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勿忘草の丘  作者: 中さん
第3章 僕は君が好き、君はあの子が好き。
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93話 焦りと沈黙

ルシアの正体が分かり、私達の頭の中がすっきりした後は、ずーっと机にひっついて授業を受けていた。こうしていつの間にか帰る時間になり、忙しく過ぎる時間に流されながら、思わずため息をつく私。月曜日の今日は5時間授業だったから、特別な事がない時は帰りが早い。それが唯一の救いであると心に言い聞かせ、私と一矢はとぼとぼ帰り道を歩むのだった。

こうして無事我が家に帰宅した私とアレンは、居間で魔法の練習をしながら会話をする。彼のどうでもいい話の中でも、常に私の頭の中で飛び交っていた心配事は、やはりあっちの世界に関することだった。澪達は無事だろうか、あの炎の海に呑まれてはいないだろうか。少しでも気にしてしまったら、その考えから離れるのに途方もない時間がかかってしまう。だから今はとりあえず、今は彼女らの無事を祈るしかない。

心にまとわりつく重い蔦を振り払うように、私はアレンの話に適当な相槌をうち、温まったテレビ画面に風魔法を当てていた。

正直な事を言うと氷系の魔法の方が好きなのだが、さすがに電化製品に水が固体と化したものを、何も考えずに当てるわけにはいかないのだ。溶けた氷のせいで感電でもやらかしたら、それこそ魔法以上に身近で危険ではないか。

……あれから10分くらい経った頃だろうか、叔母さんがプラ板を焼き終わった音と共に、聞き慣れた呼び出しの音楽が部屋に響く。ピンポーンというチャイムの音が鳴ったかと思うと、叔母さんが覗きに来たテレビ画面の下の枠に、紗羅と雷華さんの姿が現れた。画面越しに映る二人の表情は、焦りに満ちている。

画面越しから伝わるその表情に、少しばかり嫌な予感がした。



「絶対何かあったよね…… アレン、早く行こう!」



急いで玄関の扉を開け、庭の5段の階段を飛び降りる。着地した瞬間の勢いで門も開こうと思ったが、その前に紗羅が開いてくれた。私の方は取っ手を引かなければならなかったので、ありがたやありがたや…… って、そんな事はどうでもいいから、紗羅にここに来た用件と焦っている理由を問い詰めよう。



「紗羅、結構焦ってるみたいだけど、何かあったの?」

「世羅が帰って来たの! でも、凄い大怪我で、回復魔法はかけたんだけど効果が無くて……」

「え、医療機関は? 救急車呼んでないの?」

「それがな、私達はここの世界出身じゃないだろ? だから保険証みたいなやつも持ってないし、昨日街が焼けた関係で周囲の結界が歪んだから、あっちに帰ることもできないし……」

「じゃあなんでバイトができるんですか」

「知らねぇっ!」




なんということだ、回復魔法の応急処置をしただけで医者に見せていないなんて…… と、はじめは雷華さん達を凝視していた。でも、今の雷華さんの話を聴けば、なんとなく訳が理解できる。確かに、保険証を持っていなければ診察だけでも多額のお金がかかる。10代の喫茶店アルバイターの雷華さんが、そんな大金を払えるはずがないだろう。私がバイトの件を突っ込み、雷華さんが私の問い対して適当に言い返した途端、突然皆がしーんと静まり返る。

あ、そういえば雷華さんって幾つだったっけ…… いやいや、そんな事を考えている場合じゃない。帰って来たという雷華さん達が住むアパートに行かなくちゃ。紗羅は一番の急所は狙われていないと言っていたから、まだ生きているはず。

人間の一番の急所って、普通に考えれば心臓辺りだよね、じゃあ他の部分はやばいってことか。そう考えていたら、今思ってる事は半分正解で半分不正解よと紗羅が言った。って、こら読心術。

ということは、一番の急所が心臓じゃないのか。それなら鳩尾や目、頭などなど、急所といえば色々出てくるが……

それでもあの火の海に突っ込んで、一応生きているというのを聴く限り、やはり世羅はチートのような能力を持っているのだろう。

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