10act7 楽園を追われた花嫁と堕ちた天の翼
こんばんはおはようございますこんにちは
いやもう暑すぎじゃ!
物語では冬なんだけど!
ってことで10章act7です。
半月の刃が迫る。
この時点で気づくべきだったのだ。
罠だと。
俺達四人の首が飛ぶ。と思っていた。
「っ??」
カオルだ。
カオルが気流を作って受け止めていた。
その赤い瞳は蒼に染まっていた。
ガキン!!!という金属のような音と共にカオルは月島、姫野、赤石を吹き飛ばした。
「大丈夫?!」
カオルは俺達に言う。
「ああ、ありがとう…助かった」
「ふ、不意打ちなんて卑怯よ!それでも生徒会かしら!」
パトリシアの言い分はともかくだが不意打ちは卑怯すぎる。
「ひっかかると思ったんだけどな。私これでカイトさんを貫いたのに」
月島の悪びれもしない言葉に俺は声を絞り出す。
「それは…説得するためにあなたに近づいたんですよ」
「ふぅん?説得ね。なんで?」
「なんで?って。だって月島先輩は」
「私が想っている人はファルシさんだけなのよ」
「は?」と俺。
「な、龍太どういうことよ…?」
「龍太、君の話ではたしか会長は…」
「あぁ…」
月島と音羽は恋人のような仲だったと。
「ところでカイトさんは? どうしたの?」
赤石が口を開いた。
「もうすぐ、死んでしまうかもしれない」
俺の言葉に生徒会の三人は楽しそうに笑った。
「…やっぱりああしたほうが正解だった」
「やぁ~果夜の色仕掛けも上手く行くんだねぇ」
「変なこと言わないでよ~」
「もういい。もう…だまれ」
ぽつりと呟いた俺の言葉に三人は口を閉じた。
「なにか言った?」
「だまれった。お前らを倒す。俺達が」
俺は拳を握り魔力を迸らせる。
「へぇ…」と月島は意外そうな顔をした。
カオルも杖を構え、パトリシアも臨戦態勢に、余語も銃を構える。
「いくぞ!!!」
俺の合図に三人は返事をする。
「うらぁぁぁっ!!」
真っ先に狙いにいったのは姫野だ。
だが骨の鎧に阻まれる。
「…効かない」
「どうか、な!」
俺は思いきり拳を叩きつけ爆発させ少し後退させる。
俺はノックバックでふわりと下がる。
「志郎!!!」
「やぁーーっ!!!」
鎧と鎧がぶつかり派手なインパクト音が響く。
「二人とも!!」
余語もノックバックを利用する。
「「はぁっ!!!」」
カオルとパトリシアが杖を構えて姫野の骨の鎧に向かう。
「させないって!」
赤石が水晶で妨害してきた
「カオル!!」
パトリシアがその水晶を破壊する。
「セァァァァッ!!!」
杖から放たれた光の剣を後退させた怪物の骨に向かってカオルは力づよく振り抜かれる。
バキッ!!!という割れる音が響く。
《アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!》
骸骨の怪物があばらを抑えながら初めて痛みに叫んだ。
「…っ。バロム」
姫野に呼ばれた骨の怪物。バロムというらしい。バロムはすぐにカオルに向かってカオルに連続拳を叩きつける。
だがカオルに当たっているはずなのにカオルはケロリとしている。
「まさか!」
月島は気付き光の燐光をまく。
カオルはそれに気付き風を巻き起こす。
俺はカオルの風をさらに制御しそれを月島に投げる。
月島は高速の剣技で切り裂く。
「屈折ね?」
「さすがは光使い…。カオルは屈折をすることによって姫野の技を避けていたんだ」
「へぇ」
「やっ!」
「わっと」
そのまま月島にも剣を振るが月島はあっさりとかわす。そこから月島も反撃してきた。
杖から放たれる光の剣。その剣筋の制度はカオルよりも凄いものがあった。
「あはっ」
剣の光が一際大きくなり
「っ!カオル!剣を立てに防げ!!」
「!?」
瞬間、見えない剣撃がZを描くようにして軌跡を描いた。
カオルは高速で二撃を放てるが月島は三撃放てるのか。だがバッ!と月島は手を開き、何か線と平面のような光が出る。
「志郎!!!」
呼んだと同時に余語は銃弾と浮かぶ剣を放ってくれた。同時にバロムの拳を受けとめた。
放たれた銃弾と剣は月島へととんでいく。月島はそれを落とそうとして光の線がひらりと舞うが銃弾は月島の足元へ剣は俺の手に収まる。
「?」
その線を俺は剣で切る。
銃弾は囮だ。0,5秒でも意識をずらしたなら成功だ。
目的は俺達から意識をそらすこと。
それに気付いた。
が遅せぇよ!
月島は背後から青の炎をくらった。
「がはっ!!」
月島は倒れるが受け身をとりすぐに立ち上がりパトリシアに光のラインを打ち出す。そのラインはパトリシアは紫の魔法陣で受ける。
だがパトリシアはここでは無防備だ。赤石と姫野の攻撃が迫る。
「いくよ!」
カオルが駆ける。疾駆する。普段よりずっと速い。
ネメシスからのプレゼントを今使ったか。
両足に風を纏うことで、とんでもない速度を生み出している。カオルが貰ったネメシスからのプレゼント。それは靴だった。効果はどうやら足場に自身の魔法を展開できるというものだった。いわゆる助走や加速、跳躍と行った行動にとんでもないくらいのエネルギーを加えられる、らしい。
そのまま姫野、もといバロムの顔面を蹴りあげ、着地しソニックブーストでパトリシアにぶつかり抱えて水晶の槍を回避、パトリシアは炎を撃ちまくり爆炎を作り回避速度を上げる。
「龍太くん!!」
カオルに呼ばれた理由はわかった。
俺は爆炎の中から飛び入る。魔法を使うことで炎を受けることはない。中から飛びだし目の前にいた赤石をそのまま重力を最大にした拳を顔面に叩き込む。
赤石はそのまま吹き飛び壁に叩きつけられる。
バロムの拳が降ってくるが
真っ白な光に突如包まれる。余語の放ってくれたフラッシュグレネードだ。
一瞬で狙いが逸れたバロムの拳は地面に叩くだけに終わる。
「あはははは、面白いよ。やるじゃない」
月島は拍手する。
そのままカオルは勝負を決める気だろう。一気にまた疾駆した。
月島も構えを取りお互いの剣がぶつかり合う。
鍔迫り合いの中
「あなた、ほんとに月島先輩?」とカオルが口を開く。
「突然なんなのよ?」
「だって、龍太くんの話と違うから」
「どっちだと思う?」
「違う」
おどけた口調で言う月島にカオルは即答断言した。
その態度に月島はたじろいだ。それを見逃さなかったカオルは
「姫野先輩も赤石先輩も違う!三人は誰」
いくら俺の話が違うとはいえ、この三人は三人かもしれないのだが、だがカオルは何か確信でもあるのだろう。煙から水晶の針が飛んできた。カオルは気付きかわす。
「と、まぁカオルは言うが先輩達、まさか?」
「意外とすぐにばれちゃうものなんだね」
月島、いや月島の姿をした何かは言った。
その瞬間、
「龍太くん!!」
カオルが反応した。
俺の目の前に、吹き飛ばしたはずの赤石がいたのだ。
「うっらぁ!!」
さっきとは比べれないくらいの威力の水晶の塊が床を抉っていた。
「くっ」
なんとかかわすが、そこから体勢を直すのは厳しかった。水晶の刃物に頬を切られた。
「龍太くん!!今い―」
「君の相手は私でしょ?」
カオルが月島に阻まれていた。
姫野も何かまた雰囲気をすでに変えていた。同時にバロムと呼ばれた怪物も頭を押さえていたが瞳の部分が赤黒く光、落ち着いたと思いきや拳を乱雑に振り上げてきた。
三人は突如謳い出す。
《紅の夢想に揺蕩い、微睡む者達よ》
《真実の深淵から闇底を見つめ、己が持つ欲望の姿を見つめてみよ》
《そこには真心を満たす法悦境を焦がれ求める汝の姿が見えよう》
《夢現か真生か。さあ、我の腕に抱かれなさい。
苦痛か快楽か…。さあ、我の陰に埋ずめなさい》
《我に身を任せ、我の思いを感じてみよ》
《何人であろうと、例え悪魔であろうが我は受け入れよう》
《自由を欲望と呼び、性に優劣を付ける神よ》
《我は決して認めぬ!冥府魔道にて永遠に抗おう》
《我が名は《リリス》《アスタロト》《イザベル》。
イヴよりも早くこの世にいでし、アダムの片割れ。
イヴに無き自我と欲望を持つがゆえに、楽園を追われ、 王の花嫁になりし冥界の女王なり》
その謳で理解した。
こいつらは悪魔だと。
正確には悪魔の魂が三人の身体を我が物としているのだ。
赤石はアスタロトに。
姫野にリリスに。
月島はイザベルに。
「悪魔ですって??」
パトリシアも表情を固くした。
「そう。…ちょっと気付くの遅かった?」
リリスが口調はそのままだが中身はごっそり違う。
彼女は手を開き魔法陣が浮かぶ。
「黒魔術?!三人共あれを見たらだめ!!」
パトリシアの言葉に俺達は視線を外すが。バロムの拳が余語を吹っ飛ばしてしまう。
「あなたの運命は…大丈夫。私のドールにしてあげる」
リリスはにこりと笑う。
「そらそらっ」
赤石の姿をしたアスタロトが瞬間移動をした。
パトリシアの首を掴みにそのまま床に崩し押した。
「ふっ!」
月島の姿をしたイザベルが
カオルを一刀にしようとするが、それでもなおカオルは食らいつく。
「…?」
イザベルが眉を潜めていた。リリスは運命を司り、アスタロトは戦を司りイザベルは剣を司るのだろう。
そのポテンシャルと身体本来の持ち主の魔法と合わさり俺達の力を上回った。
そして恐らくだがこの悪魔の三人はあのファルシの部下かあるいは妻の役割を持っているんだろう。王の花嫁って辺りで予想があった。
この人間の三人はファルシの目的のために巫女となり悪魔の魂をおろされた。
だけど
「悪魔の独特な力をもっても、これには驚くだろイザベル」
「なに??」
イザベルの疑問。
「いくよ!!!」
それはカオルの言葉が合図となり証明された。
カオルの持つ光の剣は風を纏い金属質を帯びる。
背中には一瞬、白い天使の翼が見えた。
イザベルが一瞬それに怯み、光の剣を構え振るう。
カオルも同じ。剣技はイザベルのが速かった。
しかしカオルは三撃をぶつけ合い、さらに四撃、五撃目をイザベルの肩から身体へバッサリ切り裂いた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」
切り裂かれたイザベルの身体に星の形が描かれていた。
「ぉぉ、クインテット…」
俺は軽く廚二っぽいことを言ったがらしいとも思った。五重奏とも言うがカオルの繰り出した連撃はまさにそれだった。
リリスとアスタロトも何が起きた?と思っているだろう。
「アスタロト、仕返しよ」
パトリシアがさっきアスタロトにされたことと同じ事をしていた。
「あ、これは龍太の分ね」
と押さえつけた頭に黒い魔法陣で思いきり床と一緒に赤石を潰していた
ちなみに余語は痛い…と言いながら起き上がる。
バロムに吹き飛ばされたから心配だったがやっぱ防御はチーム1らしい。無事である。
同時に杖も構えていた。
「龍太、大丈夫かい?」
「悪い、ちょっと切られた」
「半覚醒なのに無理するから~…」
お前に言われるとは思わなかったが、まぁ事実だ。
一方、カオルとイザベルは一騎討ちをしていた。事実上のカオル対月島の真剣勝負と言っても過言ではないだろう。
ちなみに余語が見据えているのはリリスではなくバロムのほうである。
「あれをどうにかしないとな」
「たしかに…なぁ志郎」
「なにさ」
「いっそリリス口説いてみたら」
「え」
「いやだから、あーリリスって運命を司る愛の悪魔みたいなやつなんだ。たしか」
「たしか?」
「いや知らん。運命司るのはたしか。だからワンチャンお前が口説きゃあっさり」
「いくわけないだろお前が」
「俺がいくわけないだろ」
とか二人でバカな作戦を練ってる間に バロムの拳が降ってきた。
あのバロムをどうにかしないと本人に攻撃を与えれないのである。ある意味最大に難関な相手だ。
リリスをなんとかしなければイザベルやアスタロトには決定打を与えれない。
だから、カオルはイザベルを。パトリシアはアスタロトを引き付けているのだ。
二人の悪魔はバカではない。いずれ倒されないために何か策を打ってくる。そうなるまえに
「倒す」
「なにを?」
「あの怪物を」
「まじで?」
「行くぞ!」
「いやでもどうやってって…あああ、聞いてないのね。わかった~」
と余語はため息をつき、駆け出す。
降ってきた拳を余語は銃弾を放ち位置をずらす。
俺は杖を構えそれをハンマーのようにバロムのあばら骨を吹き飛ばす。
再び拳を放ってくるバロムに余語は銃弾を放ち軌道を反らす。
何回か繰り返す。多分余語無しではできなかったであろう。ついにバロムが紫の炎を放ちながら崩れたのだ。
「志郎!!」「龍太!!」
俺達は背中合わせに構え放つ。
俺は重力弾。余語は魔法弾。リリスに向かって放つ。
イザベルとアスタロトがそれを防ぐために弾に向かって飛び出すが、カオルはイザベルに組み付き、パトリシアはアスタロトの足を自らの尻尾で転ばし、二つの弾丸はリリスに命中し
「うそ…でしょ…」
そんな声と共に倒れる。
「リリスが破れるなんて…」
アスタロトが呟く。
「あなたもさっさと寝なさいな」
パトリシアはアスタロトの頭をガツンと叩く。
「身体の自由が…!?」
そして倒れる。
リリスとアスタロトを倒したぞ。
「っ!!!アスタロトっ!私はまだ!」
イザベルはまだ諦めてないないようだった。
「まだよ私はまだよ!!」
「な!?待てっ!」
イザベルはダッと背後に走りさらに奥の部屋がある階段を駆け上がって姿を消した。
「ああ逃げられた!」
「追いましょう。きっとこの先にあいつはいるわよ」
パトリシアの言葉に俺は頷く。
俺は階段を見上げる
「龍太くん」
カオルが俺の名前を呼ぶ。
「うん、行こう」
俺達は最後の階段を上る。
ずいぶん長い階段だった。
「え…?」
最終階段を上った最奥部。
俺達は奇妙な声を上げた。
「ここ城、だよな?」
「多分?」
その場所は天球儀の中にいるような丸く広く、足元は薄い水溜まりだった。
「やぁ、よく来たね」
その声に俺達は気づく。
「ファルシ…!てめぇ」
「おぉっと?そんな怖い顔をしないでくれたまえよ巫凪くん」
ファルシの前には大きな水晶があった。そこには
「ルシエルちゃん!」
ルシエルが動かぬ姿のまま入っていた。
「どうやってルシエルを捕まえた?」
「簡単さ。以前から誘き寄せて吸わせていた魔力を…まぁ作ったんだけどね。それを吸わせたのさ。効果があるまでだいぶ時間をかけたよ。一種のコンピューターウィルスとでも思うといい」
「ウィルス?」
「そう。これも入手にはだいぶ時間がかかった。今これは僕の思うままであり全てを掴むための最高のオプションなのさ」
「…悪びれないってことは俺やカオルを殺そうとしてダークマターを行ったのも生徒会を俺達に仕向けたのも、あの棺桶の中身と一緒にあった資料もお前の仕業か」
「全て肯定しよう。そうそう巫凪くん。君が中学生の時、異国の人間がある二人を捕獲するために攻めてきたこと知っているかな?」
「…あぁ」
「あのあと失敗した船は帰国中に消息を立ち海へ沈んだ。それは?」
「知っている。だが突然沈没したとニュースになった。乗組員の安否は良くなかったともあった」
「あれを沈ませたのも僕さ」
「な?!」
この話は俺や葉山しか知らない話だったがあれを沈めたのはこいつだったのか。
「その話はわかったわ。なんのために学校にここまでのことをしたのよって聞いているのよ」
「僕が前なんて言っていたか覚えているかな?」
「…?」
パトリシアは首を傾げたが俺はわかった。
「世界は行き詰まっている、だな」
「そう、よく覚えていたね。僕ら人類は魔力なるもの、いや魔法という技術を手に入れた。でも、その力は通常技術の延長でしかなく迫害されぬよう一ヶ所に集められて怯えながら暮らすことで自分達は変わらないと主張することでしかできない」
「だから、魔法を使えない人を見捨てて魔法使いだけで生きようってことか」
「見捨てる?巫凪くんらしくない。そんなことはしないよ。彼らは礎になるのだから」
同じ事だろと思ったが言わなかった。
「僕はかつてね、魔法使いをも礎にしているのだよ」
「魔法使いをも?」
「…魔女狩りというものを君達は知っているかな?
今の世代では知っている子供は稀だろう。むしろ調べもしない興味もないだろう?とくにそこの君にはあり得ない話になるね」
パトリシアを見やって言った。
魔女狩り…
ヨーロッパ中世末の15世紀には、悪魔と契約してキリスト教社会の破壊を企む背教者という新種の「魔女」の概念が生まれるとともに、最初の大規模な魔女裁判が興った。そして初期近代の16世紀後半から17世紀にかけて魔女熱狂とも大迫害時代とも呼ばれる魔女裁判の最盛期が到来した。
「という話さ。まぁヨーロッパに限らず長い時間の中で魔女はたくさんいたんだよ。4万人くらい私刑にしたかな。まぁそれでも大きい戦争や戦後にも魔女は現れて道具になってたり奴隷になってたりとか戦に貢献して、とかいたんだけどね。ちまちまと、ね?」
「んで、地道に潰してたらそこから気付いたら魔女はいなくなっていたんだな」
「そう。僕としても惜しんだよ。ぁあかわいそうにね?と。仕方なくだったからね。でもある日だ。何の災害の拍子かは知らないけど魔女が現れ始めた。いつからかは僕もわからないけど確認がされたね。それも魔女、ではなく男性にまでその兆候が起きた。この日本にね。それまで呼んでいた魔女から魔法使いと呼ばざる終えなくなったのさ」
「さっき惜しむって言いましたよね?それは自分の命ですか?」
余語の質問にファルシは嬉しそうな顔をした。
「いい質問だよ。僕は彼女達の命が惜しかったのさ」
「???」
ますますわからないぞ。
わかるのは魔女を悪と言って殺していたという事実だ。
「それで今回もまた僕は動こうとはしたんだよ。だけど今回ばかりは手が出なかったのさ」
「異界の世界が開いたから…」
パトリシアの言葉に
「そう。そこから出てきたのは数えきれないほどの魔法使い達だったからね」
「そして殺すのをやめた、と」
「そう。僕はあれが開いた時に感じたんだ。新たな世界がやってくる第一歩だとね。魔女狩りはやめて新たな世界を作る手順だったと。これまでの魔女狩りはこの時のためだったんだねって感激もした。だから決めた。そのために僕は時間と手間をかけて学校の教員になった。
まずは見合う人物。魔法使いを、中でも一際すばらしい身体と素質、適性、適質、魔力、霊力、妖力…さらに僕と波長の合う女性を探してね」
「それがあの三人か…」
「実はカオルもその四人目になるんだよ」
カオルがびくりと反応する。
「でもどうしてか。波長を合わすことが出来なかったんだよね。どうしてかな?」
「お前の見合う人物ってのはルシエルに関連があるからか?」
俺はカオルに向けられたファルシの質問をばっさり切って聞く。
お前はカオルに話しかけるな。そう言うように。
ファルシはやれやれと欧米人がよくやるジェスチャーをする。
「君も彼女との適質があるんだね」
「か、彼女?」
「彼女は彼女さ。君達がルシエルなどという訳の分からない名前で呼んでいるだろう?」
ルシエルって性別あったのか…。いや今はそんなことよりだ。
「まぁいい。僕は彼女からの適質からも選ばれた三人を見出だした。彼女達こそ僕と共に世界を変革する見届け人だからね」
「だけどそのままじゃ問題があった。そうね?」
「そう。だから中身と魂を染めてもらう必要があったのさ」
「それが神降ろしの全くの逆。悪魔卸しの魔術か…。仮説だが内面の性格はそのままだが魂そのものが本来の魂に噛ぶりつくようにして人格の魂に卸す」
「…巫凪くんは黒魔術にも詳しいのかな?。いや、いいか。僕は君には興味はないからね」
「この空中都市はなんだ?」
「空中都市?あぁ世界を見届ける城さ。見たことない構造だろう?この世界でも君が住む世界にもこの技術はない」
「どういうことだ?」
「それはこの世界の真理を知ることになる理屈になるのさ」
「この地球と私が住む世界とも違う。…まさかまた別の世界の…?」
「さすが女王陛下の娘、いい線を言っている。しかし…そろそろ時間だ。答える時間が惜しくなってきた。僕はパラダイムシフトを起こし僕を主とした魔法使いの楽園に変えるのだから。この空中都市とやらも使ってね」
「…どうやってよ?会長がどこにいったかは知らないけど、あなたが動くなら志郎があなたを射つ。攻撃してくるならカオルと私が返り討ちよ。逃げるのなら龍太があなたをまず逃がさないわ」
「一人一人ということかな?」
「そうよ」
「アカシックレコードを知っているかな?」
俺達は余語から聞いた話を思い出す。
ファルシは水晶に入れられて動けずにいるルシエルに手を触れる。
「知らないなら教えてあげよう。僕は全知全能になるのだよ。彼女は僕の知識の足りない力を補う最高の全能存在の一つの鍵なのだからの」
「全能存在の一つの鍵?ルシエルがアカシックレコードなのか?そもそもあるのか…。だいたい全能になってなんの価値がある」
「科学者に学の価値を問わないほうがいい巫凪くん。彼女は鍵だと言ったろう?」
突如としてつんざく音が響く。
俺達はそれに飛ばされる。
黒い奔流を水晶を通してルシエルが飲み込んでいく。いや飲み込まされている。
「ああ、ああああ…君を感じるよ!ああああ…君の中に僕が入っていくよ!」
やがて黒い奔流は赤黒く染まっていた。
ルシエルの青い瞳も赤黒くなっていた。
「さぁ僕と一つになろう。ああああ人の素材ではダメだった。魔法も魔術も。ならば人と神と悪魔の王の魂と異界の最高の魔の花を持った僕なら、受け入れてくれるよね?」
急に訳の分からないことを言い出したファルシが真っ黒い光に包まれルシエルもその光に巻き込まれる。
ファルシの姿が変化を起こしていた。ルシエルを自らに取り込んんだことなのか身体中がオーラに包まれ変化が起きる。
背には猛禽類を思わせる大きな六枚の翼、頭には角、瞳の色も赤黒く薔薇の模様が入った瞳へと。左手には杖、右手には赤黒く細いが異様な形をした槍だ。
手足も黒く染まり、足はもう怪物そのもの、そして左胸には赤黒く輝くガラスのような綺麗な花が鮮やかに開いていた。
「ああぁ……知識が、頭が、僕の中を知識の奔流が駆け巡る。流れていく知識が海のように雲のように空のように全ての知識が空をも越えて…!!!あああ!あああああああああ!!!あはははははははははは!!これが君が見た世界、君を見る世界、ああああすばらしい。天地がひっくり返りそうだ!!すばらしい!!」
恍惚と叫ぶファルシは俺達を完全に無視していた。
「三人とも!あの胸の花!」
カオルの言葉に俺達は驚く。
それは俺達が見知った花。
魔心花だった。
「なんでだ!?」
「あれは魔法使いには寄生しないんじゃ」
「本体は寄生できるかもしれないとしたら」
とパトリシアが言う。
パトリシアはこの事実をあっさり受け入れたらしい。
魔心花の本体はファルシを隠れ蓑にしていたのか?。
「あれが本体なのか…?」
俺の言葉にカオルは頷く。
「本体でしょうが違ったとしても、どのみち私は見過ごせないわ。あれはグリームよ」
パトリシアは杖とどこからか取り出した黒い大鎌を片手で振り回す。
どうやらパトリシアは戦う気満々らしい。
止めても聞かなそうだ。
「わかった。あいつを倒すぞ。だけど最初はルシエルとあいつを引き剥がすんだ」
「できるの?」とカオル
「わからない。だけどあいつはルシエルをアカシックレコードと言っていた。まずは引き剥がすほうが…いや、ルシエルをまず救出したほうが倒せる確率も上がるはずだ。パトリシアもいいな」
「わかったわよ」
「ならいくぞ」
俺は杖を構える。三人も武器を構え答える。
「「「了解!!」」」
俺達は全力攻撃でファルシ目掛けて魔法を放つ。
「おや?まだいたのか君たち?」
魔法を翼で防ぎ、胸の花が鮮やかに光る。半円の紅い何かが円錐形に広がり俺達を吹き飛ばす。
俺達はすぐに立ち上がる。
「志郎!」
「龍太?。わかった!」
俺と余語の視線は一瞬だった。
杖と銃をガン!とぶつける。大きなエネルギーの塊ができあがり杖から俺は魔力をその中へ撃ち込む。
「今だ!!」
「いけぇ!!」
「「魔弾ミストラル!!!」」
合図と一緒に余語が銃のトリガーを引く。大量の重力弾と魔力を帯びた弾丸が何百と飛び出しファルシに向かって打ち出す。
余語と俺の合作魔法技だ。
それにファルシが初めて反応した。
ファルシは翼を広げ飛ぶ。
速い。カオル以上か。
パトリシアもカオルも火炎弾や光の光線でファルシを狙い撃つ。
「そんな穢らわしいものを見せびらかすな」
ファルシは俺達の技をかわしながら、槍から魔法陣を展開し、そのまま?いや突っ込んできた。
まずい!と思った時にはファルシは目前にいた。
パトリシアが巨大な黒い魔法陣を展開しながらそれを防いでいたが、そのまま吹き飛ばされる。
「パトリシア!!」
余語が叫んだ。あのままじゃ勢いを防いでも余語がやられる。俺はパトリシアが吹き飛ばされた瞬間に防御に入った。が、
「重、い…!!!なんだこれ…!」
「そんな半端な力で僕を止められると」
「半端、半端って、人が気にしてることをいってんじゃねぇくそが……!」
だがなんだこの力、異常すぎる!。花があの槍に力を与えている?。考えている余裕はないもう持たない!!。
「はぁッ!!!」
カオルが空中にいてそのまま剣を銀に染め上げファルシに斬りかかる。
ファルシはこれにも反応しその技を避けた。
避けたおかげで、なんとかあの突き技から逃れれた。
避けたところをカオルは間髪入れずに息を吸い込み風のブレス、天空の咆哮を撃ち放った。
ファルシはかわしきれずに翼の一枚に大きな穴が空いた。
地面に着地する。ファルシは翼を見るだけで何も思わない顔をした。
「こんの…やってくれるじゃない」
パトリシアは瞳をギラギラさせて飛ばされた壁から出てきた。
「隙を突けたと思ったんだけどね」
「よく言うわね。聖弾に怯えたくせにね」
聖弾?ってあれか。邪悪な奴が嫌う聖水とかああいうのか。あれを余語は弾丸に混ぜたのか。
やたらと余語狙ってんなとか思ったけどそういうことか。
「あんな汚いものはお断りだからね」
「汚い?どういうことだ」
俺の疑問はパトリシアが答えた。
「おかしいとは思ったのよ」
「だから、なにが?」
「名前よ。ファルシ・リキスト。教会に喧嘩でも売ってるの?」
「さて?なにがかな?」
「ファルシ・リキストなんて言葉のアナグラム。こいつは冥淵の王。堕ちた天の翼。ルシファーよ」
「ルシファーだぁ?」
ルシファー。
よく物語やキリスト教会の聖書に出てくる悪魔の王様。一言で言えば物凄くやばい敵だ。
俺の言葉にファルシ…いやルシファーは笑った。
「ああ言っていなかったね。僕はルシファーだとも。リキストなどという苗字も遊びさ?。キリストと読めるだろう?」
「なんで悪魔がここに」
「愚問だよ。昔からいたさ。ずっとね。僕は寿命を終える度に僕の魂は選ばれた人間に移りは入る。全ては全てを手にし、僕の理想を作るためにね」
「だからルシエルを犠牲にしたのか」
「それだけじゃないわよ龍太。ルシファー…その槍は何?」
パトリシアはルシファーが握る異様な槍を指した。
「ああこれかい?これは僕の槍さ」
「あの槍って?」と余語。
「神器ロンギヌスの槍、私達の調査で元々保管されていたんだけど、数十年くらい前にこっちの鑑定士が調べて偽物だってわかったのよ。おかげで本物の調査対象にもなったわ。本物は私達の世界でもこの世界でも作ることはできない。そもそもどうやって誰が作ったのかわからないミーティアよりも謎がある。アーティファクトとも言われてるわ。神を突き刺した槍。本物、あなたが持っていたのね」
キリストは十字架にくくりつけられ槍で突き刺され見事にキリストは復活した。
その物語の中に出てくる槍がロンギヌスの槍と呼ばれている。この槍は実在している。だがたしかに数十年前に偽物だと発覚しニュースにもなっている。
「素晴らしい出来だと思わないかい?」
「思わない。あなたが持っていていい物じゃないわ」
「これは辛辣だな」
「あとルシファー、お前なんで魔心花を持っているんだよ。その花は異世界の花でお前には無縁の代物だろ」
「ん?ああ…。実にいい質問だよ。やはり巫凪くんはおもしろいねぇ」
それはパトリシアに対する挑発にも聞こえた。
「僕も死にかけることがあってね。この花はね。その時に出会ったのさ」
「出会った?」
「うん、出会った。花もなぜか弱っていたようだし、あれはよかったねぇ」
パトリシアがその言葉に思いきり床を蹴りあげた。
何かを知っていて、何か因縁みたいなのがパトリシアにはあったのかもしれない。
物凄い速度でルシファーに鎌で攻撃しにかかる。
「パトリシア!!罠だ!」
だが俺はルシファーの言葉は明らかにパトリシアを挑発していた。知っていたのだろうか。確認する術はない。
「龍太くん!!」
「ああ!志郎!」
「わかってる!」
俺達三人はパトリシアの援護に回る。
「さあ、僕の知識を君たちで使ってあげよう」
そう言うルシファーの言葉。
複雑な魔法陣があっという間に形成された。瞬間、余語の肩から血があふれでた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
最終戦、真っ最中です。
いつものネタバレですが
四人と互角に渡り合う悪魔達がでてきました。
なにげに熱い展開を書いている気がします。
そしていよいよラスボスポジションも登場し戦闘状態。
あと三話で物語は終わってしまいますが終わりが自分も楽しみです。
では今回はここまでです!
次回は10章act8になります!
ここまで読んでくれてありがとうございました!




