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勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
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89話 証拠も無い言いがかり

「なぁ、ルシア。お前ってさ、本当は紗羅なんじゃないか?」



張り詰めた空気をくぐり抜け、恐れも知らず先陣を切ったのは一矢だった。単刀直入に、ルシアに問いかける。1年6組の中で、魔法使いの世界に関わる3班だけがここにいるのだ。ここなら紗羅かもしれない白髪の少女も、安心して彼の問いに答えてくれるだろう。もし本当に紗羅だったら、その緊張した頬をふわりと緩めて、本当の事を言ってくれるはずだ。"ヴァイス"や魔物、街を襲った者も、ここなら紛れ込むことはできないから。だから大丈夫、まだゆっくりでいい。いつもの明るく無邪気な表情で、優しく答えてほしい。


と、思ったのに。


顔を上げたルシアの表情は、私達が想像していた温かいものとは対照的に、凍りついた無表情だった。いや、それよりもっと酷い。完全に怒っているようで、私達を睨みつけている。

一矢の方は…… 駄目だ、完全に固まっている。指の先がピクリと動いただけで、その後は冷や汗が頬から垂れるだけ。まるで、蛇に睨まれた蛙の様だ。



「さっき放っておいてと言いましたよね? それに紗羅って誰ですか、人違いです」



どんなに聞き出そうとしても、放っておいての一点張り。このままではらちがあかない、あと数十分すれば他の皆が来てしまう。そもそも、何故ルシアは機嫌が悪いのか、疲れているのか。もしも昨日の"災厄の襲来"が原因だったというのなら、納得がいく。今朝、紗羅が私より先に家を出た訳も。入学式の次の日に、白猫が私達の通学路を走り抜けていった理由も。班長決めの時に彼女が探していた人影の正体は分からないが、それ以外はほとんどの物事に辻褄が合う。木曜日に倒れた私を保健室に運んだのも、ルシアという名を偽った紗羅だったのかもしれない。そこからちょっとだけ保健室で会話して、給食の時間には教室に帰ったんだ。もしかしたら、彼女は分身の術も使えたかもしれないし…… その辺りは彼女に詳しく聞かなければいけないな。



「る、ルシアさん、どうしてそんなに疲れてるのかな。とても寝不足とは思えなくてさ、心も疲れてるんじゃない? 寝不足の原因が心の乱れってこともあるし、もし僕らが駄目なら同じ女の子の雪菜さんに……」

「うん、悩み事があるなら遠慮せずに言っていいよ? できれば、その」

「だから放っておいてって言ってるじゃない!!」

『!?』



勇助が頭の歯車をフル回転させてこの状況を進展させる選択を取る。ルシアに関わる他の話題を持ちかけ、便乗した私が進軍した途端、ついにルシアはキレた。

悲痛な叫び声が廊下にまで響き渡り、幾多の想いが詰まったその青い瞳には、今にもこぼれ落ちそうな大粒の涙が溜められている。

うつむく下睫毛から僅かに流れ出た小さな滴が、教室の床の木目に光る模様を作った時…… 彼女の感情が、ついに爆発した。



「何も知らない貴方達に相談したって、絶対に分かってもらえるはずないわ! 小さい頃から一緒だった大好きな人々が、壊されたって何度もやり直してきた街が、街を守る大自然が、たったひとつの欲望の塊のせいでまた消えてなくなってしまうなんて…… もう嫌…… 嫌なの………」



バタッ……



「ルシア!?」

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