第3章act2 森宮の街
前書きにいつも悩んでしまいます。
なんか前にも似たようなことを書いてるような笑
ここで再び今へと戻る。
「まぁ、そんなわけで結成に至ったんだよ」
「そういえば、たしかにあの頃はきっかけが難しかったからバトルで組むのが一番だったのよね」
「パトリシアに至っては素直じゃないからな」
「けどまさかその後に俺誘われるとは思ってなかったよ」
「まぁアベレージだったしな。何よりお前あの時、パトリシアに絞ってたしな」
「あれ、気付いてたの?」
「見りゃわかる」
「パティちゃん知ってた?」
「あー…なんか視線あるわね。なにかしらとは思ってたけど。そう考えるとリンクとか相性は大事ね。組む相手によって技も体術に大きな影響を与える」
「あの火炎玉は驚いた。しかもパトリシアまだあれ半分も本気じゃなかったしな」
「それならあの暴風には驚いたわ。あれカオルの影響でしょう?カオルに至ってはイメージ力で光をレーザーに変えれたものね」
「制御がすっごく大変だった!」
「カオルは魔法の幅が広いからな」
「三人いいなぁ。俺ようやく出番増えたのにまだバトルすら出てなかったし」
「志郎はこのあと出たじゃない」
「戦闘面は少ないけど」
「だが俺達がバトルの特訓を始めたはいいが、事件は待ってくれなかったし」
「いよいよね」
「ああ、パトリシアが、魔族がこの世界に来た理由もな。たしかパトリシアはここと縁が深いんだったな。そこまでが長いなぁ」
「結構俺達の会話気にしてたよね」
「気にしてないわよ、会話がちょっと耳に入っただけよ」
パトリシアの言葉に余語が言う。
「うん、わかってるよ。何よりパトリシアは誰よりも努力家で天才ですごい子だって、誰よりも俺が知ってる」
「…な?!べ、別にそんな…私は天才なのよ。努力なんて別に……でもたまには言葉にしておくわ。志郎ありがと」
余語が眩しそうな表情でパトリシアを見ていた。
そんな光景を俺達も見守った。
たった何気ない些細なことがここでは人のきっかけになるんだと。
~~~~
「あ、見てみて、この花。きれいな花だよ」
「ガラスみたいな花だな、カオルは花に詳しいのか?」
「ちょっとだけ?でもこの花は知らないなぁ。新種なんだっけ?」
「みたいだな。ほんと変わった花だよ」
「ねぇ学校の外にはこの花、まだまだあるのかな?」
「え?」
「学校の外だよ。この学校って広いから外にでなくても基本的に必要なのは揃うし満足しちゃうでしょ?」
「そうだな」
土地がやたらとても広い場所だからな。
「だからみんなあまり学校の外にはでないんだよね?」
「たしかにそうだ。届け出はいるけど禁止ではないんだよ。ってカオルもしかして久々に出てみたいのか?」
「え?うーん、そうだね。一回出てみたいかも」
「そうか、それなら一回一緒に行ってみようか」
俺の提案にカオルは驚く。
「え?一緒に?いいの?」
「もちろんだ」
ってことで俺とカオルは…、これはデート…か?
え?デート?デートぉ!?
に行くことになった。
~~~~
「あ、パピーちゃんだ。何してるの?」
「あら、カオルじゃない。ちなみにパトリシアよ。私はなにもしてないわよ」
魔法陣の勉強をしていたなんて恥ずかしくて言えない。天才であるべきなのだから。天才は努力しない。月炎の黒魔女、天才魔女と二つ名を持つ自分には、努力せずともできるのだ。
そうでなくてはならない。
同時にとある花について調べていたりもしたが花はまた後日にでも話そうと思案する。
「カオルは何をしているの?何だか楽しみな顔ね」
「龍太くんと、出かけることになったの!」
「あら?デート?」
「デート?うん?デート、だね」
「なるほどね」
私はこの子はデートの意味を理解してるのかしらと思考する。
「カオルはデート、意味知ってる?」
「気になる男の子とでかけること?」
「なんで疑問系になるのよ」
「あ、パピーちゃんもデート誰かとするの?」
「しないわよ」
「しないの?」
するもなにも相手がいない。いや、最近下駄箱になんやらラブレターが入っているからしようと思えばできるのかもしれないが、生憎と安く見られた感じがしてしたくないのだ。
口にはしないけれど。
ラブレターの代わりに奇怪な視線もあるが、まぁこういうものかと妥協している。後にこれが余語だと気付くのは割りとずっと後になってからだ。
話を変えられた気がしたので話題を変える。
「デートってのはね、好きな人に使うのよ。貴女、龍太をどう見てるの?」
「わわ私?、龍太くんは優しい、時々なんかバカっぽいけど、なんだろう。見てくれてる。そんな感じがする。好きかどうかって考えると…それは、……ぁ」
もじもじと言葉を続けていて、微笑ましく感じたがパトリシアは目を閉じ今はまだいいかと考えた。
「ま、今はいいわ」
パトリシアはカオルの思考を遮ることにした。
「????」
「私も恋愛はあまりわかってないし、ゆっくり考えてみるといいわね。時間はあるし、これからも貴女は龍太と組んでいくんでしょう?」
カオルがそれに頷くのがわかった。
パトリシアは窓の外を眺めて考える。
この二人、巫凪とカオルは見ていておもしろい。恋愛に関してはパトリシアも浅いが、強制リンクした時に感じたのだ。二人の中のリンクに入ってなんとなく感じたものだが、この二人は淡くて甘く苦く眩しい絆を感じた。
「うん、そうだね」
「!?」
急に大人びたようなカオルの声にパトリシアは振り向いた。
それだけじゃなく今カオルの中から、瞬き速度の一瞬だが膨大な質量の魔力を感じた。
「ん…?パピーちゃん?」
気のせい?。
「え…な、なんでもないわ。次の授業、行きましょうか 」
「うん!」
パトリシアは思案する。
あの魔力の量は、国を一つ、空間一つ、消しかねない魔力総合量だった気がしたのだ。
ふと脳裏に記憶が走る。そういえば数年前にここより北の地域で大きな虚空震があったなと。
まさか?。いやまさかね。
~~~~
「巫凪、聞いてよ~」
「どうした」
「パトリシアにあまりいい印象抱かれてない気がする」
「………。俺の前じゃお前、パトリシアと呼ぶのな。そのままパトリシアって呼んでみればどうよ余語」
「がんばってみるわ」
「いつものようなあのコミュ力はどうした」
「いやぁ…なんか上がるんだよね」
「同じチームなんだから、名前呼びしてみなよ」
「そうだね。というか巫凪、パトリシアと桜ちゃん、部屋縦横のお隣さんなんだよな。いいなぁ」
「いいなぁというが、パトリシアの場合はあれから家に帰ってないらしいぞ」
「え?!そうなの?」
「カオルが話してくれたんだ、どうもあそこは予備の部屋らしくて、なんか研究所を持ってるらしいんだよ。パトリシアはあっちがこっちの本来の家らしくてな。ここ以上に寝具やらなんやらあるからってことでこっちにはあまり帰ってきてないそうだ。カオルは一回泊まり遊びに行ってるぽいぞ」
「マジで?ええ、まじか。桜ちゃん、パトリシアの家泊まりに行ったのか。うらやましい」
「そこうらやましがってどうするんだよ」
「そうなんだけどね。巫凪は桜ちゃんとでかけたりはしないん?付き合ってるんだろ?」
「いや、付き合っては、ないな」
「あやしーなぁ~~」
「まぁ大事な人だってのはたしかだよ」
「ほぇぇふぅん~恋愛的には?」
「…………まぁ、あり、か」
だんだん余語に流されてきた気がした。
「おお、告れよ~~」
「お前完璧ワルノリだろ。まだ出会って日は浅いし」
「えー?よくない?自分のだって宣言くらい」
「その思考はチャラいぞ余語」
「アハハハ、まぁ俺もパトリシアを自分のだっていう宣言くらいできたらいいんだけどね」
ライバルが多い気がすると余語は言う。
「きっかけか」
話すきっかけはあっても、余語はパトリシアを振り向かせたい自分に興味をもってほしいと、そう言っているのだ。だから余語は思案し考えるのだ。パトリシアにとって自分は何を求められるのか。
俺はどうなのだろう。
もちろんカオルから自分に興味をもってほしいという気持ちもある。
カオルをもっと知りたいと思う気持ちもある。
まだ少し時間が足りないと思う俺がいた。
「いろいろなことを、これからカオルと見ていけたらいいな」
俺は小さく呟いた。
にしても青春ぽい話をしているな俺達。
~~
そしてデート当日
「お待たせ」
「同じくお待たせ」
お互い待つことないのに言うので笑う。
校外にでることを学校に届け出をだし、久々の私服だとカオルはよろこんでいたのだが学校が許可を出さなかったのである。なぜに?なので制服お出掛けだ。
ああカオルの私服姿見たかったな。
その思考を読んだかのように
「また次の機会に、だね!」と言う。
俺はその機会が楽しみにしつつ「だな、その時が楽しみだ」と笑った。
デートなるもの初デートである。カオルも多分そのはず。お互いにテンションちょっと高めでスタートした。
「うわぁ~~!」
「えええどうしたカオル」
「私、こんな街は初めてかも!」
学校の外、校外のちょっと先にある街に来た俺達は、俺はここが地元だから見慣れていたがカオルには珍しく映ったらしい。
だがきっとここが地元じゃない人からしたら、珍しいだろうな。
カオルは東北から来ていたと話した時に「田舎だよ~~都会っぽいところもあるけど、普通かなぁ」と言っていた。
遠い地方から、学校に通うことになり寮に住む生徒達は必ず安全のため学校の人間から迎えの車が来るのだが、なんと一秒で学校に着いてしまうのだ。原理は不明である。
おまけに学校の敷地は馬鹿であほみたいに広く、森で囲まれさらに川や水に囲まれで、街の情景は見えないのだ。不思議すぎる。
その中にマンション寮もかなりあるのだから驚きの広さだ。ちなみにマンションの屋上(なぜか閉鎖されている)からはチラリと街の一部がちょっとだが見える。だがここが地元勢なら、例外である。
地元勢は歩いて登校する人もいるのだから、当然知っている。
カオルは何に驚いているのかと言うと、なんとここの街、森と都会が合体したようななんとも不思議な街なのだ。お陰で空気が綺麗なのは特徴だな。
なぜこんな都市ができたのかは、今のところ俺にもわからない。
正直わからない人のが多いと思う。
「龍太くん!私、異世界に来たのかな?ねぇ、どう?どうかな?」
「うーん~~そうだな!たしかにその異世界って言葉はある意味正しいかもしれないな」
カオルが楽しいと感じているからか、気のせいか木々が踊るように見えた。
カオルはそっと杖を取りだし胸元に引き寄せ瞳を閉じる。リングが淡く輝き、杖が輝きを放つ。そのカオルの想いや気持ちという魔力に森は柔らかな風を吹かし街全体を包むかのように、木漏れ日が俺とカオル、そして辺りをキラキラと輝かせた。心が洗われるような心地になった。
俺はカオルに見惚れていた。
「きれいだ」
「そ、そうかな?えへへ、ありがとう」
俺が思わず言った言葉にカオルは照れて言う。
「この街は、すっごく素敵な街だね。ここが龍太くんの住んでるところなんだね」
~~~~
緑が貼られたようなビルやショッピング要素のある建物。
山なのか森なのか街なのかわからないよなぁ。
そのおかげかここの街は森宮市と呼ばれていた。
割りと結構歩いた気がする。カオルはスタミナ切れがないのかというくらい快活である。
最初は大丈夫か?と聞いていたが、だんだん大丈夫?と聞かれるようになってしまっている。
いくつか気になるお店に入ったりお茶したりと、カオルにとっては新鮮なようだった。
「学校の外って楽しいね~」
「たしかにな」
「学校内も楽しいけど、こういうのもありだね。私今女子高生やってる!ってこれは学校内での言葉だね!」カオルは楽しそうに言う。
俺達は外に出て次だぁとなる。まさか回れるだけ回るつもりかカオルよ。
「あ、動物園だ。動物園なんてここあるんだね。いってみる?」
「さすがにまた今度にしとこうか」
「ん、だね。近いうち一緒にね」
「だな」
「うん、あ、でもそろそろ戻ら、あ、あれ美味しそう!」
時間的に学校に戻るか的な時間なんだがカオルは好奇心でテテテと入っていく。
「まぁちょっとくらいいいか」
と俺も後を追う。
~~~~
「ああ、美味しかったね」
「結構甘かったな」
カオルはどうやらマカロンなるものが今回お気に召したようだった。
「まさかテイクアウトまでしてくとは思ってなかったよ」
「美味しかったもん」
と俺達は寮へと戻ってきた。「また明日ね」
「また明日~」とやりとりを経て俺達は明日へ備えた。
が、この日、事件が起きていた。
~~~~
殺陣と中等部の教員と朝から話さなきゃならなかった。マンションにいなくて良かったと思った。
「高等部一年の女子生徒が襲われたのは本当か」
「そのようね」
「状態は」
「眼球、片目を抉り取られて、足を骨折しているわ。命に別状はないわね」
「…殺陣先生、どうするんだ…親御さんにも話が」
「ああ、だがその前にだ。パトリシア」
「わかっているわよ。とりあえずセフィの花、用意してきたわ」
「君は?」
「パトリシア・ユピテル。魔女王直轄総合調査部所属。…チーム巫凪所属ってこれ言っていいのかわからないけどまぁそういうのよ」
「なるほど。それでこの花は」
「セフィの花は光素を媒体とした治療再生魔法花よ。これで彼女の眼球と怪我を再生させるわ」
私は彼女の病室へ向かい治療した。彼女は何度も私にお礼を言ったが、私は押し止め、いったいどんな経緯があったかを聞いた。なんでも紅いガラスのような花を持った少年が魔法を使ったらしいという話だった。
私は「この花?」と本来調査それが目的でこの世界にきていた。その赤い花を見せたら彼女はうなずいた。
私はお礼を言い、すぐに戻る。
「やっぱり花だったわ」
「…そうか」
「この件はやっぱり国民に公表しよう!そうすればみんな使わない!」
中等部の教員はすぐに公表の準備をとでていこうとしたが「待ちなさい」と私は止める。
「な、なんです」
「公表はできないわ」
殺陣もそれに頷いた。
「できるのは学校、生徒会メンバーと実力あるチームと一部のチームだけだ」
「な、そんなことを隠匿してなんになる!言わなければ政府は警戒を、国民は自発で花を詰み、使えば知らぬ間に魔法を会得するのですよ!そんなことあっていいわけがない」
魔法使いは全員が善人というわけではない。
この教員はわかっていないのだ。
自分が魔法を使えるからそれでいいと考える人間だった。
私は休日やチームの特訓がない日は、校外へ足を運び調査をしている。県内県外へと、時には海外へだ。もちろん自分の種族を隠して。
わかったことだが魔法使いという存在は海外ではほとんど知られてないが日本人にとって密かな憧れとなっているのだ。
同時にこの学校に、他校や他の地域がどういう印象を抱いているかも。
政府からの多大な支援、生徒に毎月支給される多額な金額。一般民の倍、優遇される制度。魔法を使えない人間からしたら私達は彼らを見下ろし、嘲笑い、格下だと、そう見えているのだ。
それは恐怖という言葉が何より近い。だからこそ一般の人間はその魔法という力を闇でもいいから意地でも得ようとしている。
だからこそ紗奈が代表で広報をしてその侵攻を抑えているのがわかる。
だから花の正体を漏らすわけにはいかないのだ。
「幸い花から得た魔法の情報はまだ出回ってない」
「だが時間の問題だ!一刻も早くこの話を全世界に--」
私はため息をついた。この男、邪魔ね。
「あなた少し寝ててもらえるかしら。支障に来すわ」
私は中等部の教員の頭に触れ黒いスパークを与える。
「パトリシアあまりやたら権限を使うな。気をつけろ」
「二ヶ月くらい寝込んでもらうから心配ないわ」
「…それでこの花、だいぶ大事になりそうだが」
「根回しはするわよ。情報が一般人から出回らないのは、心に共通点があるからでしょう?優越感というね。花に宿った固有魔法を自分しか使えないと浸っているんだわ」
「世間には新種の花と出回っているようだがな」
「いいんじゃないかしら?。高等部の生徒からしたら名声を上げるチャンスでしょ。今のうちに有力な高等部2、3年の魔法使いに転送魔法陣ミーティアを持たせて花の撤去をすればある程度は片付くんじゃない?」
「ふむ」
「お母様からすでに許可は得てるわよ」
「いいだろう。各教師にも話を付けておこう。高等部一年から下の生徒はどうする?」
「有志がいいかもしれないわ。くれぐも危険のないようにしてもらって撤去してもらえればいいわね」
ふと、チームを組んだ三人の顔が浮かんだ。
「ねぇ?龍太やカオル、余語には話していいかしら?」
「…好きにするといい」
「わかったわ」
「ならこの話はひとまず終わりだな。
パトリシア、お前に伝言を預かっている」
「??」
「西国の魔女王からのその家系、ナイトローゼ家からだ」
「は?」
「明日からリセリス・ナイトローゼが編入する。」
「え?えええ…」
なんであの女まで?という疑問は殺陣は語らなかった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
ネタバレから入りますが一部事件の影が暗躍して始めましたね。
と、同時に巫凪とカオルのおでかけも書けました。
今回はきっかけ次第で行動というのは変わるということですが、上手くいけばよし、上手くいかない時はいかないのが現実ではあるけれど、行動するときっかけが、きっかけがあれば行動できるという綱引きなような状況になると人はずっと動いているのかなと考えたりしますね。自分にとって大事なことならずっと動いてそうだ。
ちなみに最後のほうにチラッと名前のみでていますが、また異世界からの編入生がやってきます。
次回のお楽しみです