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勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
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番外編 月影氏の休日 2.

【世羅 視点】


春の太陽がゆっくり上がった午前10時頃、朝の支度を済ませた俺は、現在暇すぎて死にかけている。

そんな訳で、自分の命を繋ぎ留めるためにも、読書中のロング黒もやしにかまってもらうことにした。しかし、なにしろ身長差が凄まじいので、こいつを引き止めるのには物凄く時間がかかる。

ちなみに、俺の身長は約150cmだから、引き算するとロックとは43cm差!? うちでは2番目の長身の雷華でさえ、177cmくらいで16cm差だし…… 年の差があるから仕方ないけど、なんかすっげー悔しい。この家に住む奴らの身長差も、ここまできたらもう異常だぜ。



「世羅、僕がかまったところで暇がなくなる訳じゃないんだから、離れて」

「こうしてるだけでも時間はつぶせるんだぜー」

「離れて、僕を自由にさせて」

「やだ」

「人は皆自由なんだよ…… 人権って知ってるよね」

「まさか、この御時世でそんな事が通用するとでも?」



いつもは優しいロックも、今回の俺のベタつき具合には、すっかり呆れてため息をつく程。暇な休日の午前中は、こうしたやりとりばっかりだ。大抵は「離して」と「やだ」の繰り返し。何故こんな事をしてるのかは、俺でもさっぱり分からない。俺には説明出来る程の国語力が無いし、そもそも今の行動に理由なんて存在しないからだ。

まぁ、そろそろ百合亜おねえさまのお声がかかるんだろうけどな。今日は多分、果物屋と文房具屋に行くことになるかもしれない。林檎とインクが足りないとかなんとか、毎日忙しそうにしている百合亜は、俺達におつかいを頼む事が多いのだ。



「いいかげん離してよ」

「やだね、俺は暇なん」

「二人共、暇ならおつかいに行ってきてちょうだい。果物屋さんに林檎を調達してもらうように頼んで、後は切れたインクと花柄の便箋と封筒を購入すること。ほら、余ったお金は返さなくていいから」

『ふぁい……』



ほーら、やっぱり来た。便箋と封筒のセットが切れていたのは想定外だったが、この小さな街の西で政治を行うフェアヴァルト家に、何か報告することでもあるんだろう。

日之影家とフェアヴァルト家って昔から何かと仲がいいし、秘密基地の大木の世話も手伝ってくれてるんだ。ロックとそれなりに仲が良い執事もいるのだが、あのすっとこどっこい執事は俺のことを小馬鹿にしてくるので、やり返して喧嘩をするのが日常茶飯事。

だが、そのフェアヴァルト家と林檎の関係性は全く分からないな…… そこの主人が林檎好きなだろうか。

まぁ、久しぶりに街に出られるからおつかいについて不満はないし、おつかいの後のお釣りはくれるから気分は悪くない。あれ、果物屋って森の実も仕入れてる関係で南側なんだっけ。


……めっちゃ遠いじゃん。


いや、もう何も考えない。さっさと準備して行こうと思い、のそのそ動くロックの腕を引っ張る。うわーと情けない声をあげる彼など御構い無しに、俺はせっせと玄関の方へ急ぐのだった。

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