、ここから南の方角にある。

 元々は1つに纏まっていた部族が、個人の力の格差や考え方の違い等での衝突を繰り返した末、現在の形に落ち着いたのだというが、だからといって部族間で仲が悪いわけでは無いらしい。

 基本的に、鬼人(オーガ)は部族間での繋がりを大事にしている反面、それ以外の者を無条件で敵視する者が多い。

 俺とリュウが依頼で出会ったソウリュウ族も、どちらかと言うと、上記の性格を有する者が多い一族だったようだが……村を襲われ、代理の長(ヒメカ)がギルドに依頼書を提出するほどに追い込まれていたからこそ、あの時、俺達は彼らに受け入れられたのだと思うと、なんとも複雑だ。


 改めて、情報を整理する。

 これから俺達が向かうのは、4つの鬼人(オーガ)部族の1つ、セイリュウ族がいる村。

 リン曰く、セイリュウ族は鬼人(オーガ)族の中でも珍しく、余程のことが無い限り暴力を振るわない、所謂、平和主義寄りの思考を持った者が集う一族らしい。

 こちらとしては助かるが、それはそれで鬼人(オーガ)として如何なものか……だが、面倒事を避けられる可能性が高いというのは非常にありがたい。

 以上の予備知識を踏まえ、俺達は最早お馴染みとなった転送装置へと足を踏み入れた。

 ただ唯一、馴染みで無いのは、いつも俺達を見送ってくれているリンが、今回は俺達と共に送られる側になっている事だ。


「行ってらっしゃい。どうか、お気をつけて」


 ちなみに今回、俺達を見送ってくれたのはデルタだった。


 ◇


 ギルド内の一室の景色から一瞬の闇に包まれた俺達の目に飛び込んできたのは……森の中、だろうか?

 立派な木々で囲まれた空間の中心には花々が互いの色を競い合うように小さな花々が咲き誇っている。

 クスクスと笑っているかのように微かに揺れる花々に降り立った小さな虫達が各々の羽を折り畳み、安心したように身を委ねている。

 現実との境い目が曖昧になりそうなほどに幻想的な風景に、各々が声を漏らした。

 勿論、花も気にはなったが、それよりも俺が気になったのは足元の〝土〟だ。

 表面上に水分が全く感じられない。軽く地面を蹴ると、砕けたビスケットのような脆い土の欠片が更に砕け、粉状になってしまった。

 よく見ると、花が咲き誇っている場所は見事に限られており、それ以外は雑草1つ無い見すぼらしい土壌ばかりだ。


(何故、同じ場所でも、こんなに違うんだ……?)


 疑問は出ても、残念ながら植物に関しては詳しくないため、予想すら立てられない。

 誰かに問いかけようにも……


「……美しい」


 恍惚とした表情で花々を見つめるアンドレアスを始め、彼の呟きに同意するように頷くアランとヒューマ。

 そして、あのローウェンでさえ感嘆めいた息を漏らしている。

 こんな状態では誰に聞いても、まともに答えは返ってこないだろう。

 しかし、そんな中にも、彼らとは違う反応を示す者達がいた……リュウとリンだ。

 2人は揃いも揃って、困惑した表情で小さな花畑を見つめていた。


「…………こんな場所、あったっけ?」


 案内人でもある筈の彼女の口から耳を疑うような言葉が聞こえて思わず戸惑いの言葉を漏らすと、リュウがジリッと僅かに後退した。

 まるで、目の前の花々に怯えているかのように。


「どうした、リュウ?」


 明らかに様子がおかしい彼に問いかけると、彼は震えた声で小さく呟いた。


「……早く、ここから逃げた方が良い」


 リュウの言葉に、リンと顔を見合わせて首を傾げた。

 こんなにも長閑(のどか)な空間に、そこまで怯える存在がいるとは到底思えないが、彼がこんなにも恐怖心を露わにしているところを見ると、やはり()()がいるのだろう。


 ────フフッ、フフフフフッ♪


 突然、気味が悪い笑い声が、そこら中から聞こえてきた。周囲を見渡すが、俺達以外は誰もいない。


「……っ、王子、お下がりください! 信じられませんが……この奇妙な声、花から聞こえているような気がします」


「え、それって……つまり、()()()()()()()という事ですか?」


「いやいや、そんな御伽話(おとぎばなし)じゃあるまいし……」


 ローウェンとアランの言葉を否定するように、ヒューマが大袈裟に首を左右に振った。


「御伽話なら、どれだけ良かったか……」


 静かに呟いたリュウの額には、少量の汗が浮かび上がっている。

 そんなリュウの言葉を拾ったヒューマは怪訝な顔で彼を見つめた。


「それは、どういう……?」


「っ、来るぞ……!」


 何かを察したリュウの言葉とシンクロするように色鮮やかだった花々が、警告色のような毒々しい赤へと一気に染まったと同時に、本能で危険を察知した虫達が、花から一斉に飛び立った。


 ────警告、警告! 7名の侵入者、発見!


 ────これより、排除状態(リムーブ・モード)へ移行!


 毒々しい血液のように真っ赤に染まった花々は光を灯し始め、次第に目を開けることすら困難なほどに強まっていく。

 あまりの眩しさに完全に目を閉じると、近くで何か巨大なものが(うごめ)くような音が聞こえるが目が開けられないため、その正体は分からない。

 だが、これだけは分かる。

 〝何か〟がいる。しかも、とてつもなく大きな何かが、この目蓋の奥に……っ!


 ────グルジュァァァア゛!!!


 耳を塞ぎたくなるような不快な音に、堪らず目を開けた。

 眩しさは無かった。無かったが、その代わり……とんでもないものが目に映り込んだ。


「な、んだよ……あれ……」


 誰もが目の前の光景に絶句する中、唯一、ヒューマが皆が心に思っているであろう言葉を代表して吐き出してくれた。

 俺は、先ほどまで可愛らしい花々が集った長閑な景色を眺めていた筈だった。

 それなのに……何故、俺は今、恐らく5メートル以上はあるであろう巨大な花に見下ろされているのだろう。

 いや、そもそも花なのか、あれは……?

 少なくとも俺の知っている花は、頭花を口のようにパクパクと動かしながら、肉食獣のような無駄に尖った歯をチラつかせる生き物では無い、絶対に。


「…………〝縄張り花(テリトリーフラワー)〟」


 覇気の無いリュウの声が、やけに鮮明に聞こえた。

今更感がありますが、ようやく本格的に物語に介入し始めたので、この場で、ご紹介↓


[新たな登場人物]


◎リン・セイリュウ

・セイリュウ族と呼ばれる鬼人の1人。

・基本的に鬼人は村から出ないが、彼女は例外のようで王都のギルドで働いている。

・透明感のあるハイライトグレージュ色の髪に、黄色がかった薄茶色のはしばみ色の瞳。

・額に1本だけ控えめなツノが生えている。

・誰も触れないため表記されていないが、身長は149センチ。女鬼人としては、かなり小柄(彼女のコンプレックスでもある)。

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