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勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
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番外編 月影氏の休日 1.

【世羅 視点】


それは、雪菜達がここに訪れる一週間前の出来事……

今日も妙な夢にうなされ、大きな物音を立ててベッドから落ちた俺の名は、月影世羅。特殊型の攻撃系魔法使いで、昔この街で"奴"と戦った者の一人だ。まぁ、10代の若者達が強大な悪魔を倒して、この街を救っただなんて、普通に聴けば考えられない話だろうけどな。

あっちの世界でいう休日の日は、大体街の依頼も休みなので、午前8時頃にのんびり起きるのが普通。大体その後は、今日のようにベッドから転げ落ちるか、俺の弟である寅を起こすかだ。

あー、そういえば今日は午後から、あっちの世界に変な奴がいないか見張っていないといけないんだよな。魔法の周波が強くなりそうな所で、適当にぼーっとしていればいいか。



「あんまり動き回るのも面倒だし、黒猫の置物でいいよな……」



あ、一応訂正をしておくが、今日ベッドから落ちたのは悪い夢を見たからで、常に寝相が悪いわけじゃないんだ。そもそもウチの中で寝相が悪いのはロックや雷華の方だし、そうだとしても俺の家の奴らは全体的に寝相が良い…… 多分。あの雷華でさえも、布団を蹴飛ばすようなことはした事がないらしい。

まぁそんな事はどうでもいいとして、早く寅を起こさないと。

寝ぼけた寅を起こして小脇に抱えた後、俺は階段の頑丈な手摺りに座って下まで滑り降りる。え、手摺りが壊れるだって? 大丈夫さ、体重はそれなりに軽いから。行儀が悪いなんて言われようが、バランスを崩して頭を打ちつけようが、絶対に懲りないのが俺のスタイルだからだ。元凶は恐らく、雷華辺りなのではないかと思っている。

実は寅もこの降り方には魅力を感じているらしく、兄としてはまだ幼いからと心配してしまいがちだが、元はと言えば俺が原因なのだから、仕方なく見守って置くことにした。あいつも俺と同じように怪我の治りは早いし、痛いのが嫌になったら自然とやらなくなっていくだろう。



「世羅、Ciao(チャオ)!」

「……ん、それがこの間言ってたルシアっていうキャラか?」

「そうなの! これならあっちの世界でも、魔法使いの子達を楽に見守れるでしょ?」



階段の踊り場の影から突然飛び出してきた少女は、にっこり笑って俺の方に手を振る。眠い目を擦る俺は、かろうじて彼女に手を振りかえすことはできたが、後は素っ気ない言葉をかけるだけだった。

ルシアという名はあっちの世界でいう欧米あたりの女性名、名前の意味は光だったと思う。確かに、紗羅にはぴったりの名前かもしれない。あいつ、技名があるのは光系の魔法が多いし、苗字が光日だし。だとしたら、俺が使っている技名がついた魔法は闇系の物が多いことになる。

……まぁ、俺は大抵の場合物理的に殺るんだけどな。



「その2人は同じ組の幼馴染か…… なら情報部に入ってみろよ。同時に面倒見られるぜ」

「え、確かに情報部に入るつもりだったけど、同時に面倒見られるってどういうこと? 片方は同じ班の子と一緒に、陸上部に入るつもりなのよ?」

「魔法使いの勘だよ。俺、未来予知は出来ないけど勘はよく当たるんだよな。特に悪い時」

「最後の言葉は聞き捨てならないわー」



この世界のバランスを保つため、あの二人には魔法使いになってもらうと、俺達は百合亜から話を聴いていた。俺はそのための最善の方法を、未来予知ではなくマジの勘で答える。ちゃんとやれと言ってデコピンの構えをする紗羅に、こちらも負けるものかと回避の動きをする。お前の言うことなんて聴くわけねーだろ、未来予知なんてどれほど頭を使うことか…… そもそも俺は使えないし。

あ? チート? 欠陥ばかりの俺がチートな訳ねぇって。こればかりは生まれつきの体質で決まってしまうから、俺達にはどうしようもない。

そんなアホらしいやり取りをして階段を下ると、先に起きていたらしいロックが、廊下から俺達を呼ぶ。



「おはよう、もう朝ごはんの準備できてるよ」

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