表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勿忘草の丘  作者: 中さん
第2章 異世界への一歩
90/176

88話 帰国子女の悩み

清らかな白い髪を揺らし、珍しく髪を結って来なかったルシア。胸に届くその髪から見えたのは、陶器のように滑らかな頬を全く動かそうとしない、酷く落ち込んだ表情だった。いつもなら不意打ちで背中を叩いてくるはずなのに、彼女の「Buongiorno!」という陽気な声は、いつまでたっても聞こえない。

……明らかに様子がおかしい。



「ルシア、具合でも悪いの?」

「いえ、ちょっと寝不足で疲れてるだけです。雪菜達は心配しないでください」



ほら、やっぱり。ルシアは疲れてるだけと言うけれど、明らかに様子がおかしい。深く寄せられた眉をより一層寄せて、同時に悲しそうな顔で目を伏せ、古惚けた木製の床を見つめている。それに、寝不足と言う割には目が眠たそうではない。目元に隈のようなものはできていないし、あくびも何もしていないのだ。

まるで、心に溜まった憎しみと悔しさを抑えるように、ずっと口を噤んでいる。こんな辛そうなルシアの顔、初めて見た。

そんな様子を見て、痺れを切らした一矢は、私の代わりにルシアを止めようとした。



「いやいや、心配するって。ただでさえ元気一杯って感じのルシアがそんなに沈んでるなんて、今日の午後大雪かよ? 俺、折り畳み傘と防寒具持ってきてないぜ?」

「大丈夫です。今日は暖かいですし、降水量0%です」

「天気予報は当てにならねぇって」

「お願いします、今は放っておいてください」

「お、おぅ……」



しかし、結局上手くいかず、しかも一矢なりのボケも全く通用しないまま、ルシアは自分の席へと歩いて行ってしまった。その後ろ姿は真夜中のように暗く、悲しみ、憎しみ、恨み、絶望……… とにかく沢山の負の感情が詰まっているように見えてしまう。

先程のやりとりを廊下から見ていた勇助も、今日のルシアの変貌ぶりには驚かされたらしく、この事は1年6組3班の大きな課題として刻みつけられたのだった…… と思っていた。

今までずっと疑問に思っていたことを、思い出すことができたのだ。



「ねぇ一矢、さっきのルシアの無表情って誰かに凄く似てなかった?」

「あー! 確かにそうだよな、勇助! 誰かに似てる気がするんだよなぁ……」

「……ここで聞いて、無事に生きて帰れる保証は?」

「ま、まだ他の人も来てないし、大丈夫じゃないかな? ルシアさんがキレるところは見たことないけど…… 絶対怖いよね」

「そうかもしれないけど、とりあえず聞きに行こうぜー!」



まさか、こんなに早く解決する事になるなんて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

匿名での感想・評価

感想はこちら

※感想掲示板 雫封筒(外部)へ移動します

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ