番外編 月影氏の休日 3.
【世羅 視点】
「あー、なんで今日に限ってこんなに騒がしいんだよ」
全く…… 今日は本当についてない。さっきは小遣いを楽しみにしていたけれど、本当に。
今更思い出したが、今日からこの街の誕生を祝う為の、本格的な祭りの準備が始まっていた。この街で一番大きいとされる今回の祭りは、小さな準備や合奏練習は半年前からで、装飾などの準備は1ヶ月以上前からやり始めるという張り切りっぷり。特に今日は、他方の国の人間も何人か視察に来るという事で、いつも以上に街が盛り上がっているのだ。
昔の風習が今も残っているこの街で、のんびりほのぼのとした生活を営む人々は、大体祭りや祝事が大好きなことが多い。騒がしいのが苦手なあの百合亜でさえ、嫌いではないと言う程だ。まぁ、元からトマト投げとか牛追い祭りとの激し過ぎる行事はやらず、歌ったり踊ったりする方が多かったからな。
こうしてしばらく歩いていると、一段と騒がしい声が聞こえる場所が見えてきた。色褪せたレンガが敷き詰められている商店街の噴水広場には、ワイワイと騒ぐ人々がごった返し、俺とロックは途中で離ればなれになってしまう。そのまま俺は街の子供達に捕まり、現在身動きがとれない状態なのだ。
ロックには先に行っていろとだけ伝えたが、なんだか心配だな……
『世羅兄ちゃん、遊んでー!』
「はーなーせー、お前らは祭りの手伝いでもしてろっての」
「やだやだー! お兄ちゃんはいつも、寅くんやお仕事にべったりなんだもん!」
「最近は色々忙しいんだよ、勘弁してくれ…… っていうか、俺が留守の時に寅の面倒を見てるのはお前らだろ? 俺なんかいなくても」
「全員いないと意味ない! 今日はみんなで森に行くから、兄ちゃんも来いよ!」
「今買い物に行く途中なんだよ、また今度遊んでやるから離せっ!」
『あー、逃げたー!』
うるさい子供から走って逃げた後、俺は人混みの中を通りながら、なんとかロックの後を追う。人混みに流されたせいでかなりの時間を費やしてしまい、俺が彼の元についた頃には、もう買い物は済んだ様子だった。「久しぶりのお祭りはどうだった?」って聞かれても、今の俺に答えられる気力など残っていない。確かに祭りは楽しいかもしれないが、そうだとしてもあの人混みの中はキツすぎだろ。あー、もう疲れた!
さっさと帰って寝てしまおうと思って、俺はまたロックの腕を軽く引き、そのまま帰ろうとする。その時俺の視界の隅に入り込んだのは、さっき俺を引き止めた子供達だった。
『世羅兄ちゃんのバカー!』
「悪かったなバカで、こっちはバカでもそれなりに頑張ってんだよ!」
「ふふ…… 本当は嫌じゃないくせに、君も素直じゃないね」
「お前はそう思うのかよ。はぁ、こんな自分が嫌になる……」




